▼蔵元交遊録
今日酒蔵に、京都から大勢のお客さんがいらっしゃいました。京都の渡辺さんのご案内で、河原町六角の日知庵のオーナー辻口さん他17名の皆さんです。
蔵の中をご案内しながら例によって話に夢中になって、お客様の山村さんからは自作の歌までご披露いただいちゃって、ビール工場をご案内するのを忘れていたのを、これを書きながら思い出すぐらい、私にとっても楽しい一時でした。
どうも、酒蔵が見たいというお客様が来ると、Fあり。遠方より来る。A商売を忘れるのが悪い癖です。
忙しいと、つっけんどんになる悪い癖もあって、もし観光サービス業としての酒蔵がジャンルとしてあるとすれば大外れの蔵ですが、前もって教えていただいていれば、できるだけきちんとご案内しますので、声をかけてください。
もう、桜は終わりましたけど、このあたりは桜の終わりとともに、山つつじが咲き乱れます。
山のあちこちが紫の花で彩られて、これはこれで豪勢なものですよ。
春の花の楽しみとかねて、いらっしゃいませんか。
だけど、ああ、酒蔵は楽しいですねぇ。
▼蔵元の夜遊び
「あー、飲んだ、食った。だけど、このココナッツいりのシャーベットおいしいねえ」。
「それ、中身はさといもですよ」御店主から一言。
中華の鉄人と言われた方のもとで修行したという(すいません。ちゃんと聞いたんですが、自分が飲んで食べるのに忙しくて陳何さんだか忘れちゃいました)ご主人が自ら腕をふるう、徳山昭和通りの「串王」。
おまかせで中華を中心に五皿と串を適当に頼んで、酒は10種類そろっている地酒の中から「獺祭 純米大吟醸 39」(酒の品揃えの良いお店の場合は、どうしても他社の酒との比較に自分のところの酒を飲んでみるんですよね。これでショックを受けると、次の日から「造りの見なおしやー!!」と叫ぶようなことも起りうるわけです)や「雨切の月 月光」など大吟系統を二合選んで、女房と二人(二人とも人よりよく食べる方と思うんですが)で9000円。
先日、巨人の江藤と後藤が来たそうで、あんまり飲んで食べるんでご主人腰を抜かしたそうですが、それでも勘定3万円を超えなかったそうです。
通常は一人5000円の勘定を超えるためには相当気合をいれないと難しいですよ。
和でまとめた現代風のインテリアに、ご主人が集めた器もこっている。
お客様はどちらかというと若いカップルが多いですね。
▼蔵元の思い出
本日ただいま有楽町の帝国ホテルにいますんですが、あー、うしろにいるの栗原小巻だよ。
栗原小巻が左肩にストールかけて、「ちょっと控室見せていただいていいですか」って女性スタッフに声かけてんだから、となりによけて聞こえるようにしてあげなよ亀岡さん。
あとで「うしろにいたの栗原小巻でしたよ。気がつきませんでした?」って声かけたら「それは、残念やったです。栗原小巻にうしろから声かけられたって皆には言ってやりましょうかなー」と例のひょうひょうとした語り口で答えられました。亀岡さんって7年古酒で有名な銀河鉄道の亀岡酒造の社長さんです。ですから今の返事はすべて愛媛弁で話されているとイメージしてください。独特のやわらかい語り口ですが、棚田の保存運動、河川の維持活動、やっている事は頭の下がる事ばかりです。
あー、また話が横道にそれちゃった。
きょうは美米美酒美食倶楽部の会合で帝国ホテルにおります。
ぶっちゃけて言えば、良い米で造った良いお酒を、美味い物と一緒に楽しもうという会です。
いつも事後報告ですいません。次回は9月22日に東京ディズニーランドとなりの東京ベイにある第一ホテルであります。
ここは例の村上総料理長の料理も凄い、やっぱり一流ホテルのそれも名の通った料理人が本気で造ると違うんだなーと感嘆する料理が出ます。
興味のある方は倶楽部本部(03−3264−2695)の方へ問い合わせてみてください。
さて、帝国ホテルと言えば10年前にさかのぼりますが、今のような高級酒のジャンルに踏み出しはした物の、具体的にはどうしてよいかわからず、悩んでいた私に、方向を決定するきっかけを造ってくれたホテルです。
私どものもとからの酒名を「旭富士」と言いますが、同名の青森出身の横綱がいたことは皆さんご存じと思います。
その横綱が結婚し、その披露宴が、帝国ホテルでありました。その披露宴に招待され、生まれて初めての著名人の結婚式ですから、めかしこんでタキシードを着ていったらボーイさんと間違えられたり、うしろに座っていた横綱大乃国の後ろ姿の横幅がイスの3倍あったり、面白い話がいっぱいあったんですが、それはおいといて。
帝国ホテルが当事使っているお酒は業界第2位の出荷量を誇るH社だったんですが、その超特撰の300mlビンがパーティーに出ていました。
私はそのお酒を冷酒で、となりに座っていた青森県知事(なんと!良い席に座らせていただいてありがとうございます。親方)は御燗酒で、時々その御燗酒を県知事に注いでもらったりして、同じお酒を冷や・燗両方で飲んでいたんですが、どちらを飲んでもおいしい。
さすがHだな、うちじゃここまでできない、と感嘆しながら重要なことに気がついたんです。
これって大手の技術力の成果でありますが、しかしマーケティングから言えば弱点ですよね。
つまり、ターゲットを明確にしぼるわけにいかないんですよね。「ああ、そうかHはメジャーだからしぼれないんだ。うちはしぼってしまえばいいんだ。冷して飲む酒一本でいけばいいんだ。お燗して飲む酒はよそに任しちゃえば良いんだ」。
方向をはっきりさせることができたわけです。
もっとも、冷して飲む酒以外は酒じゃない。燗して飲む酒が飲みたいなら、他社の酒を飲め。何て言ってた私も40を過ぎるころから燗酒が恋しくなり、美味しい燗酒もあることに気がついて、燗して飲める純米吟醸を造りはじめるという話も後日談であるんですが。
だけど、こうやって、色んなところで、色んな方にチャンスをいただいて、勉強させていただいて来たんですよね。
ありがとうございます安冶川親方。