◆蔵元の読書◆
「業界のセオリー」という本を読みました。副題が「ビジネス界に脈々と伝わる先人の知恵」、帯封に「困った時は基本に従え」とあります。第一章の見開きに掲載されているセオリーが「売れる商品には適量がある」で、コカコーラもカルビーも製品の容量を適量に縮めて売り上げを倍増したそうです。
ところがこれに逆行するのが我が日本酒業界の大手メーカー。増量パックや増量カップのオンパレード。これ、おそらく、メーカー側に聞けば、増量でなければならない理由を「お客様の要望」とか、数限りなく説明してくれるんでしょうけど。大手のスケールメリットを生かしたこの増量攻勢は、弱肉強食の世界ですから、仕方ないと言えば仕方ないんですが・・・・・それで売れない・売れないと自分達が頭を抱えてるんですから・・・・・どうしようもないですね。
致酔飲料としての側面を持つ日本酒は、短期的な売り上げに背を向けても、量より質に、お客様の本質的幸せがあると思うんですがね。わかんないんだろうなぁ。
◆イベント◆
日本酒のイベントが各地で開催されています。これはというイベントも多いですが、主催者の勝手な思い入れだけが暴走したイベントも多くて、ちょっと、日本酒振興のイベントが多すぎ。イベントに出席するのが忙しくて「蔵元は日本酒を造る暇も売る暇もないんじゃないか」と思えるぐらい。
ついでに、集客する暇もないのか、毎回どのイベントもお客様の顔ぶれは一緒。主催者は変わっても、さらに蔵元も出る蔵元はほとんど一緒ですから、特定の蔵元と特定のお客様の懇親はますます深まります。
お客様と懇親が深まることは悪い事じゃないけど・・・・・最近の蔵元を見てると、これだけで満足してるみたい。これで良いんだろうか。青年よ荒野を目指せ。
◆イベントその二(酒造組合編)◆
「日本酒の振興のためにみんなで足並みをそろえて」とか目標は立派なイベントですが、参加予定とか出品予定の返事の返答期限が、たいてい報せの翌日。しかもFAXは事務局が一台を兼用しているので、こちらが流す返答は「送信しましたが電話中でした」のFAX表示で送信不能。やる気があるんですかね??
◆イベントその三◆
最近多いのは酒屋さんとか飲食店さん主宰の会。「需要不振にあえいでいる日本酒に目を向けてもらわなければならない」と立派なんですが、聞いてみると弊社の「獺祭」の品揃えなし。これでお客様が「獺祭が良いねぇ」と・・・もしも、もしもですよ・・・言ってくれても主催者の店や地域では飲めない・買えない。
これで、「日本酒の振興のために獺祭も参加しろ」と言われてもねぇ。出張旅費も参加費もかかるし、その費用は、結局お客様から頂いた利益の中から捻出するんですが。これで、良いんだろうか。
◆日本酒で乾杯◆
酒造組合の提唱する「日本酒で乾杯」日本酒の振興のために酒造組合が進めている運動。ビールで乾杯するんじゃなしに日本人だから日本酒で乾杯してほしいという趣旨。
しかし、大体出てくる酒は酒造組合の「みんな平等」の論理で選ばれるから、選考基準は美味しさとは無縁。ついでにホテルや宴会場などの会場側も提供温度も品質もどうでもいい扱い。個人的な経験範囲で言うと、最初の一杯に期待される華やかさとか爽やかさとは無縁な酒ばかり。これで、日本酒嫌いになる人多し。
◆ワインの好きな蔵元◆
日頃、日本酒に浸ってるからか、「私生活ではワイン」という蔵元・・どうも個人的には日本酒よりワインの方が好きみたい。困ったねぇ。「和食は日本の文化」と言いながら、日本酒よりワインの好きな和食の調理人の批判はできないなぁ。
◆恥ずかしいけど社内編(新しい革袋になっても中の酒は・・・・・)◆
新装の酒蔵三階の釜場。機器の移転も完了して見に行ったら、悶絶の光景。前の釜場にあったガラクタまでみんな後生大事に移転している。一つ一つ手にとって嫌味たらしく追及すると、もしかすると今後30年間に一度使う機会があるかもしれないもの・壊れていて絶対使えないもの、いっぱいあって・・・・・
全部処分させたら釜場の広さが印象として1.5倍になりました。
「君は博物館の館長か」
◆(酒蔵の道具)◆
新装の250平方メートルを誇る麹室に導入した、これも新開発の「床台」10台。杉板張りの床台の下にロードセル(電子重量計)がついていて自動的に麹の水分を計る機能の付いた、これも自慢の床台。(当社新開発!!)(ちょっと高かったんですよ。ポルシェが充分に買えるぐらい)
キャスターがついて移動できるようになってるんですが、見るとコロの下に鉄板が。担当者に聞くと、新築の床に跡がついたらいけないんで業者が敷いたとの返事。
そんな鉄板なんかあった日にゃ、その鉄板に規定されて床台を移動しなくなる。鉄板の下に雑菌がたまって麹をおかしくする。この酒蔵は「獺祭」を造るために建てたんで、財産として後生大事に守るために建てたんじゃないから、そんな鉄板はすぐ撤去しろと命令。ついでに、「もしそれで床に跡がついたら業者にクレームをつけろ」とも。
業者から見たら「意地が悪い発注主」なんでしょうかねぇ。
◆最後に個人的話題◆
お盆休み中、夏風邪をひいてお腹に来て、15分に一回トイレが恋人でした。お陰で、たった一日で2kg、二日で3kgやせました。三カ月に一回、かかりつけの先生のもとに通って、血糖値を測り、その時体重計に乗って一喜一憂している自分としてはちょっとワクワク。(看護婦さんがシニカルで面白いんですよ。ちょっと増えたら「体重増えましたねぇ」なんてにんまり。ある日のこと、「今日は最近話題のやせるパンツを穿いてるから」と、そろそろ自分も中年体形が気になり始めた先生に自慢する私に対し・・・「でも、そのパンツはいくら穿いても、穿いて歩かなきゃ、効果ないんですよ。穿いて歩かなきゃ」としらっと発言。先生と患者はがっくり)
で、体重に話を戻しますと、確かに体重は落ちたんですが、風呂場の鏡に自分の姿を映してみると、3kgぶん肩回りなどがげっそり落ちて、しかし腹回りにはしっかり贅肉の残った姿が。
とにかく、へそ回りの贅肉なんて、どうやら、私に、終生の忠誠を誓ってくれているようです。うーん、うれしくない。