10月14日から19日までの一週間、東京渋谷のヒカリエでメルセデスを冠スポンサーとする表題のファッションショーがありました。スペシャルプログラムとしてイタリアのミッソーニが名を連ねていますが、あとは日本人か日本発のデザイナーがずらりと35のブランドコレクションを発表しました。
なんで、ここで私がこんな話をしているかというと、今回、私どもがこのファッションウイークのオフィシャルスポンサーとして参加させて頂いたからです。
元はクールジャパン戦略の一環として「日本のファッションを世界に発信しよう」という経産省の肝いりで始まった「東京コレクション」が2011より世界最大規模のグローバルファッションウイークであるメルセデスベンツファッションウィークの東京版へと進化したものです。
ですからこのファッションウイークはニューヨーク・ロンドン・ベルリン・シドニー・シンガポールなどの主要都市で開かれています。ニューヨークのファッションウイークはあの人気海外ドラマの「セックス・アンド・ザ・シティ」にもドラマ背景に取り上げられていたようですね。
この冠スポンサーのもとに国際宅急便のDHL、ロレアル化粧品、同じく化粧品のメイベリンニューヨークの三社がオフィシャルスポンサーとして支援しており、今回新たに獺祭が四社目として加わったわけです。
DHLにしてもロレアルやメイベリンにしてもどれも国際的な会社で企業規模には獺祭と雲泥の開きがあります。しかし、主催者から「獺祭を世界に発信するお手伝いをしたい」という申し出に心動かされたわけです。
実際、彼らはニューヨークやパリにおける日本酒事情や獺祭の存在をよく知っていて、担当してくれているFさん曰く、「ファッション業界は自分たちが社会より少し先に進んでいなければいけない、その性質上、常に新しいものを求めていて、その意味で獺祭はどんぴしゃりなんです」とのこと。
このあたりは最近、少し話は変わりますが、フレンチとコラボするにおいても、とがっている店やシェフと獺祭は相性が良い経験とか、そのものずばり、有楽町阪急のメンズ館やいくつかのファッションブランド等のファッション業界からコラボの声がかかる事が多く、「こんな若い人が、こんなファッショナブルな人が、獺祭を知ってる、楽しんでくれているんだ」「一般的に言われがちな見方とは別にこの業界の若い人は獺祭に対して違和感を持たない」と感じる事が多かった私の感覚と一致して、すとんと落ちるモノがありました。
また、ファッションというものはある意味、人間が生きていく上で不要不急なものです。同じように「美味しさを追求する日本酒」というものも生きていくうえで必ずしも必要なものではありません。しかし、どちらも、人生に楽しさを与えるモノ、華やかな彩りを与えるモノと考えています。人間は楽しくなければ生きていけません。その意味で私たちは親和性を感じています。
それに、「ここでこの申し出を獺祭が断ったら、今後20年は日本酒業界に声がかかる事はないだろう」と感じたことも一つです。なぜなら、業界全体としてみたときにはこの40年間に三分の一になった業界事情を反映して、小さい事が良い事、社会の片隅で頑張る事が良い事、みたいな縮み志向や、出る杭は打たれる雰囲気があって、業績の良い酒蔵もありますが、資金はあっても地酒蔵は手をあげそうにない。また、大手メーカーはこちらもそのボリュームからして資金はあるでしょうが、「スーパーに行ったら980円で売っている酒」じゃあ、反対に、ファッションウイークの主催者が話を持って行きそうにない。消去法で今の獺祭しかないと感じたからです。それなら日本酒業界の将来のためにもここで受けようと感じたわけです。
また、最初は、「トヨタかどこか日本の自動車メーカーが冠スポンサーだったら日本の酒を世界に発信する上によかったのに」と考えたりしましたが、反対に海外から見たとき、ラグジュリーブランドとしてのメルセデスベンツの存在感は抜群で、そのオフィシャルスポンサーとしての獺祭にとっても、海外から獺祭を見たときのブランドイメージとして、良いと考えいたったわけです。
そんな事で、この前代未聞の「山口の山奥の小さな酒蔵によるファッションウイークの支援プロジェクト」がスタートしました。実際の顛末は、一部フェイスブックやツイッターですでに流れているようですが、ホームページにも「昨日の獺祭」に会社からスタッフとして参加した若手社員が載せてくれています。写真もたっぷり載っていますから、そちらをお楽しみください。