蔵ひよこ日誌第3回 / 洗米と蒸米(今度こそ)と海外日本酒事情
皆さんこんにちは。
今回の蔵ひよこ日記は、書く、書くと言い続けて3回目にして、ようやく洗米と蒸しについて書こうと思います。
言うまでも無いことですが、日本酒を造る上で、お米は、不可欠な材料です。
しかし、お米の状態そのままでは、お酒には使いやすいとは言えません。
まず、お米の外側の香りや味を劣化させる部分を削り、内側の日本酒を造るのに必要な部分のみを取り出します。この作業を精米作業と言います。ちなみに、この精米の歩合に関して、旭酒造では、平均41%、最大では23%の割合までの精米を行っています。(参考までに、大吟醸酒における精米歩合の基準は50%、吟醸酒では60%です。また、分野が多少異なりますが、家庭で食べるご飯の精米歩合は、90%程度です。)
精米が終わったお米を、数週間から数ヶ月程度保存し、精米作業時に生じた熱で、お米から失われた水分を内部に自然に戻した後、いよいよ洗米作業に入ります。
洗米作業では、お米の表面に残った不純物、米ぬか等を洗い流す事と同時に、今後の作業に要求される水分を、お米に給水させる事が目的です。その時に調整を要求される吸水率は非常にシビアです。(許される誤差は、なんと0.3%以内まで!)
その数値を達成するために、洗米スタッフは過去のデータの蓄積したノートと給水時間を計るストップウォッチを手に、気温や水温、米の温度等の多くの要素による数値の微調整を、毎日行っているのです。
洗米が終わったら、お米を一晩置き、米全体の水分を均一化した後、蒸米の作業に入ります。
この作業でお米を加熱して、米の内部に含まれるデンプンが、麹菌のもつ酵素が作用しやすい状態にします。
この作業の特徴は・・・とにかく暑い!それにつきます。
蒸しあがったお米を掘り起こすのですが、お米を蒸した蒸気がもうもうと上がっている中での作業で、また、お米を掘り出す作業自体も結構な力仕事のため、作業が終わった後は、汗と水蒸気で、服などはビッショリになってしまっています。
この作業は確かにきついですし、もっと楽なやり方も有るのですが、このやり方でのお米の蒸し方が、旭酒造の目指す酒造りにもっとも向いているお米の状態を作り出せるため、他の方法には変えられません。
これらの精米~蒸米の作業の処理が終わった後、いよいよお米は、麹、酵母の作用により、お酒になっていく段階へと移っていくのです。まだまだお米からお酒への道のりは長いのですが、今後もこの日誌にお付き合い下さい。
(海外日本酒事情)
話はまるっきり変わりまして、実は7月末までの10日間、海外(サンフランシスコ・ハワイ)の試飲会に参加してきました。時差ぼけと言葉の壁にアタフタしながらの旅でしたが、海外での日本酒の浸透に驚かされた10日間でした。
その間に見てきた、海外での日本酒事情について、「独断」と「偏見」を承知の上で話させていただきます。(「本当はそうじゃないよ」とか、「見た範囲が狭いよ」とかのご意見、お叱りのある方いらっしゃいましたら、バンバンご連絡下さい。私も全然詳しくないので、是非色々なご意見を聞かせてください。)
どちらの州にも、日本酒はびっくりしてしまう程浸透していますが、浸透の種類が、サンフランシスコとハワイでは少々異なっています。一言で言うなら、日本酒は、サンフランシスコでは「SAKE」として広まっており、ハワイでは「酒」として広まっている。という様な印象です。
サンフランシスコでは、日本酒を飲むのは、アメリカ人及び、就労、結婚等でアメリカに在住している日本人が多い印象です。
シリコンバレーなどが近くに有るためか、富裕層、インテリ層が集まっており、その人達にとって、日本酒に関する知識を持っていることが、カッコいいことであるという風に捉えられています。試飲会等でも、熱心に日本酒及び日本語の知識を吸収し、その後で友人を連れて戻ってきて、覚えたての薀蓄を自慢げに披露する、といったシーンが何度も見られました。
ハワイでは、日本酒を飲むのは、サンフランシスコとは違い日本人が大部分であるという印象です。日本から観光に来ている人がメインとなり、日本酒を飲むとき=日本が恋しくなったときです。そんな時には、やはり普段目に留めている(飲みなれた、日常的な)、お酒を注文しがちになるのだと思います。(確かに旅先で飲む時には、飲みなれたお酒か、逆にご当地の飲み物を飲みたくなりますよね?)
また、ハワイ在住の人達にとっては、日本酒はまだ深く浸透しておらず、自分たちの周りにある酒=日本酒であるという固定観念が出来ている部分も有ります。
そのせいか、飲食店、現地食料品店等での品揃えも、見た限りでは、日本でもメジャーなブランドのお酒が多く、あまりバラエティに富んだ品揃えの店は少ない様です。
現時点の印象を元にすると、現状では、ハワイにおいて純米吟醸、純米大吟醸をメインとしている旭酒造のような酒屋はちょっと厳しいかなと思います。市場に出回る(=人の目に触れる)事が少ない、本醸造クラスの酒に比べて値段が高く、気まぐれで試したりしにくい等の面が、デメリットとなるのは否めません。
ただ、ハワイでも一つうれしいことが有りました。ハワイ在住の日本人、日系人、アメリカ人の方々に、獺祭が非常に好評で、「今までのお酒とはまた全然違うタイプのおいしさだ」という言葉を何回か聞けたことです。こんな風に、ハワイに在住の方に飲んでもらうのをきっかけに、また、新たな層が、新たな日本酒の楽しみ方に目
覚めてくれるのでは・・・と、ちょっと期待しています。
それでは、今回の蔵ひよこ日誌はこの辺で。また次回!