先日、南国宮崎に行ってきました。目的は宮崎で毎年開かれている「大吟醸を飲む会」に出席するためだったんですが、事前に私が宮崎に行くことを察知した(?)獺祭を置いている飲食店のご主人から、「来るなら是非寄ってよ!」といわれていました。前日、フルネット主催の純米酒フェスティバル大阪に出席して、伊丹空港から全日空で宮崎空港について、携帯電話のスイッチを入れたとたんにそのお店に先着していたお取引のお酒屋さんのご主人から、「もう着いたの?昼飯準備してるからね」と、悪魔の一言。その日の昼の「ぶたまん」という中華のお店の美味いワンタンスープが宮崎の旅の始まりでした。

その夜はコンベンションサミット(例の外相サミットの開かれた会場)で前夜祭として開かれた江戸落語を聞く会。三遊亭鳳楽師匠の人情噺に思わずほろっとして、二次会は失礼して家内ともう一人九州でお世話になっている方三人で隣のホテルシーガイア(今はシェラトンに売却されたそうですね)で軽く食事して帰りました。だけど、二つの施設ともすごい金のかけ方ですね。世界の外相を招いて開催するサミット会議のために造られた施設ですから当たり前といえば当たり前ですけど。設備も帝国ホテルやニューオータニと比べても新しいだけこっちのほうがきれいというぐらい。「今度はここに泊まろう」という女房の言葉を聞きながら、「だけど一泊の料金を聞いたらきっと女房は目を回して『やめよう。安いビジネスでいいよ』というぐらいの金額なんだろうな」と考えながら聞いていました。

次の日の昼、ホテルの露天風呂に入っていたら、先に入っていた九州弁のお客さん、なんとなく体型が違うんですよ、私達と。足が長いのかなぁー。おなかは出ているんですがウエストも少し上についている。九州人と私達じゃ人種が違うのかなぁーなんて考えていたら、その日のパーティ、腰を抜かしました。

「日本の酒と食を守る会」の会長村田淳一さんの肝いりで、しかも事務局はワールドカップドイツチーム宮崎キャンプの全体プロデュースをした満元さんと宮崎放送の方が手弁当でやってるんですから、変な進行上の落ちは無いのは勿論、豪勢なことは天下一品のパーティだったんですが、何よりびっくりしたのはその参加者の飲んだお酒の量。北は北海道の「男山」から南は宮崎の「綾錦」まで全国33の蔵元が持ち込んだ選り抜きの大吟醸の四合瓶594本が二時間で500人の参加者のお腹に入っちゃったんですから。この酒の強さは尋常じゃない。やっぱりかの地の人々は酒が強かったといわれる縄文人の流れをくむのに違いない。とてもわれわれのような平均的弥生人のアルコール分解能力しか持たない肝臓を持っている人間にはついていけそうにない。

で、終わった後二次会があって、そのあともう一軒、「絶対寄らんといけんよ」と言われていた焼肉屋の「みょうがや」に寄りました。前述の満元さんも常連客という、この店も知る人ぞ知る肉の名店です。ちょうど当日はここの肉を納めている肉牛生産者の尾崎さんも来ていて大変な賑わい。ちなみに「みょうがや」の使っている肉は「尾崎牛」というそうです。なぜ、宮崎の尾崎さんの肥育する牛が、宮崎牛じゃなくて尾崎牛か?ですって。それは飼料の問題です。現在の食品表示によると宮崎牛と名乗る為には宮崎のJAの指定する飼料を牛に食べさせないといけないそうですね。だけど、尾崎さんは最高の肉牛を目指しているから飼料にこだわる。結果として、指定の飼料じゃ物足らないから自前で選択した飼料を使う。だから「尾崎牛」です。

「うーん、美味い!!」日頃ほとんど肉を食べない私も、おろしポン酢・レモン塩・塩コショウなど肉の部位に合わせて出てくる付けダレと共に貪り食いました。

結論。尾崎牛は肉の大吟醸!!

で、何が宮崎は危険かと言いますと、帰って体重計に乗ってみると、日頃の平均体重と比べて3kg太っている。実を言うと、大阪梅田の地下で替え上着を衝動買いしちゃったんです。それがベージュとも肌色ともつかぬ色の麻とシルクの生地だったんですが、なぜその気になったかというとそのシルエットです。昔、私達が20代の頃に流行った様なウエストがしまった細身のシルエットで襟がなんとも言えずかっこよく立体的に立ち上がっている。なるほどこういう恰好がクラシコ・イタリアって言うやつか。ところが、何せ細身なんで背広の内ポケットに物がほとんど入りそうにない。手帳に財布に名刺入れ・ハンカチ・キーホルダー・ペン・小銭・当日の資料等のA4四つ折の何枚か・電車内用の文庫本・最近はこれに携帯電話・大きな声で言えないけど近頃必要になった遠近両用めがね、これだけどうやってポケットに入れるんだろう。影響されやすい私は、わが敬愛す
る作家の塩野七未さんが、男たるもの少々背広の型が崩れてもセカンドバッグなんていう軟弱なものは持たず、全部ポケットに入れている男に色気を感じると書いているのに出会って以来、型が崩れようがどうしようが全部持ち物をポケットに入れて歩いているんです。(誰も見ちゃいないのにね) と、言う状況であるにかかわらず、そんな何も入らないような背広買っちゃって、その上3kgも腹が出ているなんて冗談じゃないよ。

あぁ、宮崎は美味しい!!だけど、宮崎は危険だ!!

病気は治っておりません。宮崎の前日大阪の純米酒フェスティバル、終わった後、行かなきゃ良いのに二次会に行ったら、会に参加していた乾さん達美女三人組に御堂筋の「たこ茶屋」のカウンターでバッタリ。二次会で酒蔵仲間で飲もうとそこまで抱えてきた獺祭の一升瓶をなんとなくそこへ進呈して二次会の会場に予約した奥の小部屋に入ったら、早速幹事役の石踊女史から「桜井さんらしいねぇ・・・・。女に弱いんだから・・・・。」というお言葉。お言葉を返すようですがねぇ、石踊さん。男が無駄遣いしなくなったり、なんとなく女性に引け目を感じなくなったり、女性に強くなったらこの世は闇ですよ。第一、私が女性に強かったらここに来ずにホテルに帰って寝ています。貴方も「女性」ですよ。言い負かしても、自慢にはならんか。

ちなみに「たこ茶屋」はたこ料理で大阪では有名な店です。テレビで「料理の鉄人」なんか見ている人は何度かご主人が出てたから、ご存知かもしれませんね。活き蛸の刺身。足の吸盤がまだ活きてるから上あごにへばりつく。噛めば口の中に淡白な甘味が広がる。活き蛸の刺身だけじゃなく蛸の美味しさを知り尽くしている。美味しい店ですよ。

引退後
ある新聞に最近「アメリカでは立派に仕事を成し遂げて引退した人の住む、たとえば南の島でゴルフをして暮らす、なんて言葉が実現できるようなコミュニティが増えている」との話がのっていました。「引退後こそ楽しみたい。そのために仕事をする。」それが米国の常識だそうで、それと比べて東京の住宅事情の問題が述べられていました。住宅事情はともかくとして、気になったのは仕事に対するアメリカ人の常識といわれるこの感覚で、自分の身と引き比べて、なんとなく彼我の感覚の違いを感じるものがありました。

ここに書いてあるこんな人生つまらない。個人的にはいつまでも現役でいたい。いつまでも酒造りに携わっていたい。たとえ将来、息子か誰か後継者に老害と言われる日が来ても。「彼」に追い越されて、もう自分では勝負にならないと思い知らされるまでは。とにかく、私にとっては酒造りこそ人生なんですね。これが日本人の昔からの仕事へのかかわり方じゃないですかね。それで、「あんたは女性に弱いねぇ・・・・・。」と一生言われていたい。

進歩がないねぇ。