半年振りにニューヨークに出張してきました。今回のトピックは、とにかくニューヨークは地酒ブームだと言うことです。これまでとまったく違う手ごたえをひしひしと感じた一週間でした。
どうします・・・・? ジュリアナ・ロバーツを10歳若くして少しスリムにしたみたいなブロンド美人に「トゥエンニイトゥリーパーテンタッタイ」なんて言われたら?
要はこれ「獺祭 磨き 二割三分をください(トゥエンティスリーパーセントクダサイ)」と言ってるんですけどね。(彼女は店のスタッフになんと言ったらいいか教えてもらったようです) ところが、当方はまったく英語音痴で、すでにパニクっているもんですから、これが日本語とわからないわけです。(その上凄い露出過多のドレスだから目移りしちゃって)
彼女は、地酒の持つ味わいとともに、いたく精米歩合に関心を持ったようで、この後も矢継ぎ早に質問を英語で繰り出してきます。当方が「アイ・キャン・ノット・スピーク・イングリッシュ」と断ると、「Oh」と眉をひそめて「Ok、Ok」と一旦は笑顔で答えるんですが、時間がたつとまた忘れて早口の英語で質問を繰り出します。
ま、自慢してるわけじゃないんですが(立派に自慢しています・・・すいません)、とにかく一部の日本通のアメリカ人というんじゃなくて、このぐらい今までまったく日本と接点のなかった人々の間にも、地酒のお客様は広がっているということです。
ここまで地酒が広がった背景には、近年日本食ブームに乗って「酒蔵」や「めぐ」などニューヨーカーにも受け入れられる地酒を売り物にするお洒落な店ができたことが大きいと思います。
その上、「酒蔵」や「メグ」に続いて「祭」や「えん」などの客席数300席以上を誇るお洒落な大型店も続々開店して。だからと言って、大型店だけじゃ無しに、たとえばSAKEHANAなんて中型店もがんばっていて、本当にニューヨークの地酒事情ってエキサイティングです。(SAKEHANA;78丁目2番街と3番街の間・高級住宅街の中にあって客筋も良い、店長TOSHIさんの日本酒への情熱は半端じゃない)
▼恐怖の割り勘
海外で酒蔵仲間で飲食店に入ったとき、なんとなく慣習になっていることがあります。「店に入って、自分の蔵の酒があった蔵元はその酒の勘定を持つ」というものです。海外で入った店に自分の酒が置いてあるということは酒蔵にとっては非常にうれしいことですから、その酒代を持つことはちょっと晴れがましくも楽しいことです。
ただ、ひとつ旭酒造にとっては悩ましいことがあります。それは私どもの場合は「磨き二割三分」の入っている確立の高いということです。
その原価の高さから国内でもいいお値段を頂いているお酒ですから、関税や運賃の高い海外ではどうしても720mlで一本二万から三万円程度になります。(ラスベガスなんて450ドルだそうですから)
どんなに高くても「自社の酒の酒代が惜しいようじゃ男が廃る」てなもんですが、やっぱり、貧乏酒蔵のちょっと軽い財布には痛いというものです。だけどそれでも置いてあるお店に行きたい。軽い財布から払う立場に立ちたいと言う、「山口の山奥の小さな酒蔵」のうれしくも悩ましい苦悩が続くわけです。
▼恐怖のボリューム
海外に行くともうひとつ恐怖があります。それは食事のボリュームです。夜はたいてい試飲会などでそのままそのお店で食べることが多いですから、必然的に日本酒に合う料理ということになります。ですからそんなに食事のボリュームに気を使う必要がないんですが、問題は昼飯です。
特に今回のようにアメリカの場合は問題です。聞くところによると平均6000キロカロリーを、一人のアメリカ人が食べているそうです。そうすると平均的日本人の三倍のカロリーを食べていることになります。ですから料理の量も半端じゃない。
着いて三日目、近くのレストランに入った私はサラダとサンドイッチを頼みました。するとウェイターがこちらを見て「サラダはこれぐらい(両手を大きく広げて)あるから、こちらのミニ・サラダにしろ」と教えてくれました。
アドヴァイスにしたがってミニ・サラダとローストターキーのサンドイッチをオーダーした私の前に現れたサンドイッチなる代物は25cmはあろうという皿に隙間なく盛られたローストターキーとマッシュポテトの小山。想像したサンドイッチと目の前の物体の落差に驚きながら探ってみると、底に約5ミリ程度のパンを敷いてその上に直径15センチ厚さ3センチのローストターキーを乗せ、その周囲に間断なくマッシュポテトを2センチの厚さにひいていました。
「何とかなるさ」と食べ始めたんですが、10分後脂汗とともに5分の2を残してあえなくギブアップ。
この昼飯のおかげで次の日の昼まで何も食べられない24時間を過ごしました。(酒と少量の美味いつまみを除いて・・・その日の晩はなんせあのMEGUでしたから・・・結局うまけりゃ食べるんですよ・・・だけどあのぱりぱりに焼いた鮭の皮にのせて食べたイクラの和え物はうまかったなぁ・・・・)
この経験に懲りた私は翌々日の昼食は49丁目イースト249番地のレストランSEOで日本料理にしました。日本料理ならボリュームも日本的だろうという計算です。頼んだ刺身定食も美味しくて(NYは北大西洋で取れる魚が豊富で新鮮で美味しいんです)満足したまでは良かったんですが・・・・。
つい乗っちゃったんですね。「デザートいかがですか」というお店の女の子の言葉に。「いただきます」といった私の前に現れたのは平均的アメリカのアイスクリームとしては小振りだけど日本の基準では十分ジャンボなアイスクリーム。
絶対アメリカでダイエットはできないわ!!