▼蔵元日記(遠心分離機その2)
あれだけ鳴り物入りで始まった10月24日の遠心分離機のテスト、朝からメーカーの派遣技師の動きがあわただしい。このシステムを考案した醸造試験場の田口先生も秋田から朝一番の飛行機と新幹線を乗り継いで山口県の工業技術センターの椎木先生の車に同乗して到着。昼からいよいよ本ちゃんのテストです。
ところがメーカーの担当者の顔つきがさえない。
聞けばベアリングの不調で深刻な微振動が出ているとのこと。今回この機械を導入するにあたって、私どもは当然研究室レベルの小さな処理量でなく実用レベルの処理量とメンテナンスが簡単であることを要求しました。それに対し、メーカーは旋回するベアリングの形式をより高度なものにすることによって対処しようとしたらしいんですが、それが裏目に出て、そこから微振動が出ているとのこと。
この時点で、テストはストップ。遠心分離機そのものは原子力発電所などで何十台も使われているように、実績のあるものなんですが、私どもが要求するように一回毎に大きな物量を回し、しかもそれに精度が要求されるということは遠心分離機のトップメーカーのコクサンにとってもかなり難題だったようです。工場段階で試験したときは何の問題も出なかったそうですが、実際に酒蔵にすえつけられた段階で、出てしまった。
結局実績のある元の形に戻すということで部品待ちとなり、次週持ち越しになっちゃいました。搾りあがった酒を飲もうと「今から行く」と宇部から電話を掛けてきた工業技術センターの柏木先生もがっくり。
この前日の会社の朝礼で、「当然トラブルは起こる。だけどそんな小さな障害で投げるんじゃなく、賭ける価値のある機械だから何とかモノにしよう」と立派なことを言ったんですが早速ほんとになっちゃった。
その晩は秋田から遠路はるばる駆けつけてくださった田口先生とちょうど遠心分離機のテストを見に来た河村理助商店の川崎さんも交えて、残念会のふぐ。(徳山にうまいふぐを食わせる。しかも安い。卸屋の経営しているふぐ屋があるんです。どのぐらい安くてうまいかというと、ふぐの激安店の本場大阪の人をこの店に招待すると、結局大阪で激安といっても品質と量から言えばまだこの二倍の価格、ふぐ刺しだけで腹いっぱいになるのは初めての経験と感激するぐらいです)
で、これだけで帰りゃいいのにもう一軒「夢の屋」に行って、そこにおいてある地酒の全銘柄を飲んで三人ともますますメートルが上がって、日本酒のあるべきあり方とか新しいタイプの日本酒の可能性とか、怪しい理論も建設的な意見も、色々飛び出して、気がつけば12時ご帰還。
また話がそれてますけど、結局部品を取り替えて臨んだ5日後のテストでも微振動が解決されなくて、さらに作り直しになっちゃって、ただいまストップ状態なんです。
だけどこんなに苦労してまでなぜこの遠心分離機にかけているかというと、まさにテレビのコマーシャルのとおりなんです。「我が家に遠心がきた。」って言うあの田中裕子の洗濯機のコマーシャルのフレーズ。その後続く「きれいが違う」まさにこれなんです。この遠心分離機で搾った酒を飲んだ人間はその魔力のとりこになってしまうんです。
もう少しお待たせするようになるかもしれませんがぜひ楽しみに待ってやってください。それだけの価値のあるお酒ですから。
出さなければ旭酒造がこの世にある価値がない(?)
▼文中のお店の紹介
栄ふぐ(徳山市櫛ヶ浜) TEL 0834−25−0575
ちょっと見は普通の家のように見えますが(実際経営者の自宅を改造したそうです)隣の青木ふぐ商店が経営するふぐ料理屋です。フルコース13000円は高いように見えますが、感覚的に言うと有名店で同じ量を食べたときの価格の二分の一です。ただし、酒は持ち込んだほうがいいですよ。つまりふぐ以外はこだわってないんです。それもいいんじゃないかそんな気にさせてくれる店です。(だってねぇ、4tトラックが4台もあるのに、これふぐの販売のためですかって聞いたら、少しでも良いふぐを仕入れるためにあるんですって、答えたんですよ、この店のおかみが)
夢の屋(徳山市青空公園そば) TEL 0834−32−5505
焼き鳥がメインの店ですが、イタリア料理店で修行したマスターの作るカルボナーラもいいですよ。お酒の品揃えはまずまず、安心できるラインナップです。客単価3000円ぐらい。獺祭は50を置いてますよ。