あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
おかげさまで、昨年は第二蔵も新稼働させることができました。これも、獺祭を支えていただいているお客さまたちのおかげと感謝しております。
この蔵と第一蔵の製造能力を合わせると約1万6千石。本蔵まで合わせますと2万石の製造能力を持ちます。
この2万石という獺祭を造るためには計算上8万俵の山田錦が必要になります。単純に日本全国の山田錦の生産量を30万俵とするなら、全国の四分の一以上の山田錦を仕入れさせてもらわないと獺祭が生産できないという数字です。また、全国の純米大吟醸の出荷量を26万石と仮定すれば全体の8%になります。
実は、どちらも前代未聞の数字です。米作という日本の心情的基幹産業にとっても、また日本の酒文化という面にとっても、新しい世界に踏み出すことになる数字です。
以前から「今、日本酒のバッターボックスに獺祭は立っている。たとえ、空振りして尻餅をついて大恥をかくような結果になろうとも、バットを振ります」と話してきましたが、まさに日和見は許されない立場になったと考えています。
だからこそ、考えている事があります。
旭酒造がキャッチフレーズのように使ってきた「山口の山奥の小さな酒蔵」というフレーズ。
「もう、小さな酒蔵じゃないだろう」という皆様のおほめの言葉をよく耳にします。しかし、私の心は変わらないのです。
日曜日に来てくれる社員なんていないから、中学受験中の娘や息子まで引っ張り出して翌日出荷分の酒のラベル張りをしていた頃、いつか純米吟醸酒を年間にタンク10本位は仕込む酒蔵になりたいと考えていた頃、他の酒蔵の見事な酒質にため息をついて「こんな酒を造りたい」と焼けるような思いと羨望を感じたこと。
いつも、少しでも「美味しい」とお客さまに喜んでいただける酒を目指してきました。これからも「山口の山奥の小さな酒蔵」であり続けたいと思います。今年もよろしくお願いします。