▼「獺祭」蔵元のひとり言
前回のメルマガの最後で、こんなことを書いています。
−最後の最後にもう一つ。フランス人は最もワインを味わうのに適したグラスの形を厳密に規定しています。ところが、小料理屋でよく様々な酒器を小振りなざるなどに入れて好きな酒器をえらばすところがあるように、私たち日本人は微妙に形状の違ういろいろな酒器によるお酒の味わいの違いを感じる感性と、その違いを面白いと受け入れられる感性の両方を持っているように感じます。−
自分たち日本人にえらい都合よく書いていますが、反対にいうと、酒器一つをとっても、どうも日本人はフランス人というか欧米人と比べてええ加減なんかいなと思うときがあるんです。これは両者が歴史的に取り続けてきた食生活に違いの秘密をとくかぎがあるような気がします。
鯖田豊之さんの著された「肉食文化と米食文化」を読んでいて次のようなことを感じました。
歴史的に肉料理を食べてきた欧米人。
M社のハンバーガーにはネズミの肉が入っている(コストを考えりゃ、あれだけの量のネズミの肉を集めるのは無理なのはわかっているんですが)何てうわさが消えないように、肉になっちゃうと何が入っているのかわからない肉料理。
対して魚料理を食べてきた日本人。
肉と比べりゃ小型の魚(特に瀬戸内の小魚なんて)、見ればなんの魚か一目瞭然だからごまかしなんてほとんどできない魚料理。
肉そのものにごまかしはなくても、伝染病にかかっている家畜の肉など食べたら食べた人間の命まで危なかったヨーロッパの中世。
また稗や粟なんかの雑穀が混入したらすぐわかる日本人が食べてきたご飯と比べて、欧米人が食べてきた粉に引いて焼いたパンには何が入ってもなかなか分からないという事情も有ります。
つまり、根本的にインチキやごまかしがいくらでも可能だから、きちんと決まりや罰則を作らないといけなかった欧米人の食生活。と、対して、ひどいごまかしのしようがないから、ほっといても安心感のある日本人の食生活。
このあたりになんでも厳密に規定しなければいけない欧米人と、その当たりええ加減な日本人と感覚の差があるような気がします。
ま、だからといって何を入れてもいい、何をやってもいいとはいえないんですが。たとえば酒造組合にいわせると、純米酒もアルコールと糖を入れた三増酒も同じ日本酒の分類であったり、米だけで造った酒であるのに外国産の米を使ったり精白歩合が黒いと(70%以上)純米酒という表示をつかわせないとか、反対にそのあたり逆手にとって「米だけの酒」と名付けた大手の酒がヒットしたり、何だかよく分からない。
異端を認めないくせに勝手に業界ルールを造って拡大解釈・強弁がまかり通る、まるで自民党みたい。
対して、不凍液の混入や、醗酵助成剤と称して一部には補糖したりしながらも素人にも分かりやすく純粋に造ってある(様な気がする?)ワインの世界。
この辺、ある意味で優しい・ある意味でええ加減な、日本人の感覚がマイナスに作用している気がします。この辺りに甘えていると、いつのまにか日本人の感覚も変わってきていますから、市場から置いていかれるんじゃないか。また日本以外に市場を求めるとしても理解してもらえないんじゃないか。
じゃ、どういう切り口で分類すればいいんだと、逆に質問されると、明確には答えられないんですが。その辺りの話、特にアルコール添加は是か否かについて次回はお話したいと思います。
▼イベント紹介
「皆様へ年に一度だけ、山本総料理長のフランス料理と日本酒の味わいをお届けしたくて」日本美米美酒美食倶楽部 第20回例会のご案内
全国北海道から熊本まで選り抜きの百の酒蔵の自慢のお酒と第一ホテル東京ベイの山本総料理長のフランス料理を楽しんで頂ける会です。山本総料理長と言えば昭和天皇もその料理を楽しみにしておられたフランス料理界の第一人者で、しかも当日のお客様に服部料理学園の服部理事長や帝国ホテルの村上総料理長もおられると聞けば当日の料理も期待できますよ。また、私どもは「獺祭 磨き 二割三分」と「三割九分」を出品します。
期日:2000年9月22日 17:00〜20:30利き酒会・パーティー
会場:第一ホテル東京ベイ 千葉県浦安市舞浜1ー8
会費:1名様15,000円
ご希望の方は弊社までご連絡ください。0827−86−0120
▼旭酒造の商品紹介
獺祭 純米吟醸 45 山田錦・精白45%・アルコール度数15.9度
1.8l 3400円 0.72l 1700円
「磨き 二割三分」から「純米吟醸 50」まで4ランクの獺祭の中では地味な酒ですが、一番最初獺祭を出し始めたときは特別本醸造58と純米吟醸50の上に位置する獺祭最高ランクのお酒として位置付けられていました。(最初は本醸造もあったんです。今は純米吟醸だけですが、別に「獺祭初心」という名前で若い社員の実験酒として本醸造を持っています。)