実は年末の「ほこたて」の放映以降、一時パンクしてしまった需給バランスがいまだに戻っていません。まあ、考えてみれば、「また飲みたくなる獺祭」を目指して品質の向上努力をしているわけですから、その意味では努力が正当に評価されているわけです。「話題の獺祭を一度飲んだからもういいや」じゃなくて「もう一度飲んでもいい」と言って頂いているわけですから。だから、萬万歳のはずですが・・・・・いろいろとお叱りの電話が・・・・・それなりに悩みがあるわけです。

「せっかく注文したのに、うちが欲しいだけ獺祭が来ない」という取引先のお怒りの電話が多いんです。放映以前もすでに前年比130%程度の売り上げがここ数年続いており、売上に対して製造数量及び製造能力はキチキチという感じでした。それがあるから一昨年秋に、新蔵の建設にゴーサインを出したわけです。ところがその新蔵が完成する前に現状能力をはるかに超える注文が舞い込んで動きが取れなくなってしまったんです。

と、いう事で、この供給量不足に対してこちらでは、過去のお取引の経緯を加味しながらできるだけ各お取引先に公平に分配させて頂くという事しか打つ手がありません。しかし、個々の立場で見ると必ず不公平感が出ます。例えば、「あそこの店には獺祭が並んでいるのに、おれんとこには注文しても来ない(怒・怒・怒)」なんて。(こういう店に限って、昨年全く売ってなかったりするわけですが、そのあたりは都合よく忘れておられますから・・・)

どのぐらいかというと、うちの電話を受ける女性達の受話器をとるタイミングが一拍遅れ始めている位。(怒られる事が多いので、つい怖じて、取る手が遅れてしまうんです。彼女達もできるだけ努力しているんですが、人間の感情なんでお許しください)

社内で、「20年前に、せめてこの10分の1ぐらい売れてたら苦労しなかったのになぁ・・・」とぼやいて、皆に笑われましたが。とにかく、売れなくて、売れなくて、困った時代をずっと過ごしてきた私としては、(贅沢な悩みではありますが)、「人間の悩みの種って尽きないなあ」と思い知らされる昨今です。

銘柄力をつける為に、数を故意に絞ったりせず市場の要求する数量は全力でお応えする、幻の銘柄を目指すんでなくて、実際に「美味しいから次も飲んでやろう」というお客様を増やす事によりブランドとしての確立を目指す旭酒造としては、(お陰で「旭酒造は大きくなりすぎちゃったから・・・・・」なんて一部の酒マニアの方から言われたりしますが)日頃から製造も全速力で走っています。つまり、隠し玉が無いわけです。逆さにして振っても何も出てこないわけです。

10月の新蔵の完成までお取引先にはこの御不便をかける事が続きそうです。もう少しの御辛抱をよろしくお願いします。

(今これを書いているそばで事務の者が「申し訳ございません」と電話で答えています。もう10分ぐらい同じ相手との電話。今度、事務の女性たちの慰労会を開かなくては)

【腹立ちの種】

と、いう事で、私の悩みと言い訳を聞いて頂いたところで、最近の腹立ちの種を。

数年前、ある役所の方が来られました。若年の雇用について相談したいという事でした。ある補助制度があって、「未経験者の若年の雇用を進める為にこの制度を利用してもらいたい」というものです。

私どもにとっても悪い事ではないと思いましたので了解したのですが、、、

ところが、この制度で紹介される人材がほとんど「難有り」。一日でやめたり、ひと月のうち半分欠勤、それもほとんど無断欠勤とか。能力があるとかないとかではなくて、それ以前の就労意欲に問題のある人ばかり選んで推薦している印象を抱くぐらいです。

一方、優れた人材でこれは良いなあと思える人材をその役所に「この方を採用したいのですが、酒蔵の就労経験はありません。従って旭酒造としてもまず即戦力というよりも新人として初期訓練をせざるを得ませんから、この補助制度に乗せられますか」と聞くと、「この制度は○○で決めた人を推薦する制度です」と断られました。

(本当にまじめな方でこの制度を受けていると思い当たる方が、もし、おられたらお許しください。私どもの体験に限っての話ですから)(きっとこの制度の、私ども部外者にはわからない付帯条件が、そういう人しか選ばれないようになってるんでしょう)

日本政府のやっている事を見ると、就労意欲の無い人ばかり優遇されて、本当に働きたい優れた人材や実際に社会を支えている勤労者は割を食うばかりです。もちろん、雇用者側の企業も。こんな事で日本は国際競争の中で生き抜いていけるんでしょうか?

もうひとつ、気になるのは、この制度を冷静に見てみると、確かに高邁な理想を持って作られているにもかかわらず、実際は実施される個々の段階で役所の生き残りに利用されているように推察される事です。しかも、そのように本質を捻じ曲げている実際のお役人たちは、一般的には何の権力も持ってない普通の人として非難されないところにいる事です。(一部、大阪の市役所などの問題と同じ根っこがあるように思います)

みなさん、こういうある意味、日本を腐らせている施策などの原資はみなさんや私達が納めている税金ですよ。うーん、腹が立つ!!