すでに、2/12付の日経新聞11面の記事でご覧になった方もあるかと思いますが、旭酒造では昇給制度を変更しました。 以下、出だしだけ引用します。ーー日本酒「獺祭(だっさい)」 を生産する旭酒造(山口県岩国市)は、2月から若手に手厚い給与制度を導入する。年5%と高い昇給率を設定して40歳で基本給が最高となる-----以上日本経済新聞(抜粋)です。 http://www.nikkei.com/article/DGXLZO96749830R30C16A1TJE000/
この給与制度の概要は、今までですと入社後は定年まで一直線に3%づつ昇給していく、ところがこの新しい制度だと入社後一定期間後は5%で昇給する、その代り40歳でピークを迎え、それ以降は管理職とか特殊技能は別にして定年まで同じ金額のまま、という給与体系です。積算の生涯給与はほとんど従来のものと変わらないというところにミソがあります(もっとも実際には5%増えていますが)。
何でこんなことを考えたかといいますと、旭酒造は1999年の売り上げが約2億円、それが今年度は100億を超す売上金額を予定する急成長を遂げている会社です。
そうすると、どういうことが起こるか。つまり若くて急成長の会社の特徴として人材が若いわけですから人件費負担が売り上げと比べて軽いんです。つまり、筋肉質で利益が出やすい体質の会社ですね。で、この体質はいつまでも続くと誤解して、利益を社長や幹部のクラウンやベンツ・豪邸に費消しているとある時期から日本の大手企業の殆んどがバブル崩壊後、体験したようなしっぺ返しを受けるわけです。(代表例は日本の年金行政!!)
それより、若い人たちを見ていてずっと感じてきたことがあります。日本の国は若い人に冷たくて、我々の様な高齢者に手厚い。(同年齢か以上の方たちからは異論があるかもしれませんが、私はそう思っています。)
具体的に言うと、日本の給与体系は新入社員時代の数年は別として、仕事の習熟度と給与を見たとき、若い人の給与は相対的に安いのです。ところが、これが40歳程度から逆転します。しかし、バブル期までの日本では生涯雇用が当たり前でしたから、その意味では生涯をかけて一社に勤めれば十分報われる社会でした。しかし、最近はリストラとかで一つの企業に勤め続けることが難しい時代になっています。つまり、コスパが良い間はこき使われて、コスパが悪くなると放り出される。そんな時代になってしまったのです。
これ、あんまりじゃないですか? やっぱりもっと若いうちに報 われるべきなんです。しかも、先ほど述べたように、急成長会社ほどひずみというか成功の報いを受けやすい。その意味では、若い人のためになんてきれいごとを言っていますが、急成長の果実を今の間に若い社員たちに分かち合いたい、そうすることによって、今そして明日の会社の体質を結果として強化したい。そんな思いで考えついた給与体系です。
ところが、この給与体系は2年ほど前から考え始め、社内に条件整備など、実現を投げておりました。そしたら昨年の1月、トヨタ自動車が同じ考え方の給与体系を発表しました。やられたと思って、社内で「早くお前たちが条件を詰めないから先を越された」と言いましたら、「あちらは世界のトヨタ、うちは地方企業なんだから、今からでもニュースバリューもあるし大丈夫」という意見が返ってきました。
それに対し、「そんな悠長なこと言ってるから、アホなんや」「いま、企業は世界のトヨタも山口の零細酒蔵も、外から見たとき、同じ土俵に乗ってるんや」 一見、滑稽に見えるかもしれませんが、それが山口の山奥の小さな酒蔵の経営者として30数年この変化の激しい社会に関わってきた私の実感なんです。
今のツイッターやフェイスブック等の発達した情報社会の中で、 まさに企業は同一条件の中で生き抜くことを要求されているんです。その意味では社会は平等。ただし、残念なことに対等ではないんですが(当たり前ですね、大トヨタと旭酒造ですから ね)。
そんなことで、この昇給制度が発進しました。そして、この昇給制度は必ず旭酒造の若手社員に大きな成長へのモチベーショ ンとなり、それはより良い品質として皆様に成功の果実をお返しできると確信しております。いつもご愛顧ありがとうございます。