ひよこ日誌

皆さん、はじめまして。

今回から、不定期連載 蔵ひよこ日誌を書かせていただく桜井 一宏と申します。拙い文章ですが、お付き合いのほどを宜しくお願いいたします。

まずは簡単に自己紹介を。

山口県周東町生まれ、現在28歳。先月まで東京で別の会社で働いていましたが、この6月より旭酒造に入社し、現在研修中。まだまだ蔵「元」、蔵「人」というより、まだまだ半人前の、卵の殻の取れてない蔵「ひよこ」のようなもので、蔵内の皆さんに、色々なことを教えてもらい、お世話になり、ご迷惑をかけながら奮闘中です。

はっきり言って、理論的なこともわかっていませんし、専門用語はちんぷんかんぷん、わからないことが何なのかがわからない状態です。そんな状態のこの蔵「ひよこ」の視点から見た旭酒造での酒造りを、これから書かせていただきたいと思います。

それでは、まずは第一回として、「おいしいお酒を作る方法」についてです。

皆さんは、おいしいお酒を造るには、どうしたらいいと思いますか?

私は、いい米を使って、麹、酵母を上手に使って醸造し、おいしいお酒を造る?と思っていました。確かに実際に製造する流れはそうなのですが、そこにたどり着くまでの考え方は全く逆でした。

上に挙げた方法が、「風が吹けば桶屋が儲かる」的な方法とすれば、「桶屋が儲かるためには、どのような風が吹くべきなのか考える」とでもいう方法でした。

まず、造りたいお酒、お客様に飲んでいただきたいお酒の味がどのようなものかを分析します。その次に、その味を作るためには、どのような作業工程、発酵作用が必要なのかを分析します。その発酵作用をするためにはどのような酵母が必要か、その酵母が活動しやすい米の状態はどのようなものなのか、その米の状態にするのはどのような麹が必要なのか・・・・・

等々を考えて、その結果として、製造の一連の流れが出来上がっているのです。いい米を使い、麹、酵母を上手く使い、上手く反応させても、チグハグなお酒になってしまう可能性が少なからずあるでしょう。また、例え、結果としていいお酒が生まれても、それは、「いいお酒が出来た」のであって、「いいお酒を造った」わけではありません。「いいお酒を造る」ためには、「いいお酒」がどのようなものなのかを考え、それを「造る」ためには、どのようにしたらいいのかについて、分析し、実行することが必要なのです。

その話を聞いて、目からうろこが何枚も落ち・・・いや、体から卵の殻が何枚も落ちた気分です。同時に「おいしいお酒」を造るということに、今まで以上のワクワク感を覚え始めました。

それでは、長々と書いてしまいましたが、今回の蔵ひよこ日誌は、これで終わらせていただきます。次回は、「洗米」「蒸米」について、書かせていただこうと思います。