すでにいくつかのテレビ新聞などのメディアに取り上げられ ましたので、ご存知の方も多いと思いますが、昨年度の試験醸造・試験発売に続きまして、この4月から本格的に「獺祭 等外」を発売いたしました。
「獺祭等外」の開発の経緯は2014年4月10日配信の蔵元日記に詳しいところですが、その酒を三か月後に飲んだ時にあまりの品質劣化の速さに愕然としました。
理由は、等外米の性質にあると考えられます。粒ぞろいが悪 いのが一等二等にならずに等外とされた大きな理由です。つまり、粒の小さなコメも混じっております。全体を通常よりさらに15%磨いて35%までしたにもかかわらずごく少数の 磨ききれないコメが残っているのではと考えられます。 つまり、一粒一粒を見たとき、等級米の50%精米のほとんどの白米が元の玄米に対して50%でまとまっているとして、等 外米の場合は35%まで磨いているにもかかわらず、中に80%ぐらいしか磨けていないコメが混入していると考えられます。
結果としてこの少数のコメが悪影響を及ぼして、製造直後には良いのですが、時間の経過とともに劣化を加速させると考えられるのです。
ということで、直後は通常等級付の山田錦で造った純米大吟 醸50に勝るとも劣らない酒質ができるとしても、三か月たつと差が開いてしまうわけです。これはもったいない。 せっかくのお酒は少しでも美味しく飲んでもらいたい。ですからなるべく早く飲んでもらう工夫が必要です。
そのためには、等外の性格も明確に認知されていない状況で、 どこもかしこへも無制限に出してしまうと、そのあたりの理解のない流通や飲食業界で日数の経過して劣化した等外が出されてしまう危険性がある。特に今の獺祭の問題は無許可のプレミア価格目的の転売業者が跋扈していることですから、彼らにそのあたりを理解してもらうということは100%無理 です。
そんなことでお相手として頭に浮かんだのが大手居酒屋チェ ーンの和民。和民なら獺祭の等外を出荷後一か月以内にお客様に飲んでいただける販売力がある。そして、等外の商品の背景をお客様に説明していただける機能を持っている。 また、創業者の渡辺美樹さんを見て分かるように、農業支援などの社会貢献に熱心です。獺祭が今回この等外でやろうとしていることも発端は農家へのリスク軽減です。そのあたり、シンパシーを感じたことも追い風になりました
「獺祭等外」は色濃く米作の等級制度と本醸造や純米など特定名称酒の表示基準の矛盾の克服という性質をもった商品です。だからこそ、おいしくなければ意味はない。 社会貢献だから美味しくなくてもいいという言葉は旭酒造にはありません。