先日の日曜日12月19日の19:00から放映されたフジテレビの「ほこ×たて」に出演しました。日曜日のゴールデンタイムですからご覧になった方も多いのではと思います。

見てない方のために、ざっと説明しますと、どんな水も美味しい水に替えてしまうという三菱レーヨンの最新鋭のろ過浄水器と、どんな水も利き当てるという酒職人(私)が「天然水」四つと「ろ過水」一つの中から「ろ過水」を当てるという「利き水」勝負です。対決そのものは豊橋の三菱レーヨンの工場(なんと敷地総面積37万平米!!)で行われまして、いえばアウェイに単身乗り込んでの収録になったわけです。

私自身の番組を見た放映後の感想を言えば、「えらいかっこよく映っていたなぁ」というものです。大体、本来はあんなにかっこいいわけ無いんですが、オロオロしたりするところはカットしてありますから、自信たっぷりの蔵元に見えます。まあ、この辺りは、テレビ的には片方の挑戦者が自信なさそうでは絵になりませんから、御愛嬌という事で。

でも、ほんとに、山口の酒蔵で3日、一週間おいて豊橋の三菱レーヨンの工場内会場で1日の撮影収録期間中、夜は眠れませんで・・・社内からは、「負けたらどうするんですか」なんて声も聞こえますし・・・「いやぁ、ヤバいのに出ちゃったなぁ」なんてのが本音でした。天才料理人といわれ、私も尊敬する知り合いからは「エーっ、君あれに出たの? 僕にも、○○と○○を見極められるかというのが来たけど断ったよ。自信はあるけどね」と呆れられるし。

でも、本番の対決は不思議と緊張も何もなくて集中していました。結果はご覧になったとおりで、天然水とろ過水の間にほとんど有意差はなかったんですが、僅かにろ過水の香りにザラツキ感が見えて当てることができて、ホッ。(おそらくきれいにとれすぎていることにより反対に原水の弱点が見えた。それと後の四点の自然水が素晴らしい水だった)

ところで、弊社のホームページも放映中から一時ダウン。いろんな方が見てくれたんでしょうね。グーグルの検索ワードでも獺祭が8位に上がっていたそうです(一時的に2位に上がったという情報も?)。ツィッターの担当者に言わすとネット上の反響もすごかったそうです。

放映後、いろいろな方から感想をいただきました。酒類コンサルタントの小島先生の奥様によると「あの人がいつもうちの主人と遅くまで飲み歩いている蔵元とは信じられない!?」と日頃の悪行を思い知らされるような感想をいただいたり・・・。

でも、出て良かった事を言えば、「デジタルだけでない世界を見せられたこと」。酒造りにはまだまだ理論で解析しきれない未知の分野があることを忘れてはいけない、だからと言って未知のままあきらめるのではなく、この世界に挑戦する事、神業の世界に挑戦するところにこそ私たちの使命がある、旭酒造の酒造りにおいて常に肝に銘じている事、酒造りにおいて一般受けする「杜氏の勘や経験」をことさら言い募らず、数値に落とせる事は全て数値に落とし、理論で解析できるところは理論で解析し、その上で人間にしかできない事を人間が判断する(担当者にとっては逃げが無いわけですから一番つらい話ですが)、旭酒造の酒造りの考え方を今回の出演を通してお見せできたことです。

ただ、「味と香りを利く」という事だけに関して言えば、酒造業界にはまだまだ私よりはるかにティスティング能力に優れた人がいます。山口県内だけでも、利き酒選手権で全国一位になった「五橋」の酒井社長とか「初紅葉」の原田専務とか多士済々。たまたま、私に声がかかっただけ、まだほかにも強力な「たま」がいます。

せっかくですから、最後に大見得を。「酒屋男を、なめたら、なめたらいかんぜよ!!」。