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獺祭についてAbout

獺祭ができるまで

製造工程

製造工程

洗米

精米後酒蔵に搬入された米は最大144時間という長時間にわたる精米時の摩擦熱により極度に水分を失っています。自然に水分を元の数値に戻してやるため一ヶ月以上そのまま貯蔵して水分含有量を回復した米を洗米します。ここでは洗米後の米の持つ水分を0.3%以下の精度で厳密にコントロールするため通常は大吟醸でだけ使われる技法で全て手洗いされます。人でも時間もかかるやり方です。機械で洗えば人手も三分の一で、時間も六分の一で洗えますが、最新型の洗米機をもってしても機械ではここまでセンシティブに吸水率をコントロールすることができず旭酒造では手洗いを選択しています。

洗米

蒸米

もろみ日数45日間という長い醗酵期間の間酵素力を持ち続ける蒸米を作るためには、一粒一粒が外側が硬くて内側が柔らかい、いわゆる外硬内軟な蒸し上がりの米を作る必要があります。そのためには伝統的に行われてきた和釜の技法が重要になってきます。どうしても釜への米の張り込みや、釜からの蒸しあがった米の掘り出し等、労力のいる作業から逃れられないやり方ですが、少しでもよい蒸米を仕上げるために、この蒸し方を選択しています。

蒸米

麹造り

麹は酵母に適当にブドウ糖を供給し続け、その醗酵スピードを最適にコントロールするという、一番大事な仕事を酒の醸造の中で請け負います。ですから古来より「一麹二モト」と酒造りの仕事の中で最も大事なものに位置付けられていました。最高の麹を作る為には、全体の米の状態を把握し繊細に時には優しく時には激しく製麹を操作する経験豊かな人の手がかかせません。

人間が五感と経験を通して感じる情報をまだ機械では全てを把握しきれません。したがって一切機械を使わず人の手により獺祭の麹は造られます。しかも麹は生き物です。その二昼夜半の製麹期間中、昼夜問わず操作を要求してきます。勿論どんな深夜でも早朝でも必要な操作はしてやらなければなりません。この間に担当者の緊張が切れたらおしまいです。旭酒造では四人の担当者が交代でこの任に当たっています。もしかして酒蔵に来られた時、真っ赤な眼をしている社員がいたら徹夜明けの担当者かもしれません。

麹造り

仕込み

洗米や麹がバイオリンやピアノにたとえられるとしたら仕込みの担当者はオーケストラの指揮者の能力が要ります。いよいよクライマックスです。旭酒造では全てのもろみに鑑評会の出品酒などと同様の徹底した低温長期もろみの醗酵形態を取らすことを特徴とします。留仕込みの温度も5℃と酵母の生存限界ギリギリの温度からスタートさせます。

最高50日の醗酵期間中、もろみ管理上楽だからとか安全だからという理由で高い温度を選択するという考え方はありません。ですから0.1℃の精度でもろみをコントロールすることが必要です。そのため通常であれば、コンピューターとそれに接続された温度コントローラーで管理すれば楽なはずのもろみの温度コントロールも、ここまで精緻なコントロールを要求すると、そういった機械的操作では無理になります。そのため旭酒造では、年間を通じて5℃に設定された醗酵室で自然の発酵熱ともろみの櫂入れ作業の強弱のバランスで制御しています。コスト的にもかかりますし原始的な方法ですが、この精密な温度管理こそより良い酒を造る為には必要なのです。

仕込み

上槽

ある高名な技術の先生に言わせると、酒の善し悪しは最初の洗米と最後の上槽で決まるそうです。その先生の周囲に集まる杜氏や技術者は日本でもトップランクの水準の人しか集まらないので、麹から醗酵といった通常大事とされる部分は出来て当たり前という前提で話されたことです。しかし、ことほど左様に上槽ということは重要なことなのです。

旭酒造ではここに商業ベースでは日本ではじめて遠心分離機を導入しています。無加圧状態でもろみから酒を分離するため、純米大吟醸の本来持つべき香りやふくらみなどの美点が崩れることなく表現できます。勿論欠点もたくさんあって、無加圧ということは製品の歩留まりは極端に悪くコスト的には厳しくなります。他にも機械そのものが一軒買える位高価であるとか、酒造業者での第一号機だから当然さけられない初期トラブルが発生するとか、たくさんの問題を抱えています。しかし良い酒を造りたいという目的のために思い切って導入しました。

上槽

瓶詰

良い酒を造る為には瓶詰は積極的には貢献しないのでしょうか?いいえ、非常に重要なのです。ここで杜氏が丹精こめて造ったせっかくの良いお酒を駄目にすることは多いのです。旭酒造では搾られたお酒はまるみが出て自然に甘みが増してくるまで、つまり搾ったお酒の中に微妙に残った酵素がデキストリンをグルコースに変えて甘みをより感じるようになるまで、生で貯蔵された後、炭素濾過せず瓶詰めに廻ります。

炭素濾過そのものが悪いとは思いませんが炭素濾過をしなければいけない酒を造ることそのものが失敗と考えています。その酒は冷たいまま瓶詰めされた後、パストライザーで65℃まで昇温され、打栓されて後もう一度パストクーラーで20℃まで急冷されます。通常ですとホットパック方式で65℃まで上げた酒をそのまま瓶詰めすれば手いらずですし設備費も何十分の一です。但しこのやり方ですと瓶詰前に温度を上げる過程で香りが他へ吸着してしまいます。旭酒造の冷温瓶詰方式ですと、冷たいまま瓶に詰められるわけですから香りの逃げようがありません。また人間の体温近辺の36℃あたりに酒を劣化させる温度帯がありますが、ここを急冷方式で速やかに通過させることにより劣化を防ぎます。要は少しでも良い酒をとこだわって造られた酒をそのままの姿で瓶詰めすることを目的として設備されています。こうやって瓶詰めされた「獺祭」は一升瓶換算で5万本まで貯蔵できる冷蔵庫で火当てにより一旦崩れたバランスを再度低温で貯蔵して回復させてお客様のもとへと出荷されます。

瓶詰

旭酒造の酒造り

旭酒造の酒造り

旭酒造が酒造りのために持っている技術は機械で代換出来るかも知れません。しかし私達が要求する精度と品質を達成するためには天文学的な価格の機械が必要となります。技術としても最高といわれる技法をコストを度外視して使っているだけですから酒造技術者なら誰でも知っているものです。しかしこれを毎日の酒造りの現場でやりきるためには良い酒を造ろうとする意志と、このことの重要性を熟知したスタッフ無しではありえません。旭酒造には良い酒を造ろうと言う共通の目的の下集まったスタッフがおり、彼らの心が「獺祭」を支えています。

旭酒造 製造スタッフ

製造スタッフ

旭酒造は通常よくある杜氏と蔵人による酒造りではなく、社員だけの酒造りを行っています。平均年齢は非常に若いですから経験不足も心配されますが、ほとんどが純米大吟醸の仕込。若いスタッフ達に「君達は若いけれど通常十年以上かけて経験する純米大吟醸だけの仕込み本数を一年で仕込む。だから経験不足はありえない。普通酒を造らせれば造った経験が無いから下手かもしれないが、こと純米大吟醸に関してはベテラン杜氏にも決して引けは取らない」と話しています。

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