香港のここ数年の日本酒の伸びはすばらしいものがあり、私どもの獺祭もいろいろなお店で飲めるようになってきました。
残念ながら、良い日本酒を飲める店として香港の地酒黎明期から活躍したコーズウェイベイの居酒屋「加茂」が都合で閉店してしまいましたが、それに増して魅力的な店がどんどんできていました。と、いうことで香港最新獺祭事情ウォッチング。
まず、せっかくの香港ですから中華のお店で「胡同」(フートン)を紹介させてください。チムサッチョイの免税店のガレリアとエルメスのビルの前のビルの28階。海峡を挟んで香港島を一望に望めるビルですからすごいハーバービュウです。料理はアジアン・フュージョン。内装も19世紀頃のチャイナと現代をミックスさせたデザインで非常にお洒落です。
続いて、「やっぱり酒なら寿司よ」という方にお勧めはコーズウェイベイのそごうの隣のビルの「今村」 ここで「獺祭」をはじめて飲んでファンになったとメールを下さった日本企業の駐在員ご夫婦の方もいらっしゃいました。
このビルは獺祭偏差値(?)の高いビルで、入っている和食店では全て獺祭を取り扱ってもらっています。今村の下の階には「鮨天勺松島」という店もあって、私が行ったときはオーナーは帰国中でしたが、香港人の板前さんが見事なすしを握ってくれました。キャサリンさんというちょっとデカダンな香港マダム風の女性がいて、シャンパンを開けるみたいにエレガントにボスッという鈍い音とともに発泡にごり酒の栓をあけてくれて、なんか「ヘヘへ、洒落てますねぇ」と言う雰囲気でした。
次はすし屋じゃありませんが、割烹「はやし」を。ここが日本でなくて香港なのを忘れてしまいます。正統派日本料理の店です。このビルの三軒はまさに日本の和食店のグレードがそのまま保たれていて、納得できるお店です。
ここで少し趣を変えて居酒屋「和居和居」です。メインは串焼き。キムチ餃子にオニオントマト。まさに日本の居酒屋メニューそのまま。しかも、全て手作り。日本だとほとんどが冷凍だったりして飽きてくるんですが、その意味では日本よりもっと「らしい店」です。
ところでこの店のオーナーは下睫毛なしのピーター・オトゥオール(注1)そっくりのハンサムなトーマスさんというアメリカ人です。面白いのはビジネスとして居酒屋を成り立たそうとしてターゲットを選定して戦略を立て、それを遂行していること。実は彼は、以前、山口県に本社のあるリゾート企業に籍を置きその海外戦略をサポートしていた経歴の持ち主です。さも、ありなん。
店そのものは20席ちょっとと決して規模は大きくありませんが、そういう店にありがちな店主の変なこだわりの独善や反対に手抜きも無くて、お洒落かというとちょっとという事になりますが、男から見ればビジネスのつぼを外さずに作ってあって気持ちの良い店です。ただ、ご店主はほかにカラオケ店やカラオケソフトの卸もしているので遅くなるとそちらに回って店にはいないようです。
もう一つ気軽に日式焼肉を。「盛八」という店で、日式といってもそこは香港。豚の首のところの肉とか豚のタンとか面白いものが食べられます。内装もかっこいいです。きっと香港における日式の地位をあらわしているようですが、ちょっと洒落た赤坂の居酒屋みたい。
最後はちょっとゴージャスにマンダリン・オリエンタル・香港(注2)のレストランとバー。「アンバー」というレストランは昼の焼肉がおなかに残っていてアペタイザー二種類とチーズという変則の頼み方をしたんですが、美味しかった。ハラペーニョのソースをかけた生牡蠣を爽やかな酸味とこれもハラペーニョのピリッとした辛味の利いたコンソメシャーベット!!とともに食べるのは美味。その後をちょっと米の甘みもほのかに見える発泡にごり酒が追っかけて「うーん、満足」
もう一つのマグロのタルトも、なんと、メープルシロップ!!を塗ってぱりぱりに焼き上げた豚の皮とともに食べるというもので、店が言うように和テイテストであるとは思いませんでしたが美味。だけど、酒には合いませんでした。おそらくメープルシロップが邪魔したんですね。
以上の二つを獺祭発泡にごり酒50に合わせて、最後に山羊のチーズで獺祭磨き三割九分を飲みました。こちらは、ばっちり。チーズと日本酒という取り合わせに半信半疑だった香港のディストリビューターのNさん(超スタイル美人・でも残念ながらお仕事ですよ!!)も納得の美味しさ。
最後に、日本人ならまず作らないだろうなというほど天井の高いMOと言う名のホテル内のバーに移動してもう一度発泡にごり酒を飲みました。面白いのは先ほどのキャサリンさんにしてもこのマンダリンのサービススタッフにしてもシャンパンを開けるみたいににごり酒の栓を開けるんですね。それがまたつぼにはまってかっこいいんですよ。これも、ある意味、香港がたどってきた歴史がなせる業なのかなぁと面白く感じました。
ここで、流石に打ち止め。例によって、突如として思いついたように「それでは酔っ払ったから帰りましょう」ってあろうことかお取引先のNさんの意向も聞かず帰っちゃいました。ここでちゃんと相手のご意見も聞いて、二次会に行きましょうか?とか、どうするか決定するようなら良いんですが、これじゃ酒席の営業は出来ませんよね。
反省すれども 進歩せず 年取るのみ 獺祭蔵元主人
(注1)ご存知「アラビアのロレンス」役の英国人俳優。彼の下睫毛について、最近出版されたちょっとムフフなムービーガイド「BODY in the MOVIE」の中でちょっと危ない解釈が載っていて面白かったですよ。この本、この蔵元日記も時々のぞいていただいている小林はる代さんと「そんなに僕って怪しいですか」と警官に尋ねたら躊躇なく「ハイ」と言われた私だったらどっと落ち込む経験にもめげずマニアックな映画ファン道にまい進する高松啓二さんの共著で出されたちょっとお洒落なイラストの楽しい本です。講談社です。定価1500円。いけない、本題はずれてますね。
(注2)最近、国内でも日本橋の三越のとなりにも進出して、ハイアットやフォーシーズンなとど共に東京のホテル業界に激震を巻き起こしていますね。だけど、あんな一泊5万円以上の部屋、誰が泊まるんでしょうねぇ。
(文中の店です)
胡同 3428-8342 28/F 1Perking Road TST
寿司処 今村 9821-5100 16/F Continental Diamond Plaza No.523-527 Hennessy Road Causeway Bay
鮨 天勺 松島 2574-5777 15/F Continental Diamond Plaza No.523-527 Hennessy Road Causeway Bay
板前割烹 はやし 2187-3800 18/F Continental Diamond Plaza No.523-527 Hennessy Road Causeway Bay
和居和居 2591-9505 Shop A G/F Winner Commercial Bldg 401~403 Lockhart Road Wanchai
盛八 3106-0183 3/F Ying Kwong Mansion 2-6 Yee Wo St Causeway Bay
THE LANDMARK MANDARIN ORIENTAL 2132-0066 15 Queen’s Road Central The Landmark Central
(文中にはのっていませんが)
なだ万 2721-2111 64 Mody Road Kowroon
稲ぎく 2733-2933 69 Mody Road Kowroon
寿し 澄 2803-5558 G/F Elegance Court 2-4 Tsoi Tak St Happy Valley
オリエンタル酒バーYU-ZEN 2893-6126 21/F Circle Plaza 499 Hennessy Road Causeway Bay
穴 すし 2511-1110 5/F Kyoto Plaza 491-499 Lockhart Road Causeway Bay
寿司 翔太 9045-0860 8/F Kyoto Plaza 491-499 Lockhart Road Causeway Bay