残暑お見舞い申し上げます。さて、旭酒造はみなさんもよく御存じのように、山田錦を使った純米大吟醸しか造りません。その中で一番商品リストの中でボトムゾーンに座るのが獺祭純米大吟醸50という商品です。その50の1.8リットル入りに異変が起きています。

「社長、獺祭の純米大吟醸50の1.8がすごい売れ行きです。ここ三ヶ月だと、月1万8千本ペースです」と嬉しそうで若干困惑気味な業務担当の川崎君。確かに出荷数量を見てみると「磨き二割三分」や「磨き三割九分」と比べて10%以上の差が出荷の伸び率にあります。

月1万8千本ペースというのは、現在は夏で非需要期という事を考えれば、年間30万本ぐらいに上るペースです。これだけで3千石という事ですから、ちょっとした中堅酒蔵一社分程度。本当にありがたい事で感謝しています。

以前は、獺祭は一般のお客様の個人需要に強く、飲食店にはどちらかというと弱いというか、まだまだ理解されていない、と感じていたんですが、最近、飲食店で見る事が増えてきました。そのあたりが50の1.8の大躍進の秘密と思います。

と、いう事で、、、満足していれば良いんですけど、、、、、分をわきまえないのが旭酒造の性(サガ)でして。

一般的には下位商品があまり品質的に優れていると上の商品は品質差がつけにくいという事で辛いわけです。ですから、グレードによって品質差をつける為には上位商品は品質を追いかけて製造し、下位商品の製造はコストダウン方向に振ると言った事が必要になります。

しかし、いつも言ってる事ですが、そんな小手先の技術で獺祭を造っているわけではありませんから、というよりもうちの製造はそんなに小器用じゃありませんから、磨き二割三分と同様「全力疾走」で造っています。と、いう事は、差は極端にいえば精米歩合だけですから、それでどれだけの差がつくかという事です。

結論からいえば、はっきり差があります。

この辺りは、教条的に安いランクの酒が好きな方が決まったように言う「獺祭は50が一番うまい」論は置いておきまして(それなら試飲会なんかで、なんであんなに高い順から飲むんだろう?)、はっきりした差が付いている事は御存じのとおりです。

と、いうより「磨き二割三分」にははっきりと四番バッターの風格がありますし、「三割九分」にはこれも三番バッターのような豊饒さと迫力があります。是非、こちらも楽しんで頂ければと思います。

親しい人なんかによく話す酒造りに関する感想があります。「やっぱり金かけなきゃだめ」というものです。「お金をかけずに良いモノができる」なんて無いんですねぇ。もっとも、「お金はかけたけど良くないモノ」も世の中には沢山あるんですが、、、でも、まずお金をかけなければスタートラインにも立てないというのがこの世の現実ですね。つまり、精米しなきゃだめってことです。これが無けりゃ、酒蔵も儲かるんですが…

◆「磨き三割九分」はYK37◆

「三割九分」が話に上りましたので、もうひとつ。昨年の山田錦が暑かった夏の障害であまり良くなかったため、麹米を「三割九分用の37%精白米」(!)にしている事は御存じの方が多いと思います。

と、いう事は、今の「三割九分」に使われている米は39%精白ではなくオール37%精白だという事です。「三割九分」も昨年の米で品質を守るため、表示よりさらに2%ほど搗き込んでいるわけです。

九月になると、摂氏5度の部屋で真夏に仕込んだ、「夏仕込み・磨き三割九分」(注)も出始めます。是非、お楽しみください。

(注)「夏仕込み・磨き三割九分」について; 

年間、摂氏5度に保たれた蔵で四季醸造をおこなっている酒蔵として、秋になると色々な酒蔵が一斉に販売し始める「冷やおろし」という商品が無いのは辛いところでした。

ただ「冷やおろし」自体は企画商品としては面白さがあるんですが、言葉の解釈からすれば品質上はただの夏を超えて貯蔵した酒を「生詰めした」という意味ですから、(中には熱殺菌詰めをしている酒もあるようです)、意味をあまり感じていません。

その意味で、旭酒造の「与えられた条件」の中で、お客様に「少しでも美味しい酒」を提供するという意味で、わざと商業的には抵抗のある「夏に仕込んだ酒」を販売しています。しつこいですが自信あり。

<商品案内>

獺祭 純米大吟醸 磨き三割九分 夏仕込しぼりたて生 1800ml 5,250円/720ml 2,625円 9月上旬より蔵元出荷始めます。