6月のヨーロッパは素晴しい(イアン・フレミングも007サンダーボルト作戦の中で書いてますね。えっ?例によって古い?そうですね)その素晴しい6月のパリに行ってきました。
今回は、ヴァンドーム広場そばの高級食器店ベルナルド(1)でリーデルのグラスやベルナルド・オリジナルの酒杯(なんと!!ほんとに日本酒用の杯でした)と合わせて日本酒を楽しむ試飲会(パリ在住のSさんが走り回って開催にこぎつけてくれたんです)ほか合わせて三つのイベントをはさんで6泊7日の行程でした。もちろん、その間に獺祭の置いてある店を訪問してきました。今回はその報告を。
最初にまずアガペ(フレンチ)(2)なんとお任せの料理に合わせて獺祭50と、対抗として世界で二樽(250リットル)しかないというブティック・ワインの白を出してくれました。出される料理にどちらが合うか試して欲しいという楽しいテスト。面白かったのは、生の子牛のカルパッチョがこの店の名物ですがこちらにはワインが、ところがローストした子牛の肉にはなんと獺祭が合ったんです。ぱっと料理を見たときにはカルパッチョのほうが獺祭と合いそうだったんですが、不思議。
着いて二日目で、まだ時差ぼけ真っ最中のこちらはワインと獺祭の酔いとあいまってお約束のこれでもかの三皿目のデザートの手前で不覚にもダウン。料理も(デザートも)こちらはすごい量が出るのを忘れていました。
翌日の昼はメイジ(3)というフランス人経営の和食店でランチ。料理もグー。お酒は獺祭の磨き二割三分を、これも昼から二杯いただいてケッコー、ケッコー。
夜は最初の試飲会をシャンゼリゼ近くのオフィスでこなしました。
さて、翌日のランチが今回の最高の御推薦店ビガラード(フレンチ)(4)。ランチが9品で35ユーロ、ディナーが11品で50ユーロ、店内は白を基調にした内装にグリーンがアクセントになった明るいもので、おそらく料理に合わせているんだろうと思いますが野菜料理が売りです。
こう書くと、最近流行の軟派な店のように感じますが、どうしてどうして一皿一皿から気合がびんびん伝わってくるんです。こちらの人に言わせますと来年は「きっとミシュランの星は確実」だ、そうです。ここでは獺祭の50が飲めます。
何よりびっくりしたのは翌々日、日本の高級食材の専門店ISSEでここのシェフと鉢合わせしたことです。なんと彼の手には土佐酢といくつかの和風調味料が!!彼の店はバリバリフレンチですよ。決して和食は出しません。隠し味なんですね。前に同じくパリの三ツ星レストランの厨房で鰹節削り器を見たこともあります。こんな光景に出会うと、必ずパリにも日本酒を受け入れる余地があるとうれしくなります。と、同時に、何でこんなに日本酒だけ遅れたのか情けなくもなります。
その夜はSHU(5)という串揚げやさん。ここのオーナーシェフはエンという店で修行して独立した鵜飼修さんです。エンが美味しい店ですからね、ここももちろん二重丸です。二店とももちろん獺祭が楽しめます。お客さんは日本人とフランス人半々ぐらい。ちなみにここまでの店は9割フランス人客でした。
ちょっと残念だったのは日本人の若い娘さん達三人組が食事中だったんですが声のボリュームがでかい。何とかならんもんですかね?(こんなこと書くと意地悪爺さんみたい。でもほんとにうるさかったんですよ)
翌日はなんと!!あの五つ星ホテル、ヴァンドーム広場前のホテルリッツ(6)でお寿司と合わせて獺祭の二割三分。寿司シェフはこのためにわざわざ東京のリッツカールトンから出張してきた小久保秀人さんですから味は納得のもの。私なんかにゃ「うまい!」と言う言葉以外でませんでした。それでも小久保さんは、寿司飯に少し不満気味。
面白かったのはフランス人に合わせてエンターテイメントあふれる演出のあったことです。すし皿がテーブルに置かれると、やおらウエイターが鮫皮のおろし金を取り出し、わさびをすりおろして、寿司に振り掛けるんです。ブラックスーツで金髪のウエイターとおろし金がなんとも面白い対比でした。
夕方から日本文化会館で酒蔵10社による試飲会。北から自己紹介しますので、今回一番南の獺祭は最後になります。で、「先達」の自己紹介を聞いてると・・・・・どうも通訳の日本人女性のフランス語の発音は素晴しいんですが、なんと言っても彼女が余り日本酒を知らないみたいで、その上、聞いているのが更に分かってないフランス人達ですから、内容が伝わってない。
こりゃ、ストレートに行かないと駄目だと思い、「私どもは最高のものにしか興味はありません。ですから使う米も最高の酒米と言われる山田錦と言う品種しか使いません。純米で大吟醸しか造りません。最高の酒であることを目指します。きっと獺祭は世界一の美食の都パリで理解してもらえるものと思っています」と大見得を切ったら大受け。だと思うんですが・・・・・実は緊張してよく覚えとらんのですね。
で、翌日は例のベルナルドの試飲会をはさんで、昼は服飾工房街辺りにあるうさぎ(和食)(7)デザイナーが本業だと言うオーナーの趣味で統一されたおしゃれな店です。ここは日本からモデルさんや女優さんもよく来るそうです。モデルさんはぱっと見すぐ分かるけど女優さんは普段は地味にしてる人が多いからなかなか気がつかないそうです。そうかも知れんなぁ。
夜は京都が本店のギロギロ(創作和食)(8)ここも美味しいですよ。京都の店も有名ですもんね。「今度京都の店へも行ってくださいよ。僕から聞いたといって頂ければ大丈夫ですから」と、シェフにしっかり逆セールスされちゃいました。
と、まあ、こんな調子で7日間。でもよく飲んだなあ。パリの日本酒はまさに玉石混合で、どちらかと言うと石のほうが圧倒的に多い。ニューヨークみたいになるにはまだまだですけど、決して捨てたもんじゃない。夜明けの前が一番寒い。そんなパリの一週間でした。
ところで、本題から外れるんですが、街によって似合うネクタイって違うんですね。パリと言う街は15代前から大金持ちで家具や食器なんてものは買うものじゃなくてあれは歴史とともに我が家に有るもんだなんてのがゴロゴロ歩いてる訳ですから、こちらもテンション高めで行かないと負けちゃう。
で、この前買った蛍光ピンクのネクタイをしていったんです。これがパリの街にぴったり。東北の雄「刈穂」の伊藤女史にも褒めてもらいました。(彼女は、前職がシャネルでパリ本店勤務ですからね。センス良いんですよ。うーん、ちょっと自信持ったなぁ。アホッ!!!ええ加減にせんか!!!ですね)
ところが、この自慢のネクタイ、日本まで帰って翌日、所用があって神戸で途中下車したんです。司馬遼太郎曰く、日本で最も都会的な街、神戸。その神戸だと浮き上がってしまうんです。もっとシックな色柄でないと街に溶け込まないんですね。
「いやぁ、勉強になったなぁ」なんて・・・・・でも、どうせ・・・・・そんなこと気にせず・・・・・結局、着たい服しか着ないんですが・・・・・ちょうど酒を・・・・・造りたいと思う酒しか造らないように。
【店名と住所】
(1)ベルナルド Bernard 11,rue Royal75008 tel 01 47 42 82 66
(2)メイジ Meiji 24,rue Marbeuf75008 tel 01 45 62 30 14
(3)アガペ agap 51,rue Jouffroy d’Abbans tel 01 42 27 20 18
(4)ビガラード Bigarrade 106rue Nollet75017 tel 01 42 26 01 02
(5)修 shu 8,rue Suger 75006 tel 01 46 34 25 88
(6)リッツホテル Hotel Ritz 15,Place Vendome75001 tel 01 43 16 30 30
(7)うさぎ usagi 58,rue de Saintmonge75003 tel 01 48 87 28 85
(8)ギロギロ Guiloguilo 8,rue Garreau750018 tel 01 42 54 23 92