先日のテレビ東京のワールドビジネスサテライトでトップニュースで流され、また日経レストランや夕刊フジ、それに東京ウォーカーなどに立て続けに紹介されましたのでご存知の方も多いと思いますが、さる5/7に東京の京橋に獺祭が飲めるバーと獺祭が買える小売店を開店しました。

住所:東京都中央区京橋3-1-1 東京スクエアガーデン B1F
地図:http://goo.gl/maps/4KBfA

バーも席数16席、小売店舗も一坪ちょっと、と、小さな小さな店ですから、そっと開店するつもりがいつのまにか大きな話題になってしまいびっくりしています。

半年ぐらい前に、今回のバーのほうのプロデュースをお願いしている青柳の小山さんから「面白い空きスペースがあるけど店をやらない?」と問われて「やります」と即答したのがきっかけです。

おそらく、飲食業界に直接参入する事は、獺祭を扱って頂いてる飲食店様に少しはあたる事になるわけですし、どこまで行ってもメーカーとサービス業のマインドは違っていて私どもにはサービス業の勘所はわかりませんから、あり得ないと考えていました。しかし、日本酒業会の飲食業界に対する対応を見るにつけ、これでいいのかなとも思っていました。

極端にいえば、ガード下の立ち飲み屋のお酒として売れる事ばかり、私たちの業界は目指している。つまり、誤解も覚悟して言いますけど、日本酒の世界を低価格に引っ張ろうとしている。その結果として一定規模以上の酒蔵は別として、大多数の酒蔵は自分達自身の再生産性を阻害している。

現状を見ていると、業界全体として30年後に自分たちが生き残っているとはイメージできていないのではないか。だから自棄のように刹那の顧客満足に走っているのではと思えるぐらい。ある方が言いました。「最近の色々な酒蔵を見ていると特攻隊みたいで痛々しい」と・・・

(以前、そういう方向のお酒の世界ばかり取り上げようとする雑誌の編集長と方向性が合わずスポンサー契約を断念した事があります。先方は、田舎の酒蔵のくせに庶民的な切り口を無視するタカビーな酒蔵と思ったかもしれませんが)

みんながそちらばかり向いている間に、東京や京都の高級店といわれる和食店は日本酒からワインへの傾斜を強め、そんなお店ではワインリストを出される事はあっても日本酒は最後のページにお飾りのように、本気で選んだとはとても思えない銘柄が、数銘柄という事が多々ありました。

その上、フランスのワインやシャンパンメーカーは日本の代表的な和食店や神社仏閣などまさに日本の文化の中核ともいえる施設とコラボ企画を相次いで開いている。対する日本酒の蔵元側には手かがりもなければそれに対する危機感もなし、下手をしたら蔵元自身が客になってシャンパンを楽しく飲んでいる、などのまさに危機的状況に陥っています。

私自身も個人的には立ち飲み屋も好きですし、できるだけ割安の店で飲みたいというのんべの本性万点の呑み助ですが、しかし、高級業態のお店に入っていないという事は日本酒の将来性に大きな「?」を感じるモノです。パリで三ツ星レストランのメニューにフランスのワインが隅っこにしか載ってないなんてあると思いますか? 

少し高いお値段を頂くかもしれませんが、対価以上の「これなら!!」という感動を酒にまつわるシーンに造りだすことは酒に携わる者として大切な事と考えています。特に、アルコール飲料としての側面も持つ日本酒に携わる者として。量でなく感動をもって日本酒を飲む場を楽しんでもらいたい。

そんな事で、まず自分たちで実験してみようという事で始めた店です。ですから、私個人で行くとしたら、しっかり飲めばきっと5千円はオーバーしてしまう、若干高めの価格設定にはなっていると思います。

しかし、ここで勉強した事は皆様に色々な形でお返しするつもりです。そして、この店の業態は、そのまま海外に持って行く事を考えています。

そんな日本酒業界全体に対する危機感と海外への夢をもってはじめた小さな店です。皆様よろしくお願いします。

で、実は最後に若干のお詫びがあります。当初計画段階で、獺祭と共に私と波長の合う他の酒蔵11社のお酒を提供するという計画でスタートしたのですが、オペレーションの問題でうまくいっておりません。

もう少し、気長にお待ちいただければまたそちらのほうもお楽しみいただけると思いますので、よろしくお願いします。