前回の蔵元日記で報告いたしました「酒造好適米を生産調整枠外にする」という農水省の方針について、もう少し詳しい情報が入ってきましたので、続いて報告いたします。あの蔵元日記に対し、大多数の「良かったね」の言葉をいただいた方とは別に、警戒感を見せる人、どうせそんなにうまくいかないと否定的な意見を言う人等などいくつかのご意見を頂きました。
8/8付の商経アドバイス誌の記事によりますと、大見出しで「農水省酒造好適米支援」、小見出しで「条件付きで生産目標外数に」と有ります。この条件付きというところに否定的な方は引っかかるんだろうと思います。
ここで気になる条件ですが、同誌を引用しますと、「農水省が想定している清酒増加に伴う酒造好適米の増産分は、あくまでも清酒製造数量の拡大が条件になる。例えばAメーカーが25年産で500トンだった酒造好適米購入実績を26年産で600トンに増やしても、清酒製造量が変わらなければ生産目標数量外数の対象にならない。農水省では、「酒造好適米使用量増加分を枠外の対象にすると、酒造好適米過剰などリスクが生じるため、清酒製造量の増加に限る方針」と説明している」(以上商経アドバイス誌)
以上を見ますと、結構前向きな方針であると感じています。勿論、いろいろ懸念材料とか、農業や日本酒業界に対する後ろ向きな意見とか、あるのかもしれませんが・・・・・。ここで、今回の農水省の歴史的方針変換を受けて前向きに努力しなくて「何時」するんでしょう。
と、いうところで、旭酒造に限っていえば、問題は山田錦の増産ですから、ポイントは全農兵庫という事になります。
とにかく、、、、、全農さん、、、、、お願いします!!!!!あなた方にかかっています。ここで、このまま、山田錦を、縮小生産とそれに付随する結果としての価格低下にひっぱって行くのか、生産拡大と結果としての域内農家の経営改善に行くのか、はあなた方にかかっています。
ここで、全農兵庫の山田錦の増産がうまくいけば横目で見ている全国の農業関係者の酒造好適米に対する感覚も変わってきます。おそらく、現状で全国の農業関係者の間には、長年の日本酒の売り上げ減と共に毎年減る酒米の数量に、あきらめと共に幻滅が溢れている方が多いと思います。
実は酒蔵と農業関係者の間にはもたれあいもありますが、酒蔵というか酒造組合が調子の良い事を言って(大体、県も一枚かんでいる事が多いみたいですが)、農家に特別の酒造好適米を作らせておいても、数年のうちにそれを使った酒が売れなくなって、酒蔵側は米を買わなくなる、農家はその米のために特注した乾燥機などの農業機械のローンだけが残るといった不幸な図式が散見されてきました。
そこまで行かなくても、タンク一本しかその米で造らないからいつまでたっても必要量は増えず、結果として農業者のほうにしわ寄せがより続けるだけ。お題目だけで日本の農業は生き残れない。
もう、そんな歴史に終止符を打ちたい。実際に関係者がみな幸せになる歴史を造りたいと思います。おかげさまで、旭酒造の純米大吟醸の経過を見ますと、私が酒蔵を継いだ30年前にたった10石に満たなかった、品質的にはとても大吟醸と言えなかった酒が今年1万石を越えるのが当然とされる規模に伸びてきました。これからも増産される山田錦の需要の引き受けの一翼を十分になえると考えています。
もう縮み志向で内向き志向の日本は飽き飽きで、みんなで前向いていきましょう。旭酒造はそのつもりで、山田錦増産分をお受けするつもりです。
◆集中豪雨◆
実は、本日も製造から何人かお手伝いに行っておりますが、先日の山口を襲った集中豪雨、私どもの山田錦を県内で契約栽培してくれている阿東町の農家を直撃しました。幸い、山田錦は奥手のため、まだ稲の穂が出ていなかったので、冠水したといっても何とか立ち直ったのですが、土砂が流入してしまった田もあり、ここはどうしようもないわけです。
おそらく一割程度・2百俵ぐらいの被害は出ています。が、先日、その報告に来た農家のリーダー格のMさんに上記の「農水省酒造好適米支援」の記事コピーをお渡ししたら、それまで披露と緊張で堅かった顔がいっぺんにほぐれて、、
「こりゃあ、良いニュースですね。今回は雨のおかげで痛い目に会いましたけど、百姓は天候で受けた損は、必ず田んぼで取り返すんです。もっと山田錦を増やして必ずやられた以上にとり返しますよ」と、語ってくれました。
聞いてるこちらも胸にぐっと熱いものがこみあげてきて、「酒屋をやってて、良かったなぁ」と思いました。こんな瞬間に立ち会えるのは人生の幸せです。これも皆様のおかげです。ありがとうございます。