弊社ホームページ「昨日の獺祭」で御紹介していますように、ユダヤの教えに照らして真っ当な食品であるという資格基準のコーシャ―・ライセンスを取得いたしました。
(昨日の獺祭ページ http://www.asahishuzo.ne.jp/info/report/)
当初は簡単な認定かと思っておりましたが、結構大変で審査を経てライセンスを取得するまで三年かかりました。と、いう事は審査を受けてみたけど取得できなかった食品関係の会社も沢山あるわけで、そういうところから「大金を積まなきゃとれない」とかマイナス情報もいろいろ出ているようです。
まあ、旭酒造でとれるわけですから、そのあたりはあり得ませんが。
認定への大きな力となったのは、「旭酒造が純米大吟醸しか造らないこと」でした。彼らはどこで造ったか、また、最終的に製法のはっきりしない工業生産的手法で精製されたアルコールを酒に添加する、いわゆる日本酒全生産量の8割以上を占める「アル添酒」を認めませんから。
その上、アル添酒が製造された容器・配管も純米酒に混入するとして、同一容器・同一配管の使用は認めません。
以上の事から、ほとんどの日本の酒造メーカーは別にコーシャ―認定用の別蔵を建てでもしない限り不可能なわけです。(その意味では大金を積まなきゃとれないという話は正しい)
最後に、ニューヨークでのコーシャー・ライセンス取得お披露目パーティでの私の挨拶の原稿を紹介します。
(以下原稿です)
旭酒造の桜井と申します。
本日はお忙しい中、この「獺祭コーシャー認定お披露目の会」にお出でいただきまして、誠にありがとうございます。
まず、皆様に是非、報告しなくてはならないのは、このコーシャーの認定をとるにあたり、旭酒造は酒造りにおいて特別な細工も一切の変更もしていないし、認定のために特殊な一部の酒を選ぶという事もしていない、「当たり前の獺祭を全部そのまま見て頂いた」という事です。
日本酒というものは日本に固有のもので、決して、ユダヤの教えを意識して造られているものではありません。しかし、その日本固有の酒がそのままの姿で、ラビに審査して頂いてコーシャ―の認定をいただきました。
実は私どもの獺祭がコーシャ―の認定を頂く上で大きなファクターとなったのは、私どもが純米という日本酒においては伝統的な製法しか採用していない事だったと聞いております。
伝統的な技法で正直に造られた酒は、民族の壁も乗り越え、グローバルな力を持つと実感した次第です。
最後に、もう一つご報告があります。
このパーティを開く上に当たって、ラビとも密接な連絡をとる必要がありました。しかし、なかなか連絡が取れない事が多々ありました。
実は、ラビは3/11の東日本大震災以降、連日のように被災地入りをして、被災者救援の活動をしていたのです。
このラビの尊い活動に対し、日本人として心から感謝を述べたいと思います。ありがとうございます。
それでは皆様、御ゆるりと獺祭をお楽しみください。
(挨拶原稿は以上です)
以上のようなご挨拶をさせていただきました。(もちろん、英語のできない私は通訳付き)
でも、本当に感動したのはラビのエデリーさん。深夜11時に出発して翌朝3時過ぎに被災地に到着、車内でちょっと仮眠した後5時から支援物資を配り、とんぼ返りで東京に帰り、次の支援物資の段取りをして、またその日の深夜11時に出発。
こんな活動をそれまでに25回以上繰り返したそうです。
こんな人とコーシャ―というきっかけを通してお知り合いになれたことは人生って捨てたもんじゃないなと思える出来事です。