最近、いろんな方から、「今、海外って日本酒ブームなんだってね」と言われます。「そうですね」と当たり障りのない返事をしていますが、実情を言えば決してそんなことはありません。まだまだ日本酒ブームなんて遠い先の話というのが本当のところです。
まあ、業界人の一人として、最近の日本酒は景気の悪い話ばかりなのに、景気の良い話に水を差すのは憚られますし、戦略的に一般のマス市場にそう思ってもらうまでには相当な時間と幸運がいるのもよくわかっていますから。こんな対応でお茶を濁しているわけです。実態がそのうち噂に追いつくのを希っているというのが本音です。「まだまだ日本酒ブームなんて夢のまた夢」とそう感じています。
ただし、ということは、まだこれからという事で、将来において物凄い伸びの可能性を秘めているわけですから、決して悲観したわけではありません。もっとも、このブーム(?)に便乗して補助金や酒造業者を食い物にしている一部のコンサルタントらしき人たちには抵抗を感じますけど。彼らに無批判でくっついている蔵元たちも。
それでは、現状で日本酒(特に高級酒といわれるジャンルにおいて)は、何が海外において、問題でしょうか。数字がまだまだなのはおいといて、それはずばり品質標準が無い事です。パッケージが人目を引くだけのおかしな酒や保存状態の悪い劣化した酒があちこちで見受けられて、それが「普通の日本酒の品質」と海外で受け止められて、それが良い酒の足を引っ張っている、そういう状況です。
つまり海外において品質標準というものがはっきりと認知されてはいませんので、とんでもない酒に出会うことが多々あります。
外国人だけでなく日本人経営の店でも油断できなくて、自分たちが日本を出た頃の昔の日本酒のままの感覚で在庫しようとするところ、良い日本酒は古くなっても悪くならない、なんて一面的な情報をうのみにして古い日付をそのまま在庫している店、ワインを素晴らしいものと尊敬しているからワイン程度かそれ以下の保存で日本酒は十分と考えているところ、様々ですが、そんな店が足を引っ張っていると思います。
まあ、少数ですが流通業者にもそんな方はいて、こだわっているような発言をされて、品質にも厳しい意見を言われるので安心していたら、他人への批判は鋭いのですが、自社の扱い商品は劣化していて、「これがうちの酒かぁ」と思うような獺祭を平気で売っていたところ・・・・・とか。(国内でもよくありそうな話ですが、それでも、最近はそんな店が少なくなってきました)
はっきり言いますと、ニューヨークなどのように、シンボリックな店が先行して良い状態の日本酒を提供してくれていて、結果として全体の市場の酒を底上げしてくれている、ような理想的な状態は珍しく、本当に良い状態の日本酒を流通業者も飲食店も知らないため、劣化した酒や、青や赤のパッケージの受け狙いだけの酒が大手を振って歩いているという状態だと思います。
実はそんなことでパリに直接「獺祭」の飲めて買える店をオープンすることにしました。つまり、本当の品質の獺祭を常に紹介できるようにすることによって、ヨーロッパにおいて日本酒の品質標準を造ろうというものです。
場所は凱旋門近くの一等地。おそらくこんな一等地は望んでも出てこない立地と思います。バブルの時代はいくつもの日本の大企業がシャンゼリゼに営業所を構えていました。しかし、みんな撤退してしまい残っているのはトヨタだけ。そんな意味では、もう一度、日本がパリに存在感を示す先駆けになれれば。
また、酒を売るのは本業ですからお任せいただきたいと思いますし、レストラン部門も超一流のタレントを準備しています。勿論店舗設計も世界で勝負するならこの人という人にお願いしております。実は12月10日に凱旋門近く、というかシャンゼリゼの通りを一つ隔てた反対側に位置するロブションで発表会を開催するつもりですので、詳細はまだ差し控えたいので申し訳ありません。とにかく、オールジャパンでヨーロッパに戦いを挑むつもりです。
会社もすでに子会社をパリに設立しました。私もその扱いの大きさにびっくりした記事ですが、9/21の日経新聞夕刊の一面に載りましたのでご存じの方も多いと思います。社名は「Dassaї France(ダッサイ・フランス))、社長は私どもの副社長の桜井一宏が担当します。開店は来年三月の予定です。
【人材募集】
最後にこの店のスタッフを募集しています。特にストア部門の店長。この店長は当然ヨーロッパにおける大卸の部門長としての役割を将来的には期待されます。私たちと一緒に新しい日本酒の歴史をヨーロッパで創れる人を待っています。
【蔵元の失敗編】
獺祭の海外進出に関連してラジオ番組に出演しました。ニッポン放送の「高嶋ひでたけの朝ラジ!」。放送はすでに10/25(金)の朝放送されましたが、収録はその数日前の有楽町のニッポン放送本社でした。
11:30の収録開始に、30分前の11:00に受付に到着したのはいいんですが、、、誰が窓口か?誰に会うのか?もちろんどの番組に出るのか?全く確認していなくて、そのまま、ただ担当ADさんの携帯電話の番号を一つメモしただけで受付へ到着。
受付で、「僕の行くとこどこでしょう?」なんて聞かなければいけないアホな状態。頼みの綱の携帯は、留守番電話。お相手はADさんですから放送中とかだったら当たり前ですよね。その程度の想像はつかないんですかね。自分ながら情けない。
受付のきれいなお姉さんの、内心「このアホなおっさん、誰?」みたいに思いながらも(きっと)親切に探して頂いた結果、何とか収録スタジオにたどり着きました。とにかく、酒蔵以外に取り柄はないんです!!私は!!!