去る5/9に京都ブライトンホテルで開催させていただいた「京都獺祭の会」330名を超す皆様にお出でいただきました。京都で、一社で開催した酒の会では最大人員だそうです。かくも、たくさんの皆様にお出でいただきまして本当に感謝しております。
翌日、うちの社員達がタクシーの運転手さんから「お客さんたちは山口の酒屋関係ですか」と聞かれたそうです。何故?と聞くと、前日、その運転手さんは獺祭の会に来られたお客様を四組ほど乗せたそうで、そのお客様達が車内でも酒の話と獺祭の会の話で盛り上がっていたので印象に残ったそうです。
とにかく、忙しいタクシーの運転手さんが翌日になってもお客様の会話を覚えているほどの盛り上がりだったわけですから、お客様には大変喜んでいただいて、ただただ主催者にとって感激の会だったと思います。お出でいただいた皆様、またここまで支えてきていただいた皆様ありがとうございます。
例によって、みんなから長いと言われる私の当日の会でのご挨拶ですが、こんな話をしました。要約しますと以下のようです。
1)京都という町は私どもにとって非常に大事な都市であること。それは、東京の和食店でミシュランの三つ星が10店なら京都は50店取れると東京の調理人自身が言うほど食のレベルが高く日本の食文化の中心であるという理由から。
2)京都には海外からのお客様も多く、海外の輸出比率が一割を超える獺祭からみて最重要拠点であること。
反対に飲食店から見ても、外国人観光客に対し日本酒の品揃えが本当に大事なこと。たとえば、私たちがイタリアに旅行してレストランに入っ たとき、やはりイタリアのワインを飲みたい。これは外国人観光客にとっても同様であるはず。ですから、日本の和食店に入って、どんなにワインの品揃えがフランス本国と遜色ないほど揃っていても、彼らから見たとき、それはしょせん亜流にすぎないこと。
京都の飲食店にとって、美味しい日本酒を外国のお客様にご紹介するこ とは、京都の飲食店自身にとっても、是非やってもらいたいこと。これ は日本をブランド化するという点でも大事な問題であること。(注)
そして、その時選ばれる美味しいと評価される酒になることに対し、全てをかける意志があり、全てをかけて努力を旭酒造はしていること。
そんな話をしました。でも、最も受けたのは、別の話でした。 それは、最後に話した蛤御門の話。
「あの方向に蛤御門があります」という振りですでに勘の良い人は気がつかれて・・・。「百数十年前に、わが長州藩は薩摩と会津の連合軍に散々にやられ、久坂玄瑞など優秀な人材の多くを亡くしました。ですから、この蛤御門に程近い京都ブライトンホテルで第一回の京都獺祭の会を開催するのは山口の酒蔵である旭酒造にとって感慨深いものなのです」と言いましたら本当に大受け。
でも、実を言いますと・・・・・、本音だったんです。
「長州のお人は真面目やから、怖いわぁ」と揶揄される田舎もんの山口県人である私は洒落狙いじゃなくて、本気でそのまんま話したんですが ・・・・・。でも、さすが1200年の歴史を誇る京都人。 きれいにユーモアに納めて、話した方もさすがと納得。
さらに、びっくりしたのは、参加しておられた祇園でお茶屋をされているという女性から「久坂玄瑞はんはうちとこへ逃げてこられて、かくまったんどす。その時の刀傷も柱に残ってますんですよ」と、後でお話が。100年を平気で超す時間スパンで話がはずむ京都。やっぱり面白い。 来年も、新緑のこの時期に開催するつもりです。お時間のある方はぜひ。
(注)後の社内反省会で会場の声を聞いてみると、やはり「でも、うちの客はワインしか飲まないから」と言っていた超有名星付き和食店の関係者がいたそうです。こんなお店があるからこそ、この会を開いた意義 があるというものです。
何とかして、こういう店に日本酒を理解してもらいたい。日本酒がわかんなくてワインの品揃えだけ良い和食店なんて国際的にみれば変じゃないですか。旭酒造のやろうとしていることは間違いじゃないと再確認したところです。
【思わぬところで獺祭が】
東京の新酒の会で乾杯の音頭を取ってもらった勝谷誠彦さんのメルマガ「勝谷誠彦の××な日」を読んでいましたら、安倍前総理と会食した話が 載っていました。勝谷さんと言えば、安倍前政権時代、身贔屓の山口県人の私としては、 ちょっと辛いぐらいの政権批判の急先鋒として鳴らした方です。「いかなることになるのやら」と読み進めますと、なんと「獺祭」登場。 会場は六本木の居酒屋だったそうですが、そこへ安倍前総理が獺祭磨き二割三分を持ち込んでいたとのこと。
思わず勝谷さんは「この酒は山口県岩国市周東町獺越の桜井の造った酒ですね」と話したそうです。獺祭を持ち込んだ安倍さんもびっくり。 この「獺祭」のおかげで座の雰囲気が一気に和んだようです。
で、ひとしきり私どもだけでなく全国の酒蔵の話がはずんで、地方の酒蔵の現状・大手メーカーと中央利権の関係などの話から、基地問題の矛盾から日米安保と話題は尽きなかったようです。
勝谷さんも政権時代の批判は批判として伝えたようですが、と同時に「利権とは縁のない正しい保守の旗を掲げ、他国に対して日本国の誇りをきちんと主張できる人々が、いつの日か集まることが出来ればと私は 願う。安倍さんは確かにその核のひとつになる方であるとは思った夜だった」と再確認。両者と関わりのある私としては、ちょっと、ホッ。
勝谷さんはその翌日配信のメルマガ(三人で一升空けたそうです)で書いています。「日本酒道にまい進してきてよかった」 実は私もそれを読んで、思わず、「酒屋道にまい進してきてよかった」と勝谷さんにメ ールしました。
でも、こんな場面の舞台回しの道具に「獺祭」がお役に立って幸せです。