「あなたはここで再度セキュリティ・チェックを受けなければならない」と、場所はパリのシャルルドゴール空港、ニューヨーク行きアメリカン航空のエコノミー席入り口のすぐ傍、航空会社のフランス人職員(スーパーバイザーとかだそうでかなりの美人)に宣告され、何のトラブルも無しに機内に乗り込んでいく他の乗客を横目に二度目の厳重チェックを受ける私。
何でこんなことになったかと言いますと、ま、原因は私の英語力の問題と無配慮だったんですが、こんなことです。今回の出張の旅程は、成田・パリ・ニューヨーク・成田を8日間で回るというもので、そのままですと全て片道チケットですから目の玉の飛び出る様な値段。そこで、日本航空の世界一周チケットを購入し、さらにさらにこの一周チケットは10日間以上の旅行期間に限るという制限付ですからニューヨーク・成田は期日指定無しのオープンチケットにして先で使うことにし、別にこの間は全日空のバーゲンチケットを購入しそれで帰るという予定を組んだわけです。
つまり一枚目のJALのチケットだけを見る限り、私はニューヨークから、何時、日本に帰るか不明の人間だったわけです。
これがJALの提携エアーでパリ・ニューヨークの移動を受け持ったアメリカン航空のセキュリティ・チェックで引っかかったわけです。ところがこちらは別にニューヨーク・成田はANAのチケットを持っていますから、相手の懸念に気がつかなかったわけです。
セキュリティ・チェックの姉ちゃんが「お前はアメリカに何時まで滞在するのか?」「ツー・デイである」「どこに泊まるのか?」「会社のマンハッタンのアパートである」「それはどこか?」「ここである」「ビジネスカードは持っているか?」(名刺いーっ?変なこと言うなぁ)「ほら、これだ」(と、出したのは、あいにく英語版じゃなく日本語版)と、こんなやり取りがありまして・・・・・
でも、先方にしてみたら私の返答に何の根拠も無いんですから、立派な不審搭乗者です。しかしこちらは英語力の不足もあり先方の懸念が理解できないわけです。ただ、ただ、「うるさい姉ちゃんが何言ってんだ。日本人だぞ。どうせそのうち通すだろう」てなもんです。
あまりしつこく聞かれるのでこっちはますますこんがらがって、この際何でも「ノン」の一点張り。とうとう先方もさじを投げて、「お前は英語はできないのか?」「そうだ、日本語しかできない」「それでは少しここで待て。日本語のできる者を連れて来る」と、いう事で、ちょっと美人のもう少し地位の高そうなおばちゃんを連れてきました。(よくフランス人にいるでしょ。小柄で、美人だけどちょっと意地の悪そうな。)聞けばスーパーバイザーだそうです。だけど、このおばちゃんも美人だけど英語はできても日本語はだめ。ちょっと彼女が席を外した隙に先ほどのチェックの姉ちゃんに「あのおばちゃん、給料は高そうだけど役には立ってないぞ」と行ったらこんな悪口だけは万国共通で私のひどい英語(単語羅列、日本語混じり、文法無視、ただし身振り手振り表情付き)でも通じたようで、「そうだ、そうだ」とその姉ちゃんが盛大にうなづいたのはちょっと面白かった。
でも、どちらにしてもまったく原因を理解していないお気楽乗客ですから事態は悪化する一方。要は、そこでニューヨークからのANAのチケットを見せれば一件落着だったんですが。(ちなみに、ニューヨークに向かう機内でそのことに気づいた私はアメリカの入国審査では帰りのチケットを見せてスムーズに入国しました)
ということで、私はそれから搭乗までの二時間、このスーパー・バイザーとやらの美人のおばちゃんにべったりマークされて過ごしたわけです。もちろん、荷物は全てスーパー要セキュリティチェックの搭乗者の持ち物ですからパンツ一枚までチェックされて。そして、冒頭の最終機内入り口前での再チェックとなったわけです。
でも、何でこんな日程でパリ・ニューヨークに出張することになったかと言いますと、大事なイベントが大西洋をまたいで二日続きで続いたからです。10/27は前からアメリカの「獺祭」を扱ってくれているメイン卸が開く年に一度の大イベントであるニューヨークレストランショー。あのロッキー青木の紅花チェーンのグランドメニューにも「獺祭」を採用させて士気上がる先方から「今年は是非」と強い誘いも有り出席の予定のところへ、パリから大事な話が入ってきました。
それは在仏の日本商工会議所のメンバー対象に日本酒セミナーを開くので講師で出ないかという誘い。メンバーはフランスに支社をおく日本企業で、出席予定者はトヨタフランスの支社長などそうそうたるメンバー。これは少々の無理な予定は覚悟でも行かなくてはと決めた次第です。(ちなみに質問の最も厳しかった・核心に迫っていたのもこの支社長からでした)
とにかく、フランスは前にも書いたように食文化の中心といわれ、にも・にもかかわらず、そこにある我らの日本国の象徴たる在パリ日本大使館のある月のワイン購入金額が800万円以上、日本酒の購入金額がわずか数万円という、日本酒業界にとって、いや日本そのものにとっても、なんとも情けない現状の国ですから、ここでわが国の経済を代表する一流企業のトップを、いわば、オルグすることは非常に大事なことなんです。ここは日程少々無理でも男の子なら行かなくっちゃ。と、いうことで行ってまいりました。(現実は男の子じゃなく少々ガタのきたオジサンですけど)
で、冒頭のような恥ずかしい事態となったわけです。皆さん、これを他山の石として相手の立場に立って考えることって海外では重要ですよ。
あ、それは自分のことか。