先日、東京有楽町の外国人特派員クラブで、旭酒造の新商品などについて記者発表を行いました。その内容について、少し裏側の個人的考えも含めて記載いたします。
・「獺祭 磨き その先へ」の狙いとコンセプト
・獺祭Bar23について
・メルセデス・ベンツ・ファッション・ウィーク東京・オフィシャル・スポンサー
・本蔵建て直しについて
以上4点が要点でした。
まず、最初は「獺祭 磨きその先へ」の説明です。このお酒の特徴は何と言っても国内価格が720mlで3万円という価格に尽きると思います。このお酒を開発したきっかけは、近年海外輸出を活発化させている当社の体験が色濃く反映されています。
海外のマーケットで日本酒がワインと同様に戦っていこうとするとき、高価格帯の日本酒がないというのは致命的です。現状の価格帯の商品だけでは、ワインと比べて一段劣った飲み物として欧米のテーブルに載らざるをえません。
このあたりを打破するために、かといって、ただマーケティング上の要請だけで高価格をつける商品でなく、実際により高価格の獺祭としての価値を持つお酒として開発いたしました。
続いて、東京・京橋にオープンする「獺祭Bar23」について発表させていただきました。たった16席の小さなバーですが、実は今後パリ・ニューヨークと出店していく計画を持っており、そのプロトタイプとしての性格を持つバーです。プロデュースをあの青柳の小山裕久さんにお願いしておりますので、酒肴も選り抜き。是非お立ち寄りください。
三点目の話題は、メルセデス・ベンツ・ファッション・ウィーク東京へのオフィシャル・スポンサーとして参加させていただくという件です。つい最近の3/17~23に春のファッション・ウィークが開催されており、バックアップは経産省と外務省、冠スポンサーはメルセデス・ベンツ、公式スポンサーとしては、現在、メイベリン・ニューヨークとロレアル化粧品、海外輸送のDHLの三社です。10月開催のファッション・ウィークは弊社を入れて4社になるという事です。
ご想像のとおり、私も最初声がかかったとき、身に余ると考えたんですが、ここで断ると今後10年は日本酒業界に声はかからないだろうと思い返したことが一つ。そして、東京がファッションの街として世界に発信していく事は、今後、ニューヨークやパリと並んで上海などと一線を画す都市になれるかどうかの分岐点で、山奥の酒蔵といえども声がかかった時は役割を担うべき事と思い参加を決めました。
最後は、ここ数年の需要に対する供給の大幅な不足に対しての酒蔵の改築計画です。具体的には、昨年度151%、今年度現在158%(金額)で売上が伸びており、それに対応する生産設備の強化が急務となっておりました。
3年前の1号蔵の完成、昨年の2号蔵の完成に続きまして、本蔵の立て直しをこの夏から開始いたします。本蔵は計画では12階建て総面積11,502.62平方メートルで、完成後の旭酒造の生産能力は単独で5760kl(3万2千石)、1号蔵2号蔵と合わせて9000kl(5万石)の能力を持ちます。
完成予想図はこちら
この蔵は従来の1号蔵・2号蔵同様、徹底的に酒造りに適した環境で熟練した社員(年齢的には若造ばかりですが)による理想的な酒造りを実現するための設備が整っており、さらなる獺祭の酒質の向上を目的としています。
実は、今回の発表はどれをとっても今の日本酒業界を考えるとき、反発も予想される刺激的な発表です。しかし、私どもにとって必然性のあるものばかりで、お客様にとっても大切なお話であり、公表させていただきました。
こんなにいろいろな刺激的な話を公表できるようになっても、私たちはいつまでも、「山口の山奥の小さな酒蔵」であり、私たちにとっていつも、「あぁ、美味しい」というお客様の声がすべてであり、そのために努力し、それゆえにここまで成長させていただき、「獺祭」らしくあり続けるための、今後の計画です。
また、これからも私たちは少しでも良い酒を、社会と共にある酒蔵、目指して挑戦を続けていきます。しかし、おかしな時、厳しいお叱りの言葉お待ちしております。私どもにとって、お客様の厳しい目こそ、成長への糧です。