あけましておめでとうございます

昨年一年、この長い長いメルマガにお付き合いいただきありがとうございます。今年もよろしくお付き合いのほどお願いします。

さて、昨年は旭酒造にとって新蔵の第一期工事の完成、山田錦の今酒造年度の購入計画量がついに一万俵を越す、兵庫山田錦特A産地加東市福田地区と村米契約の締結、などエポックメイキングな年でした。

出荷数量からみても4月に値上げさせていただいたにもかかわらず、翌月から前年以上の出荷数量を記録し秋口には品切れの心配をするぐらいの好調な出荷でした。本当にありがとうございます。

しかし、12月単月でとってみれば前月比で20ポイントも売り上げが急降下するなど厳しい年の瀬を迎えました。この第一の原因は海外輸出です。12月が77%に終わるなど壊滅的な数字でした。また、不況報道による節約ムードが響いたと思われますが、飲食店向けと見られる需要が12月になってばたっと止まったのが第二の原因です。

ただ、国内個人消費はマスコミの不況大合唱に相反して実際には好調だったようです。普通のお客様が手に取りやすい「磨き二割三分」「磨き三割九分」「純米大吟醸50」などの定番商品は軒並み130%以上の高い伸びを記録し、輸出などの数量減を救ってくれました。

これは、私どもが常に肝に銘じている「大きな声の小衆より小さな声の大衆・物言わぬ普通のお客様が旭酒造を支えてくれている」という事。そしてその普通のお客様は旭酒造にことさら新規な技法も米も求めないが、良い米を高度に磨いて使った純米大吟醸、つまり「獺祭らしい獺祭」を求めており、獺祭がそれに応えようとしていることが理解されている証左だと思います。

実はこの普通のお客様の要求基準は厳しく、世界の酒を同じテーブルに載せた上で、その中で選ぶ価値のある酒を求めています。普通のお客様は専門家や業界関係者のようにことさら技法や酒質など分析はしませんし、知識もありません。しかし、しないということとお客様が酒の良し悪しを「分かっている」か「分かっていない」かということは別です。このお客様達こそ本当の酒を知っていると思います。

私どもも、この新しい一年、獺祭へのお客様の高い支持を壊さない更なる高品質の酒造りの追求と挑戦を通してこの高い支持を将来に大事につなげてゆきたいと思います。

今年も従来の約二倍規模の新冷蔵倉庫の着手と完成、夏には新蔵の第二期工事の着工と大きな設備投資計画を抱えております。これも更なる品質の安定を目指すための手段です。(一部に吹聴してまいりました「還暦祝いの赤いアルファロメオ」は、この投資に対する資金繰り計算によると・・・・・例によって個人の金まで突っ込みますから当然のごとく・・・・・個人の懐は資金不足で、新車のはずが7年落ち以上の格安中古に格下げの予定です)

また、製造技術面の課題も浮き彫りになりました。ある方に要塞のような蔵と称されたこともありますが、ハードで解決できるものはハードで解決し出来る限り理想的な製造条件を整える、山田錦だけ使った純米大吟醸しか造らない、同じものしか造らない、というのが旭酒造のやり方です。これは製造の技術練磨の深さとその深みへの到達スピードの速さを結果として導き出しました。

しかし、個別対応力の弱さも反面生み出しました。米の品質差や諸条件の差が上槽後の大きな酒質でのブレになり、この酒造期ではすでに5本以上7000リットル分の仕込を「磨き二割三分」の品質基準に達していないという理由でブレンド用に落とさざるをえませんでした。こんな良い米を使ってのこの結果に対しては申し訳ないという気持ちで一杯です。

この製造における個別対応力そして集中力は今年の大きな課題になっています。あまり他社では顕在化しない問題ですが、越えるべき大きな課題です。弊社の製造体系の性質上から生まれて来た問題であり杜氏も私も製造技術上の問題にとどまらず個人としての資質を問われる大きな壁ですが乗り越えなければ明日は無いと思っています。

今年もお客様を信じ、私達の育ってきた日本の社会と文化を信じ、更なる高い課題と目標に向けて努力したいと思います。改めまして今年もよろしくお願いします。

2009年1月1日
旭酒造株式会社
代表取締役 櫻井博志