「山口の山奥の酒蔵」というキャッチフレーズの旭酒造の住所が「平成の大合併」により玖珂郡から岩国市になりました。「わしらもシティ・ボーイになったけぇねぇ」と周囲に自慢(?)していますが、実際に山奥の山村が繁華街になるわけでもなく、相変わらず猿の数のほうが人間より多そうな山奥です。

岩国市というと、最近、米軍基地の空母艦載機の移転問題で話題です。現市長は移転反対を訴えて圧倒的多数で当選しました。だけど、市長も市民も、この反対、どこまで本気なのかなぁと個人的には疑問に感じているところです。

たとえば、本当に現市長の反対を受け入れて国が本腰を入れてアメリカに交渉を始めたらどうします。結果として米軍基地そのものが移転してしまったら…。一転して存続運動を始めたりして。(成田みたいに。あれ、話は変わりますが、空港建設反対運動が通って羽田一本に東京国際空港がなっていたら、どんなに地方の人間にとっては便利だったでしょう。膨大な建設費も節約できたでしょうし)

もちろん、現在基地の近くで騒音の被害で苦しんでおられる方を無視したり揶揄しているわけではありません。騒音はあるよりは無いほうが良いのは自明の理です。しかし、そのような分かりやすい点だけをフォーカスされて、基地自体をどう位置づけるのかという根本の議論が無視されて耳障りのいい言葉だけが歩いていると考えるからです。

「防衛は国の専権事項である」という言い方があります。どこかで「どんなに自分たちが反対しても国は通すだろうから、安心して反対できる」という気持ちがあるんじゃないでしょうか。反対するからには当然その代価として不利益も甘んじて受ける覚悟が市民の側にもないと、実際に反対を押し通すことは出来ないと思いますが。

最近、横田めぐみさんのお母様が他国であるアメリカ合衆国の議会と大統領に直訴した事が明るいニュースとして取り上げられるたび、この国(つまり我々自身です)は自国の国民の生命をなんと思っているんだろうと暗澹としています。国民の安全そのものが自国が頼りにならず外国に頼らなければならない、それをマスコミも首相も吉報として捉えている。

こんな状況ですから、そちらの議論が先ではないでしょうか。

徹底した平和主義で自国で軍隊は持たず、もちろん他国の軍隊も駐留させず、他国と同盟関係も結ばず、それでも自国民の安全は確保される。と、言うような理想的な状況はありえないと思います。何かを捨てるか、何かを妥協するか。もちろん自国民に犠牲が出ても非武装平和主義で行くというのも、覚悟があれば「有」と思います。

同じことが酒の世界でもあるような気がします。昔どおりの手法を守って手作りで、米にもこだわって、もちろん購入相手のお百姓さんが真心を込めて良い米を作るのも当然として厳しいことも言わず、杜氏さんと蔵元も和気あいあいで、こんな何もかも理想的な状況で「安価」で「うまい」酒が出来ると思いますぅ? 出来ませんよねぇ。

自画自賛しますと、旭酒造に強みがあるとすれば、お客さんの「あぁ、美味しい」の一言を求めて酒を造るということとそれを出来るだけリーズナブルな価格で提供するために、他の要素を優先順位をつけて割り切って後回しにしていることと思います。(このため、たとえば、県内の農業関係者や特定の流通関係者や飲食店さんから「なんと心得ておる」と怒られたりするんですが)

政治の話はこんなメルマガの場合はタブーですが、あえて。