女房の買い物についてスーパーマーケットをのぞいた私。ちょっと古いけど「濡れ落ち葉」状態。(ある人に言わすとこういう状態の亭主を「お洒落小鉢」とも言うそうです。そう、ほら、よく洋酒かなんかのキャンペーンの景品で付いてくる皿なんかのことです。心は「なんにでも付いてくるけど役に立たない!!」んだそうです。)
女房のそばを離れて店内をふらふら歩いていた私はある売り場で目が点になりました。それはパンツ売り場。かっこよく言えばトランクス。ま、デカパンのことですね。で、そのデカパンの何がそんなに私をびっくりさせたかというと、その色と柄です。2mぐらいの広さの売り場台いっぱいに広げられたパンツのほとんどが正常な神経でははけそうもないデザインなんです。原色の赤や紫、はなはだしいのは尻のところになんとも悪趣味なキャラクターマークの入ったもの。とても紳士のはくものには見えません。(お前は紳士か?)細かく台上の品物を精査(?)したところによりますと、まともに穿けそうなというか、まさかのときに恥ずかしくない(何がまさかかよくわかりませんが)色・柄・デザインは一つか二つ。
この発見を帰りの車の中で女房に話したところ、「何でもいいんじゃないの。どうせ人に見せるわけじゃないし。」と冷たい返事。ま、それはそうですけど・・・・。その私の淡い希望というか下心というか妄想はおいといて、あんな品揃えで買い手が実際いるんだろうか。他人事ながらその下着売り場の売上が心配になるような品揃えでした。
で、次の日会社の検査室(酒の醗酵状態や麹の成分分析をする部屋です)でその話をしたら、もと大手量販紳士服チェーンにいたA君が教えてくれました。
「それは対象の客が自分で買う客じゃないからですよ」
あ、そうか、自分で買うんじゃなくて、奥さんが買うんだ。そういえばA君がもといたような大手量販紳士服チェーンに行って見ると、一体これ誰が着るんだろうというようななんとも派手で、しかも地味で、しかも無趣味で、しかもいくら個性の時代といってもねぇと言いたくなるような不思議な柄のブルーのスーツなんて代物がかなりのパーセンテージで品揃えの中に入っていて、これが本当に売れるんだろうかと不思議に思えることがあります。
それでも、その店が倒産したり株価が100円を割ったなんてことも聞きませんから、あの在庫をどうするんだろうと、昔から不思議に思っていたんですが良く分りました。つまり、かなりのパーセンテージでとにかく服を着ていれば良いんだからと奥さんなどに買わせて自分で買わない層がいるんですね。
これと同じような経験を酒でしたことがあります。10年近く前ですが、ある卸屋さんに頼まれて、以前、純米酒と本醸造を新企画商品として出した時です。小売価格で一升2400円の純米酒と1900円の本醸造でした。純米のほうが55%精白で、本醸造も公には日本晴の60%精白といいながら実際は55%精白の酒造好適米を使用していました。スペックはともかくとして特に本醸造は酒の出来も良くて、私の見るところ品質としての価値は2300円ぐらい。吟醸酒ですよといってもとおるぐらい。価格と比較してダントツに買い得と感じていました。
ところがふたを開けてみると純米酒は当初予定の倍出て品切れになってしまったんですが、本醸造はまったく売れない。この結果に対し、自分なりに分析して出した結論は以下のようなものでした。2400円の純米酒はその価格から見て自分が飲みたい人が買うお酒だから、価格相応の品質があると買った本人が感じれば、売れた。ところが1900円のお酒はその価格帯から、『自分はお酒を飲まない奥さん』が『酒はどれ飲んでも一緒といっているご主人』のために買うお酒。自分が飲まないから、たとえ買った酒の品質が価格以上に優れていても次の購買につながらない。やっぱり安いほうが良いから大手の『ツキ』パックや『マル』パックに価格の魅力で勝てない。
同じ理由と思いますが、ある九州では最大手の地酒蔵が、何年か前に清水の舞台から飛び降りるつもりで、上選を原価の高い本醸造にしたそうです。ところが数年後、日本酒のナショナルブランドといわれる灘や伏見の大メーカーの安売り攻撃に耐え切れなくなって、もう一度三増酒(糖やアルコールを補填した酒:太平洋戦争時代の米不足の解決策として国税局の研究機関で考え出された)に戻したそうです。お客様からの文句を覚悟して待っていたその酒蔵に、結果として誰もクレームをつけなかったそうです。一寸寂しい話ですが、その蔵の上選を買うお客さん(飲んでいるお客さんじゃありませんよ。あくまで購入客)にとって品質なんてどっちでも良かったんですね。
と、言うことは自分で商品を選ぶ類の、結果としてうるさい客は非常に少数だということです。その客を見切ってしまえば、残りの大部分のお客は一番分りやすい価格訴求で引っ張るか宣伝とか大衆の持つ一種のムードで引っ張れる。その上で、値引き分やかけた宣伝費以上に品質を落としてのコストダウンを行っても市場は気付かず支持してくれる。しかも、ここに消費のボリュームゾーンがあるから売上金額も利益も結果として最大のものが取れるということです。利益を追うならここを追っかけなきゃいけない。と、言うことはわかっているんですがねぇ・・・・。しかしねぇ・・・・。ま、いいや。どうせ好きでやってんだから。
皆さん、是非、商品は自分の意志で選びましょう。(旭酒造のためにも) だけどパンツを自分で選ぶのだけは止めたほうがいいかもしれませんね。中年のおっさんがそろって売り場台の前で選んでる姿なんて想像するだけで・・・・・。
うーん、今回のメルマガも下ネタで始まって下ネタで終わっております。次回は少しでもレベル?を上げるように努力します。