皆様に大切なご報告があります。旭酒造は4月から価格改定を予定しています。流通在庫の関係で小売店頭ではそのとおりには行かないと思いますが、在庫が切り替わるにつれて新価格になると思います。大体3%から7%の値上げと思ってください。ちなみに獺祭50の1.8リットルは2500円から2700円(税抜きです)になります。新価格はこちらに
https://www.asahishuzo.ne.jp/product/

やはり大きな理由は原油高による瓶やダンボールなどの資材や燃料費の高騰などのコストアップが大きな理由になります。しかし、「だから値上げさせていただくしかない」とは言いたくありません。何とかこれらのコスト増は社内努力で吸収したいと努力してきました。これからもそのつもりです。

お陰さまで近年の業績の伸びは順調で、平成11年に700石弱だった出荷数量が今期予想では2000石を超える石高になりました。この伸びは当然スケールメリットによるコストダウン効果を生み出しています。これだけのお客様からのご支持を頂いているにもかかわらず、単に他国の勝手な思惑がらみの原油高に負けて値上げをお願いすればお客様の厚い支持を踏みつけにすることになります。

それなのに、なぜ? いまさら値上げ? 便乗値上げ? それとも幻の酒戦略を演出して最大プライスをとる戦略?

まず、バランスを保っているとはいえギリギリの原価状況にはなっていることが一つ。ゆで蛙の状態で本人は気がついていないけどこのままではどこかで破綻しそうになっているということです。

また、コストパフォーマンスという言葉が有ります。「品質に対しての価格」「お値打ちであるかどうか」という意味ですね。「獺祭はコストパフォーマンスに優れている」と言われてきました。品質にくらべりゃ安いということです。

だけどここに落とし穴もあります。コストパフォーマンスに優れていることが甘えになるということです。絶対的な品質を追求するのは辛いことです。出来れば現状維持にとどめ、楽をしたいのが人の心です。

採算は取れているが実際の原価状況は破綻寸前、でも現状は何とか売れている。この上リスクをとる必要はないじゃないか。これでは縮小均衡の罠に落ちていきそうです。それでなくても現状維持は甘い誘惑ですから。このまま行きますと、僅かなコスト増とより大きな品質向上の二者択一の選択肢に直面したとき、コスト増を嫌って品質向上の道でなく、このままの安穏に安住する道を選ぶという恐れがあります。

これは国内だけを市場としているときは良いですけど、現在のように海外の市場に出て行き、異なる文化の国に「獺祭」を広めていこうとするとき、こんな縮み志向で異文化市場の尊敬を勝ち得るとは思えません。結果として成功するとは思えません。また、まさしく日本的なものである日本酒が海外の市場で成功することは、「ジャパン」というブランドを確立することが国の重要課題となっている今の日本にとって大切なことと思います。ひいては日本のお客様にとってもプラスの面は大きいと思います。

そんな思いで決心した今回の価格改定です。ですから、今回の価格改定による収入増も、更なる品質向上に向けての原料コスト・設備コスト・そして何より大事な製造スタッフの育成強化などもろもろに向ける対策資金とするつもりです。

一年後に、皆様に、「獺祭はあの価格改定で値上げではなく本当は甘えの無い品質追求を選択した」と理解してもらえることを目指します。どうか皆様、「獺祭」の新しい挑戦を見守ってください。