春の訪れと共にお酒屋さん主催の新酒の会が開かれ始めます。
先日も広島の大和屋酒舗主催で「春の瀬戸内料理と銘酒の夕べ」と銘打って開かれた酒の会に出席してきました。出品されていたお酒は私どもの「獺祭」のほかは広島県内から「天宝一」「酒有喜」「美和桜」「雨後の月」、島根県から「開春」、後は新潟の「久保田」。
それぞれ蔵元から出席もあってにぎやかでした。その酒の席の私の周囲での会話。
「お酒ってねぇ、そんなに料理と相性を真剣に考えなくても大丈夫ですよ。」
「だってねぇ、日本人は、ほら、口に入れた料理をごっくんって飲み込んでから、お酒を口に含むでしょ。そのお酒を飲み込むとその酒の切れと共に口の中に残っていた前の料理の後味も洗い流されて、次のお料理が美味しくいただける。」
「フランス人みたいに、あれマリアージュって言うんですか、口の中でワインと料理をグチュグチュと混ぜ合わしたり私達はしないでしょ。だからねぇ、そんなに気にしなくても良いんですよ。ソムリエじゃないんだから。自分が美味しいと思う酒を今食べたいと思う料理と合しゃ良いんですよ。」
「日本酒って、フルーティな香りとか吟醸香なんて一言で言いますけど、この香りの中にご飯の炊き上がったときの香りとか、昔、おばあちゃんに飲ませてもらった甘酒の香りとか、私達が今までの生活の中で嗅いできた香りが人間にはっきり解析できるレベルじゃありませんけど微妙に入ってて、だから日本人にはわかりやすいんですよ。」
「ワインってねぇ、ラベルもフランス語だけど中身もフランス語なんですよ。だからフランス人には解りやすい訳ですけどなかなか米の文化の日本人には理解しづらい。対して日本酒はラベルも日本語で書いてあるけど中身のお酒そのものも、小さな時から慣れ親しんだ米が原料ですから、いわば日本語で書いてあるところがあって日本人には理解しやすいんですよ。」
「お酒ってねぇ、ちょっとワインなんかと比べても重たいでしょ。そこが良いんですよ。特に焼酎とかウィスキーのような蒸留酒と比べるとよくわかるんですけど、体の調子の悪いときは美味しくないんですよ。そんなときは体がサインを出してるわけですから少しお酒の量を控えめにすれば良いんですよ。」
「健康的でしょ。日本のお酒って。こんな良いもの世界中にありませんよ。」
ちょっと酒の入った私の話はこのお酒の会に同席している女性たちが美人なのも手伝って、そのうち「日本酒好きは美人」説も披露しちゃったりして、もう絶好調。そのうち杜氏の話になり、
「酒蔵と杜氏の関係って、言えばプロ野球の球団と選手みたいな関係で、完全な終身雇用じゃないんですよ。」との私の話に
「あ、そうか、ワイナリーとワインメーカー(ワイン製造技術者)のような関係なんですね。有名なワインメーカーでもワイナリーを何箇所か変わった人いますものね。」と、女性のうちの一人。
「へぇー、詳しいですねぇ。で、皆さんは何のグループで今日はこの会に来られたんですか?」
「ワインスクールなんですよ。あちらが先生で、あと私達が生徒です。」
うーん、やばいなぁー。ワインを茶化すようなこと言ってないかな。胸に所属グループ名でもつけといてくれりゃ良いのに・・・・。もちろん後の祭ですが、だけど、しっかり最後には皆さん私の口車に乗せられて「今度は一つ日本酒の酒蔵も見に行きましょうよ。ワインスクールの校外授業で。」と言って帰っていかれました。あぁー、良かった。偏見とひがみの日本酒の蔵元なんて言われなくて。皆さん、私に会ったときはどんな種類のアルコール飲料が好きか先に教えてください。私が偏見と断定に満ちた自説を展開しな
いうちに。
尤も、聞いても一緒かもしれませんね。何せ、持ちネタは日本酒を巧妙に持ち上げる話しか持っていないわけですから。私と話す人に必要なのは忍耐と寛容かもしれません。どこかでお会いしたときはよろしくお願いします。