もう御存じの方も多いと思いますが、今年の酒米はよくありません。残念ながら、これは、山田錦も例外ではありません。(その栽培の難しさとは反対に、異常気象などには山田錦の品種的特徴として強いと経験的に思っていたんですが・・・今回はさすがに、山田錦をもってしても、無理のようです)
例年通り10月半ば以降に収穫期を迎え、精米とその後の枯らし期間を終え、実際に12月後半から使い始めるにつれ、そのあたりがハッキリしてきました。
すでに、10月に精米が始まった時点で、異常に多い未熟米などの関係で、精米後の仕上がりの粒の大きさがバラバラになる傾向があることは分かっていました。
対策として、39%と50%の精米に関しては2%づつ、より「搗き込め」と指示しました。つまり、「磨き三割九分」は37%に、「磨き50」は48%に実際はなるわけです。(2%ほどラベルの精米歩合表示と実際がずれます。より磨くわけですから、ご容赦を)(また、23%精米に関しては、簡単に言いますと、あそこまで搗き込んでいますと、粒が揃うも揃わないも、それまでの時点でおかしな米はみな落ちてしまいます。したがって、もうこれ以上の対策は無意味に近いと言えます)
その上で、麹室の作業が過重になるのを覚悟の上で洗米時の目標吸水歩合を高く設定して蒸米の水分の均一化を図っています。(麹室担当者を一人増やして現在は何と麹だけで6人体制!!!です)
ところが、この程度で対策OKとならないのが、今年の米の難しさです。でんぷんの消化性が非常に悪い。つまり、もろみで溶け難いという事です。もろみで溶けないという事は悪いものも溶けだしませんが、酵母に必要な栄養が回らないわけですから、魅力も少ない酒になりがち。つまり、清く正しいけど、他に何もない、悪いこともしなかったけど恋も仕事もしなかった、失敗も成功もしなかった人生みたいな酒になりそう。
しかも、悪い事に、山田錦しか使わない私どもの酒蔵では、溶けやすい軟質米の山田錦を使って純米大吟醸を造る事のみを前提として技術が成り立っています。これが安い米から好適米までいろんな米を使う、純米酒も造ればアルコールを添加した酒も造る、普通の酒蔵ですと、溶け難い米も溶け易い米もいろんな米があり、品質を無視して無理やり溶かしてしまう酒もあるでしょうから反対にここまで面喰わないと思います。
つまり、最高の米しか選抜してこなかった、純米大吟醸しか造ってこなかった、が、故の弱点、いわば、純粋培養のひ弱さのようなものがあるかもしれません。
まァ、そんな、泣き言を言っててもしょうがありませんから・・・・・こんな年こそ力の見せ所と思っております。なにより、こんな年の米を使いきることができなければプロじゃない。
「酒が出来てる」んじゃ無しに「酒を造ってる」と言えるように頑張ります。
造りの連中は泣いておりますが、きっと平均年齢31歳の純粋培養のお坊ちゃん達にしかできない底力を見せてくれると思います。今年の新酒の仕上がりをぜひご期待ください。