最近、蔵で修行中の私の長男が「ひよこ日誌」ということでこの蔵元日記に時々書いています。これ、私からするとちょっと怖い話です。なぜなら、私が適当にごまかして都合よく話していることも(彼には何が都合が悪いかわかりませんから)暴露されてしまう危険があるからです。

困るようなしょうもないことがあること自体が問題ですから、そんな情けない恐れなどはおいといて・・・。だけど、反対に再確認することもあります。目標の酒を設定してそれに向けて手段を決定する旭酒造の酒の造り方に驚いていましたが(2005年6月9日号)、その驚く姿を見て私もそういえばと気がついたことがあります。

一般的に印象として、旭酒造は手造りの蔵とは思われていないようです。もっと機械的に造っているように思われているようです。遠心分離機の使用や四季醸造がその印象を助長するようです。ある方からは「あまり機械やデータに頼るのもいいけどもっと一生懸命手造りで造ったら」なんていわれたこともあります。

「わかってないなぁ、この人は。うち以上にどうやったらできるんだよ。」と憮然としながら聞いていたんですが(注)、なぜそんな感想をもたれるのかこのひよこ日誌を読んで意味がわかりました。

旭酒造は四季醸造で千二百石です。ということは通常の酒蔵で行われる寒造りの期間に当てはめれば、四分の一ですから普通なら三百石ということになります。この数量を造るのに、手伝いを入れれば現在8人のスタッフで当たっています。千石蔵でも通常は杜氏以下4人、追い回し(下働き)を入れて5人という編成ですから、桁外れに人員投入の多い造り方となっています。また一人一人の作業量もほかの蔵と比べて決して少ないものではありません。

にもかかわらず、機械的に造っていると思われることのあるのはここにあったんだと思います。つまり、旭酒造は結果から追っかけます。反対に言えば手法に固執しません。伝統的な手法が役に立たないと思えば平気で変更します。お客様に与えられた条件の中で最高のお酒を提供するのが蔵元の義務と思っています。手法を守ることが蔵元の義務とは思っていません。しかも、それを隠しません。そうしなければいけない理由を技術的に説明しようとします。

ここにあったんですね。お客様に誤解を招く原因が。だから最近は、そのあたりを踏まえてお客様にはお話しするようにしています。私は私で、案外何がわからないかわかっていないんですよね。女心に対しても暗いほうですが-(強くなりたい!!)-お客様の心に対しても暗いようです。困ったなぁ。

(注)このときは情緒が安定していたんでしょうか? 同じ類のことを言われたある飲食店さんには「獺祭が美味しいか美味しくないかは、私たちは成績評価と思っていますからお聞きしますけど、コンセプトまで触られたくはありません。それは私どもの仕事ですから。」と言っちゃったことがあります。酒屋さんに「意見の合う酒蔵さんの酒だけお取引されたらいかがですか。お気になるようでしたらお取引は止めさせていただいた方がいいようですけど。」と話したこともあります。言っちゃった後でつまらないことでカリカリしてと落ち込むんですけどね。

▼ お知らせ

前にご案内しておりました都市センターホテルで開催します「秋の獺祭の会」ですが、10月5日とご案内しておりましたが10月13日(木)に変更させてください。春の新酒の会と同じように獺祭の全種類を準備してお待ちしております。

日時; 10月13日 18:30~20:30

場所; 都市センターホテル(地下鉄永田町駅から3分・赤坂見附駅から5分)

会費; 3000円

ご希望の方は旭酒造にお名前とご連絡先を教えていただければ幸いです。