▼蔵元日記(男の嫉妬?)
長野県知事に田中康夫さんが当選しました。新聞によれば、横山ノックや青島幸男から続く流れと書いてありましたが、少し違うような気がします。どうせ変わらないんだからこんなもんでいいんだという庶民のシニカルな選択がはっきりとでたと感じられた2者の選挙と比べ、まだまだ長野県民は明日を信じていると感じさせられた今回の当選劇です。知り合いもずいぶん応援していました。落選された候補も個人的には立派な方のようですし、長野県政に関して知識もない私がこれ以上言及するのは差し控えさせていただきますが、少し田中康夫さんそのものに最初は抵抗もありました。
もっとも、これは何のことはない、ペログリ日記に代表される田中さんの華麗な女性関係に個人的にねたましさを感じただけのことです。だいたい今回この手の批判をされた方はこのレベルの感情からでたものが多かったんじゃないか。(モテないからこそわかる鋭い洞察?)だいたい、この方面のことに関して男が道徳的なことをいうときは結局嫉妬の感情から出ていることが多いような、だから少し眉に唾して聞いてもいいような、そんな気がします。(ますます鋭い!)
少なくとも私はそうですね、そういう立派なことを言い出したときは。
で、また話が横道にそれていますが、何をいいたいかといいますと、今回「田中康夫」という「白馬の騎士」を長野県民は選択したわけですが、それだけでは長野は変わらないということです。私がいつも選挙に対して不満を感じるのは、有権者に色濃く感じられる、自分は血を流してまでは変わる気はないのに、「白馬の騎士」が現れてくれてその騎士が八面六臂の大活躍をして、世の中を変えてくれる・自分たちに幸せを運んでくれるという白馬の騎士幻想です。
だけど本当は自分たちが変わらなければいくら「頭」を変えても地域は変わりません。
完全に同じ意味ではありませんが、酒蔵にも白馬の騎士幻想がありました。私どもで純米吟醸に特化し始めた頃、何でそんなに吟醸ばっかり造るんだという声が上がりました。
特に酒の技術関係に詳しい方から。
先生方はどういうわけか普通酒に思い入れが深くて、吟醸をたくさん造ることに抵抗を感じる人が多かった。それと消費者は酒をわかっていないと消費者の品物を見る目をあまり信用していない。「そんなにたくさん吟醸を造ったら、鑑評会の出品酒に力が入らなくなるじゃないか。そんなにあせらなくてもそのうち鑑評会で金賞をとれば酒屋さんの方から売ってくれと言ってきて、おまえのところの酒ぐらいすぐ全部売れてしまうようになるから」とよく諭されたものです。
つまり白馬の騎士幻想ですね。
酒蔵は変わらなくても、ある日酒蔵の前に全国新酒鑑評会の金賞という白馬の騎士が現れて酒蔵を幸せにしてくれるというわけです。だけど本当に大事なのはお客様が飲む酒で、コンテストの出品酒じゃありませんよね。最近私どもの考え方がやっとわかっていただいたような気がしますが、やっぱり先生方にとっては消費者に代表される「民」より、権威ある「官」の代表としてコンテストの審査員の方が大事ということなんですかねぇー。
だけど、一つ説明させてください。批判的なことを書きましたが、決して私は新酒鑑評会無用論者じゃありません。反対に言うとこの限定された条件ではありますが、全てイコールの状態で平等に戦う新酒鑑評会のおかげで吟醸を造るための全てのデータも技術も表に出て体系化されたところがあって、鑑評会なかりせば旭酒造のように若造の社員だけで仕込むなんてことは、不可能でした。もっと言うと、まだまだおかしな徒弟制度というか、良い意味で修行、変な意味でいじめの感覚に立脚した酒造業界の昔から残る技術伝承方式では、昔の数十倍の情報を伝達しなければ出来ない現代の吟醸は出来ないと感じています。
だから鑑評会あればこそすごい酒が平均的に出来るようになったと思います。そんな酒はぜひ普通のお客様にこそ飲んでいただきたい。
鑑評会に出てくる酒は本当にすごい酒が出てくるんですよ。
今回そんな思いで、酒の搾りに遠心分離システムを導入しました。従来なんらかの形で布の袋に入った搾る前のドブロク状の酒に圧力をかけて搾っていた酒を遠心力を利用して搾ろうというもので、酒に無用な圧力をかけない、結果として鑑評会の出品酒の搾りと同レベルの搾りが出来る画期的なシステムです。
商業ベースで日本初ですから、当然おこると予測される、様々なトラブル。千石を越えない酒蔵としては少々高い機械の価格。頭の痛い問題はたくさんあるんですが。だけどこのシステムだと今までの機械的な搾りと比べ歩留まりが悪くなり若干のコスト増にはなりますが、鑑評会の出品酒と市販の吟醸酒の間に搾りに関しては品質差が無くなります。(もとの酒の素性が良くなければいくらこれで搾ったって、悪い酒が良い酒にはなりませんよ、とこのシステムの考案者の田口先生から釘を差されましたけど)
この10月24日よりこのシステムが稼働し始めますのでご期待ください。
▼旭酒造の商品紹介
今回は遠心分離システムで搾られる製品を紹介いたします。
獺祭 磨き 二割三分 (遠心分離)・純米大吟醸・山田錦・精米歩合23%・アルコール度数15.9度
1.8l 10000円 0.72l 5000円
獺祭 遠心分離 50・純米吟醸・山田錦・精米歩合50%・アルコール度数15.9度
1.8l 3000円 0.72l 1500円
どちらも11月よりの発売になります。