あけましておめでとうございます。

昨年の新年ごあいさつの蔵元日記を引っ張り出してみると、米不足の話から始まっております。この一年、皆様もご存じのとおり、山田錦の増産を求めてフル回転をしました。私も製造部長の西田も小林技術顧問もこの一年、西に山田錦を造っても良いという農家があれば飛んで行き、東に山田錦の栽培講習を望んでいる農家があれば経験者と共に飛んで行き、マスコミから山田錦の不足の取材が入れば何をおいても対応した一年でした。

そんな取り組みの一つであります、あの富士通とのコラボの山田錦の栽培技術支援は、農業関係者に与えたインパクトの大きさから大きなニュースになりました。とうとう、山田錦不足を克服するため、清酒「喝采」の桜沼酒造が富士信と組んでITシステムで農業支援に乗り出すという事で、マンガの「会長・島耕作」にまで登場しました。(いうまでもなく、「獺祭の旭酒造」と「富士通」の意味ですね。弘兼先生ありがとうございます)

お陰様で、農業関係者の目の色が変わってきました。一昨年「山田錦全国生産量60万俵をめざして日本の農業のマインドを変える」とぶちあげ始めたときは、遠い目標に見えましたが、ここ数年で達成できる現実味を帯びてきました。反対にブームが過熱する事が心配になっています。

この一年、まず数量拡大から入りました山田錦も、次の目標である品質の向上に方向を修正するつもりです。農家のみなさんも、山田錦は日本の農業にとって大きな財産です。大事に育てれば大きな果実になります。よろしくお願いします。

と、同時に、山田錦不足という情報加熱の中で、発注を大幅に増やされている酒造業界の関係者にお願いしたいのは、出した発注は責任を持って全量を引き取ってほしい。「あの時はこう言ったが、事情が変わったので」などという言葉が流れる事を恐れています。農家を「二階に上げて梯子を外す」ような事をしないでもらいたい。

最後に、あの「テルマエロマエ」のヤマザキマリさんがイタリアから日本に帰ってこられて「10年前と比べると日本酒ブームですね」とおっしゃっていました。ちょっと、個人的にも実感しています。

でも、このブーム、酒造業界が「大人の解決策」だったり「業界の勝手な都合」でなく、爽やかな出処進退をしないと一気に霧散してしまう危うさも持っています。他人の心配をする暇があったら、まず、自身が心を引き締めて進みたいと思います。「週刊朝日」の年末年始特大号190Pの私の発言「酒米不足を嘆く前に、真心を込める前に、まだやる事がある」。

今年もよろしくお願いします。