▼蔵元日記(クラシック音楽系)
演奏。
毎日開く夕刻の蔵内のスタッフとの最終ミーティングを済ましてきた私には何が何だかわからない。妻からコンサートがある日よぉ、そうか、今日はフルートの工藤重典がパストラルホールにくるんだ。そうなんです。山奥の酒蔵のある町内にも、日本でも有数の音響効果を誇る音楽ホールがあるんです。とは言っても、例の宮城県のバッハホールの成功に驚いた国がつけたコンサートホールを造るなら補助金をつけますよと言う補助金に乗った地方自治体が造ったホールですけど。500人収容の小振りなコンサートホールで総工費18億円ですからかなりの物です。確か町おこしホールのさきがけになったバッハホールが10億円以下でしたものねぇ。計画段階で町内有識者(?)に対する諮問委員会のようなものがあって、〇〇人収容じゃ、大きさが中途半端で、五木ひろしの歌謡ショーもペイしないから開けないし、そんなものなんで造る18億のほとんどは補助金なんです。町民のためにこの補助金を取ってきたんだけど、何なら私は造らなくてもどっちでも良いんです。つまり町長が敏腕な行政手腕を発揮して、せっかく県から補助金を取ってきたんだから、無いよりあった方が良いだろうという論理。
だけど考えてください。18億の補助金たって、設計は中央のデザイナー、工事はゼネコンですから、お金は中央から補助金で出ても中央にまた還流するようになってるんです。(表にでませんけど大抵補助金が決定した段階でデザイナーあたりはすでに決まっていてお仕着せでついてくるんです)
地方に残るのはコンサートホールという箱の維持管理費という負担だけ。結果として、ただなら何でも貰おうといういじましい乞食根性が地方の住民の間に増幅していくだけ、と言うところがあります。
ところで現在計画中も含めて日本に500のコンサートホールがあるそうですけど、大丈夫ですかね。大英帝国は19世紀に550のコンサートホールがあったそうですけど現在50
しか残ってないそうです。そのぐらいコンサートホールの維持ってお金と人間の力を食うんですよね。
まっ、そんな話は置いときまして、さすがフルートの工藤重典、よかったですねぇ。ハープの吉野直子もよかったしなぁー。
私はクラシックは本当のところわかんなくって、モーツァルトは演奏中気持ち良く眠れるけどベートーベンは眠れんなぁー、てなぐらいの物なんですけど、ただ面白いのは同じ曲でも演奏者によってまったく違う、同じ演奏者でも気合の入れ方でもっと違う、その辺が製造システムより造る人間の能力に依存するとこの大きい清酒に一脈通じる感じがして好きなんです。
(だから東欧系の何とかフィルが夏の出稼ぎに地方を回って行なう手抜きコンサートは聞く気にならない。あれ、東京でやるときだけ本気なんでしょうね)
今夜の演奏、繊細なんだけど濃密で芳醇というかよかったねぇー。
ところでこれも音楽家の方から指摘されたんですけど、私たちが酒を評価するときの言葉、あれ演奏を評価する言葉と一緒なんですよね。若々しくて新鮮だけど荒々しいとか、ふくよかでみっちりつまってるとか、良く熟成して枯れた感じがするとか。
結局人間の芸って一緒なのかなぁーって感じます。
だから最近ワインのように日本酒を評価しようという向きがありますけど、なにもお酒をソムリエがいうみたいにcノの納屋のその先に茂っている夏草が含んでいる朝露の七色の煌めきのような香りがするて言わなくても、従来私たちが素直に使っていた表現方法で十分じゃないかと感じます。
もっとも、酒造りの現場では酒の評価は悪いところを見つける減点法なんで、これが日本酒の欠点じゃなかろうかということで、これを良いところを探すプラス評価に変えようということのようですが、これはワインも造りの現場では減点評価を行なうようで一緒です。もちろん販売するときは彼らフランス人はお客様の前で弱みは見せないでしょうから良い点の話しかしないかも知れませんけど。
結局造りの現場では洋の東西を問わず、真剣に造りに対峙すれば減点法になっちゃうんです。
だけど、日本酒の場合は減点法の評価を酒蔵じゃなく酒屋さんだったりお客様だったりがするのが問題でしょうね。特に飲む席でされる方がありますけど、あれはやめた方が良いですよ。楽しくないですから。
減点法評価は私たち酒蔵に任せてください。奈落のそこをのぞき込むような恐怖とともに杯の中の自分の酒をのぞき込んで欠点を探しているんですから。そんなつらい酒の飲み方は私たち酒蔵だけに任せておいてください。
だけど良かったとき、楽しいですね。そんなとき少し自宅でその酒を食事のときに飲むんですが、楽しい。(大量だという反論周囲からあり)個人的なことを言うと、酒蔵というのは酒が悪いときは夫婦の中もおかしくなるんですが、酒が良いときは何となく良くなっちゃう。あれとウェイトコントロールには酒の出来が悪いといいですね!?
簡単な物なんですよ。酒蔵っていう人種は。ジャン!ジャン!
あれ、"たけし"みたいになっちゃったな。
▼獺祭の飲める店(新着情報)
安くて、美味しくて、満足の出来るお店を発見しました。JR京葉線の新浦安駅の1階にある「新助」と言うお店です。「獺祭50%」が竹筒に入っています。つまみも刺身が 新鮮で安く、これが「獺祭」に良くあってお酒がすすんでしまいます。ぜひ一度いく価値のあるお店だと思います。このお店は、東西線の浦安駅前のにも、10月中旬にオープンするようなのでとても楽しみです。
居酒屋 新助
・千葉県浦安市入船1−1−1
駅ビルアトレ内1F (JR京葉線新浦安駅)
TEL 047−390−4900
・千葉県浦安市北栄1−17−17
大盛ビル2F (地下鉄東西線浦安駅)
TEL 047−353−0001
10月中旬オープン予定
▼お見舞
島根鳥取の地震のニュースが今はいってきました。被害が少なければいいのですが。お見舞申し上げます。酒蔵としてお手伝いできることがあればご連絡ください。