あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお付き合いをお願いします。


▼蔵元日記(今年の抱負)

瓶詰め場の改装; 狭いスペースで無理やり瓶詰めしてきたんですが、限界になってきています。何とかもっとスペースを引き出せないか、毎日敷地の図面の上に必要とされる機材の同縮尺の模型を置いて頭をひねっています。

精米所の建設位置決定; そうです。旭酒造の年間玄米処理量だと、自家精米を良い酒を醸造する上の必要絶対条件とする普通の銘酒蔵の概念に逆らっても、外部業者に委託精米する、いわゆるアウトソーシングしたほうが、お客さんに本当にお支払いいただく代価に対してよい品物をお届けできると思い、業者での委託精米を押し通してきました。しかしこの方式はこれまでは合理的だったんですが、近年の数量の伸びというよりも玄米の使用量の伸びが合理的な策のはずを反対にコストアップ要因に追いやってしまいました。実際に今年の玄米の使用量四千俵。トン数にして240t。そのうち約135tを糠として削り、総計105tの白米になるまで磨くんですから、精米加工賃も半端じゃない。フェラーリが一台買えるぐらい。

以上どちらも敷地の問題が絡まっております。過疎地を嘆いている山間地に酒蔵があるから土地はいくらでもあるように見えますが、過疎地というのは使える土地が無いから過疎になったという面もあって土地が無いんです。しかも自分は都会に住んでいるという不在地主がたくさんいて、なかなか土地の所有権が流動しないし、借り手のほうが強い現行の土地の法律では貸すと帰ってこないから、たとえ土地を荒れ地にしといても貸さないほうが地主にとって有利な現実がある、その上に建物を建てることは地上権の発生ということもありますます難しい、というお金で解決できない問題も抱えているので余計なんです。(この辺り法整備すれば全国の過疎の問題はかなり緩和されると思います。こうやって日本は国の政策で過疎を促進しておいて、一方で過疎対策で相当な金額の補助金を箱ものなんかに突っ込んでいるんです。)

政治の問題は置いといて、何とかこのあたりの土地不足の問題を、最終的には裏山を削ってでも解決しようと思っています。しかし、これは何度もできることではないですから、20年先まで見てレイアウトを考えたいと思っています。


▼蔵元の失敗(新年編)

行かなきゃ良いのに新年2日の初売り、妻にせがまれて買い物に広島に行きました。虎を野に放した如く各売り場に突進する妻の後ろで、「一つの買い物によくあれだけのエネルギーを投入できるもんだ」と嘆息しながらただ我慢の半日。

もちろん蛍の光とともに店を出て、西広島バイパスに乗ったら、全面渋滞。あの日は全国的な寒波に襲われたようですが、西広島バイパスでも路面が凍結して立ち往生した車が頻発したようです。私たちも日頃一時間強の道のりを6時間かけて帰りました。ぐったり。


▼蔵元の失敗(年末編)

「あれ、新岩国駅にしちゃえらい車窓に映る灯りがきれいだね?」「まずい、ありゃ出光の徳山工場の灯だ!」そうです新岩国で降りるはずの最終の下りの新幹線、寝過ごして徳山まで乗っちゃった。

今日は広島で開かれた酒おこしまちおこしの会の忘年会で酒を飲んだ帰りです。師走の29日ということで大半のメンバーは3時の開宴(!!)と共に延々飲んでて立派なトラになっているところに、飛んで火にいる夏の虫で私が仕事を終えて7時半に駆けつけたわけですから、まぁー丁度いい酒の肴ですわね。マツダエースの新社長になった長谷川さん(おめでとうございます)は特に絶好調。もちろん謎の自治体職員北村課長(一度秘書課長時代に職場訪問したかったなぁ・・・・。女の園みたいだったんだろうなぁ・・・・。)、夜の帝王竹原の酒蔵「龍勢」の藤井社長や広島経団連の古川会頭はじめみんな絶好調。

で、遅れを取り戻そうといささか飲みすぎたようで、新幹線に乗るときは「去年もやったんだから今年は気をつけよう」と思っていたんですが・・・・・。(そうです。去年もやったんです。)

で、タクシーでご帰還。次の日、家族に笑われながら新岩国まで車を取りに行きました。アー、高いものについた。来年こそは寝ないぞ。(全然懲りてない!だからそうまでして行かなきゃ良いんですよね。どうせおっさん同士で酒飲むだけなんだから。何人か女性の会員もいるんですが、マドンナ状態でほとんど隣はおっさんばかり。もちろんかくいう私も立派なおっさんですけど。)


▼蔵元のいいわけ

前日嫁ぎ先から帰ってきた娘に何を食いたいと聞いたら、「徳山の上田のステーキが食べたい」と言い出して、予約を取ったら夜の九時半ならあいてますとの返事。それでもここで諦めたら食べられないからと、仕事終わった後、本屋で時間をつぶして上田に行って、うまいヒレ食べて、帰宅したら深夜一時。

これが次の日の新幹線乗り過ごしの遠因なんですよ。

でも、個人的にはここのステーキはものすごくすきなんです。こんな失敗を引き起こすとしても行く価値のある一軒です。なんと行っても、主人の美味いものを客に食わせてやろうという気概がひしひしと感じられて、「この辺りの客は味なんてどうせわかんないからこんなもんでいい。客商売なんてこんなもんさ」という地方にありがちな変に世間ずれしたところが無くて爽快なんです。

尤も最初に行ったときは「ワインと比べたら日本酒はまだまだ勉強が足りない」と言う上田の主人との間に血の雨が降りそうになりましたけど。(さすがにそれ以降は私の前ではこの意見は控えています。本心はどうなんですかねぇ。)


▼蔵元の読書

年内忙しくて本屋に行ってもどうせ読めないからと買わなかったんですが、正月休を控えて日頃の反動か,物欲の鬼。(あれっ、荒野に放たれた野獣の如く売り場に突進するどこかの嫁さんと変わらないか!いくら本読んでも元が馬鹿なら一緒という厳しい現実がわかっていない。しかもこの後の文章でばれますが、買うだけ買って安心して未だ読んでない本が幾つか。)

で、買った本の一部です。

「やりたいことは全部やれ」大前研一(そうです。旭酒造はやりたいようにやっているんです。自分たちの力不足からおこる仕上がりの出来不出来は別にしてこんな酒を売りたいと思う酒をお客さんに売らせていただくという贅沢をさせていただいています。ありがとうございます。)

「ファーストフードが世界を食いつくす」エリック・シュローサー(マクドナルドに代表されるファーストフード業界が社会に及ぼした影響を分析しています。ただいままだ読んでいます。)

「ウエルチの戦略ノート」ロバート・スレーター(現在最高の経営者と思われる元GE会長のジャック・ウエルチの行動哲学を書いたもの。酒という一つのものにこだわる旭酒造の感覚からすれば、「これをやっちゃぁおしまいよ」というところもあるんですが魅力的な経営者であることは議論の余地がありません。また、今の日本酒業界に一番足らないものを持っている人だと思います。彼に代表される優勝劣敗の理論を無視したり拒否するんじゃなく、受け入れた上でそれでは今の社会に対して民族の固有の酒として清酒を造って来た清酒業界は伝統産業であるがゆえに何をすべきか何が出来るか考えるべきです。立派なことを言ってもまだ読んでません。)

「デフレ時代を勝ち抜く経営術」日経BPムック(ファーストリテイリングの柳井社長と吉野家の安部社長の対談記です。対談部分だけ読みました。)

「アトランティスを発見せよ」クライブ・カッスラー(ご存知冒険活劇小説)

それともう一冊、ブルータスの最新号、スローじゃなくてごめんねという副題でファーストクラスファーストフード(ま、極上のファーストフードという意味ですかね。だけど最近ファーストフードの対極ということでスローフードという概念が流行っているんですが、ややもすると洗練とか競争とかに背を向けて商品として不充分な現状の言い訳に使い始めているところも見うけられて、胡散臭く感じていました。そんな意味でこの雑誌の特集で取り上げられているファーストフードを見ていると特集の題名とは反対にどう見てもこれぞスローフードの精神を体現したものというものばかりで、こういう精神運動の難しさを感じました。)

だけどこうやって見ると経営のハウツー本や冒険活劇小説ばっかりで、しかもまだ全部読んでない。としかなぁー・・・・・。