知り合いのご夫婦が旅行でニュージーランドにいかれて(うらやましい!!)お土産にチーズをいただきました。

チーズは乳酸醗酵ですから、同じ乳酸醗酵が醗酵のスタートとなる日本酒との相性は良いんです。特に吟醸系。香り系の純米吟醸と山羊のブルーチーズなんて個人的に非常に好きな取り合わせです。

以前、主菜の前の酒のつまみのつもりで食べ始めたブルーチーズを一塊のほとんどを食っちゃって、気がついたら酒も本日の詰口の純米吟醸を二合飲んでて、嫁はんが所用でいないのを幸いそのままそれで夕食にしちゃったっていうぐらい。

ちょっとナイフで切っちゃあつまみ(小型のナイフと箸という人から見たら不細工な取り合わせで、それでも皿だけチーズの乳白色と色の合う深い紺色の信楽の皿を合わせて)、大ぶりで薄い上広がりの磁器の杯の酒を一呼吸上立ち香を楽しんじゃ口に流し込んで、口の中で酒の含み香と、繊細な味わいと、ブルーチーズの野性的な味を楽しむ。で、飲み込むと酒のおかげで余韻がすぅっと切れていくから、また次のチーズに箸が行く。

延々とこれを繰り返している姿は他人から見るとかなり無気味だと思うんですが。だけど、これ告白しますと味覚に与える感覚がすごく官能的なんですよね。つまりエッチなんです。だけど日本酒もこんなエッチな感覚って必要なんじゃないかな。

ナイフと箸という不細工な取り合わせは止めて、もう少しシチュエーションをお洒落にして、30年前の若尾文子なんてのが相方で座ってりゃほんとにエッチですけどね。(出てくる女性で年がわかるって?だけど1950年生まれだから勘弁してください。しかし、これで司葉子だともう少し清く正しくなんて感じになってしまうから、いいところでしょう?!)

これと対極にあるのが、通常日本酒のイメージにあるシチュエーション。見越しの松と黒塗りのハイヤーの待つ黒塀の高級料亭で・・・背広の袖かららくだの下着を覗かせながら芸者に酌をさせる。たまたま前夫と別れて今月から出てきた新米芸者の指三本つかんで「これでどうや」なんて(これで一国の宰相の座を首になったわが業界出身の政治家がいましたけど)・・・どう見てもこれだと助平だけどエッチじゃない。

もっともこれは味覚じゃなくて、場面のほうですが。

だけど、以前さる料亭の女将が何かの本に書いてた話では、最近の政治家のお好みは焼酎の梅干割が多いとのこと。やっぱりシチュエーションに味覚も引っ張られるんですかね。

ところで、10年ぐらい前にイタリアのクルマに乗っていたことがあります。同じ時期にその故障の多いのに耐えかねて(なんせ、イタリア製ですから)ホンダの1600ccの小型セダンを買いましたので、特別よく性格の違いもわかるんですが、これが見事なほど対照的。

ホンダは数年後にイタリア車を手放した後も私の忠実な足として、現在まで10年以上20万km以上の酷使に耐えてくれています。スポーツタイプでもなんでもない安いのがとりえの普通の車なんですが、今でも高速道路などで、うっかりするとスピードメーターが180kmに達しそうになるぐらい快調なクルマです。(私はどちらかというとゆっくり走るほうで、決してスピード狂ではありません。念のため)

本当にいつも変わらぬ調子で実用車としてすばらしい車ですが、だけど・・・、それだけなんです。あのイタリア車のたまさか調子のいいときの思わず「オォー・ソレ・ミィーオォー」と歌いだしたくなるような晴れやかさも、なんともいえないエンジンのセクシーな鼓動も、ホンダのハンドルを握っている手には伝わってこない。つまりエッチじゃないんですね。

対してイタリア車はエンジンの鼓動も自分を包んでくれる車室内のムードもたまらなくセクシーでエッチなんです。(決して一部のクルマのようにラブホテルも顔負けの内装だからという意味じゃないですよ)なんかねぇ、エンジンがなん馬力あるとか時速何キロ出るとか、そんなこと関係ないじゃないかって気になるんですね。そんな数字上のものじゃなしに人間の五感に訴えてくるものが大事だと。

それがエッチに感じる正体と思うんですが、お酒も一緒と思うんですね。

嗜好品である限りはただ酔えばいいだけのもんでもないし、日本酒度がいくつで酸度がこれだけなんてお勉強の道具でもない。人間の五感に訴えてくるものをもった酒、品質もパッケージも、商品自体が要求する飲むときのシチュエーションも・・・そんな「エッチ」な酒を造りたいと思います。

エッチであるということは素晴らしい。

獺祭に合うつまみ(お客様推薦)

奇しくもお客様からカマンベールチーズをわさび醤油で食べたら美味しいとのメールが届きました。クリームチーズをオカカと醤油で食べる「チーズやっこ」は私の定番の酒のつまみなんですが、これも早速試してみましたら、結構いけました。

教えていただいたお客様はこのつまみで獺祭50を七合飲まれたそうですよ!!!

▼旭酒造の商品紹介

獺祭寒造早槽48(純米吟醸酒・季節商品) 1.8l 3000円・0.72l 1500円

獺祭のしぼりたてです。当たり前のものを当たり前に造る。当たり前の酒。獺祭の商品レンジとしては下から二番目のランクのお酒ですが、それだけに旭酒造の普通の造りで普通に造ってます。だからこそ、このお酒が私どもの設定した品質ランクにならなければならないと思っています。