先日2月15、16、17日の三日にわたって開催させていただきました東京獺祭の会も1000名をはるかに超える来場の皆様とともに無事終わりました。この場を借りて、皆様にお礼申し上げます。
さて、毎年、乾杯のご挨拶をお客様の中から頂くのですが、10周年目の今回はとりわけ感慨深いご挨拶をお三方に頂きました。
初日は参議院議員でもある有田さん。実は初回から全会出席!!なんです。政治家の先生とか御来賓の偉い人とかの心のこもらない(だけど長くて声が大きい)ご挨拶が嫌いで、ただ純粋に獺祭が、日本酒が、好きできている方に限って乾杯のご発声をお願いしてきました。そんな事で、参議院議員の有田さんにご挨拶をしてもらいにくくなって、ついここまで来ておりましたが、、、10周年なんで、ここでやっていただかなければ永遠に機会がなくなると思いお願いさせていただきました。
内容は、わずか100人ちょっとで始まった初回の思い出から、予想以上にお客様が増えて、あろうことか控室まで会場にして二室で開催した年とか、全会出席の有田さんにしか話せない内容です。
また、ちょうどその週のビッグコミックの漫画「たそがれ流星群」に獺祭が描かれていて、お友達の作者・弘兼先生に電話で聞いたところ「獺祭が好きなんだよ」と答えられたという裏話までお聞かせいただきました。
二日目は堀口和子さんというジャズ・バイオリニストにオープニングからバイオリンを弾いていただき、その流れでご挨拶もいただくという趣向でした。キュートというのがぴったりの堀口さんの演奏と容姿にもう会場のおじさんたちは(特に私)メロメロ、楽しいご挨拶でした。
最終日はあの勝谷さんが講演先の和歌山から駆けつけてくれまして、勝谷さんらしい心のこもったご挨拶を頂きました。なんせ、勝谷さんとも、もう10数年のお付き合いで、出会った頃の旭酒造の製造石数は今の10分の1以下。最初に蔵においでいただいたときは、お連れするところも思いつかなくて隣町の焼肉屋に連れて行ったぐらい。山出しの酒蔵だったんですよ。
私が地ビールレストランをやって酒蔵を潰しかけた時も、一番に「危ないからよせ」とお言葉を頂き、すでに抜き差しならない状態になっているのを見てとると、その中で何かと改善策を助言してくれました。残念ながら全ては手遅れで、皆様ご存じのとおり地ビールレストランは閉館してしまいましたが、そんな勝谷さんがしてくれる乾杯のあいさつ、当方は感激なくして聞けませんでした。
本当に三日間の乾杯のご挨拶、感慨深いものでした。
さて、で、例によって私の挨拶。この通りきちんと話せたか、きちんと意が通じたか、自信のないところですが、とにかく考えていた原稿を書かせていただきます。
(ここから始まります)
皆さんこんにちは。本日はありがとうございます。
さて、知っておられる方もいらっしゃると思いますが、今年も獺祭はお酒が足りません。少し、出荷制限をせざるを得ない状況です。
折角、新蔵を造って製造能力が倍以上になったのに、なぜ、という声が聞こえてきそうですが、米が足りなかったからです。今年、山田錦を4万3千俵発注しましたが、4万俵しか入ってこなかったんです。
この原因は三年続きで山田錦が不作だったからです。しかし、長期的にみると、皆さんも少しおかしいと思われるでしょう。こんなに日本はコメ余りだとずっと言われてきたのに、なぜ?しかも、実際に私どもに米を作って納入してくれている兵庫県の農家に聞くと、「おれたちはもっと作りたいんだよ。田んぼだってたくさん遊んでいるのに」という返事。
つまり、「みんな揃って平等に減反政策」のもたらした結果、やる気のある農家もやる気のない農家も、技術的に優れた農家もどうしようもない農家も、需要のある米も需要のない米も、平等に抑え込まれているんですね。
私たちも、ここにこそ、これからの10年我々が乗り越えて行かなければいけない壁があると思っています。皆様も、何かの折には思い出して援護射撃をお願いします。
ところで、お願いだけではいけません。私どもが皆様にお返しできることの決意表明を。
私たちは今、「巨人・大鵬・卵焼き」を目指そうと言っています。懐かしい比喩ですが、巨人は、あの長嶋・王を擁して強い強いプロ野球の球団。大鵬は先日亡くなりましたが昭和の大横綱。卵焼きはご存じのとおり誰もが好きな私たちの子供時代のごちそうです。
三つとも、あまりに強い、みんな好き、つまり優れているので、反対にお子様趣味の典型のように揶揄されていました。でも、あまりに優れているからこそ、みんな、「おれ、巨人より○○のほうが好きだ」とか「おれ、大鵬より前頭の○○山の方が好き」なんて言うと、ちょっと玄人みたいで威張れたんですよね。
同じことで、獺祭は、「獺祭より俺は良い酒を知っている」「獺祭は良いけど優等生過ぎて・・・」と一部の人に安心して言ってもらえるぐらい、圧倒的に美味しいお酒を目指します。
これこそが、たった7百石の普通酒オンリーの酒蔵から、純米大吟醸しか造らず10倍以上の一万石を望めるところまで応援していただいた皆様や日本の社会へのお返しと思っています。皆様、本日はありがとうございます。(以上です)
こんなことをお話しした三日間でした。これからもよろしくお願いします。