先日、中小企業庁からグッドカンパニー大賞を受賞したことのお知らせがありました。これは、全国の優れた中小企業の発掘を目的に昭和42年から開始されたもので、最初の受賞は現在日航の会長で苦労されている稲盛さんの率いる京セラ。

中国地区で言えば、その後、熊平金庫やカルビー製菓、タカキベーカリーやモルテンなど、山口県内では長府製作所が受賞しています。綺羅星のごとく凄い企業が受賞社リストに名を連ねています。

受賞したことが発表された後、目ざとい方からお祝いの御手紙やお電話をいただき、改めて、その反響の大きさに驚いています。

この春には、ノミネートされているという話が入っていたのですが、受賞できないのではと思っておりました。

なぜかといいますと、たとえば、企業の理念や目的とか社会的意義等だけでなく内部の経営状態まで調べます。そうすると、「決算書も見せてください」とか「この中のこの数字はどういうことを意味するんですか」とか、結構詳しくヒアリング調査があります。

すると、そのヒアリングに対し、「賞をもらうために酒蔵をやってるんじゃありませんから、そんな質問、この忙しいのに、答えてられません」なんて社内の担当者がやってるんですね。

普通、この賞をいただくことは非常に名誉なことですから、こんな対応をする会社なんてないと思います。「こりゃ、だめだわ」と思っていました。

でも、私もその言い返す気持ちはよくわかるんです。

どういうことかといいますと、すでにお客様から「大きな大きな大賞」をいただいているといつも考えているからです。

酒造業界は昭和48年をピークに全国の日本酒の出荷数量が三分の一になるほど落ち込んでいます。まさに、大逆風にさらされている業界です。

そんな中で、昭和54年に会社を引き継がせていただいて以来、数量では6倍、金額では13倍になりました。こんな、大きなご支持をお客様からいただいている酒蔵がほかにあるでしょうか?

まさに、毎日が私どもにとっては感激の連続なんです。いわば、この20数年、毎年、大きな大きなグッドカンパニー大賞をお客様からいただきながらここまで来たと思っています。

だから国がくれる賞は大した事ないと思ってるわけではありませんが、このお客様が毎年毎年くださる「大きな大きな大賞」にお応えすべく、少しでも良いお酒をお客様にお届けすることにすべてをかけているんです。だから、ついヒアリング調査の先生方への対応がつっけんどんな対応になったりするんです。

私どもにとってすべては、お客様の「あぁ、美味しい」の一言にかかっているんです。この一言をいただくために酒蔵の全ての業務はつくり上げられています。これこそ私どもからお客様へお返しできるたったひとつのご恩返し。

この気持ちはこれからも変わりません。

岩国駅から一時間に一本、もしかすると二時間に一本しか走らない岩徳線に乗ること40分、やっと着いた周防高森の駅からさらに車で山中に入ること約15分。中国山地にある山村のの例にもれず猛烈な過疎にあえぐ山間の小さな集落にへばりつく様に長い歴史を過ごしてきた小さな小さな酒蔵。「山口の山奥の小さな酒蔵」が酒造りに夢をかけて創る「獺祭」

いつまでも「お客さまに少しでも良い酒を」と努力しようと考えています。
これからもよろしくお願いします。