もうすでに、御挨拶のできるところでは話しておりますので、お聞き及びの方もいらっしゃると思いますが、このたび、私・桜井博志は旭酒造株式会社の代表取締役社長の職を辞し、これからは会長として皆様にご奉仕させていただくことになりました。

1984年4月に、意見が合わず喧嘩別れをしたままその仲を修復もせず、父であり社長であった桜井博冶を亡くし、そんな罰当たりの息子でしたから、もちろん引き継ぎもなしで急きょ跡を継ぎ、32 年と半年を社長として勤めさせていただきました。

その間、皆様にお世話になり、、、にもかかわらず、、、失敗ばかり引き起こし、、、にもかかわらず、皆様の篤いご愛顧のもと、結果として日本酒業界で稀有な成長を旭酒造は遂げさせていただきました。本当にありがとうございました。

さて、新社長は私の長男でありこれまで副社長として皆様にご奉仕させていただいていた桜井一宏が勤めさせていただきます。桜井一宏は現在39歳で海外を中心に担当してまいりました。

私があと一か月で66歳となりますから、社長を譲るタイミングとしてはそんなに早い方ではないと思います。よく言われることですが 「気力体力がまだあるうちに次世代に譲って、次世代の成長を見守る、それこそ長年の皆様のご愛顧とご支援にこたえる道ではないか」私もそんな思いで決断しました。

実は私が何より心配しておりますのは、これまで新社長はあまりひどい失敗をしておりません。というよりも、現在の旭酒造の各部門、 製造も業務も営業も、順風の中で過ごしてきております。ここまで、私が失敗ばかりの恥多き社長人生を送ってきましたこと、そしてそれがいつの間にか私どもを救ってくれたことは皆様よくご存じのと おりです。

順調すぎる人生は逆境への対応力をそぎます。このままで行くと「これからの旭酒造を取り巻く環境変化に果して彼らが追い付いていけるか」が心配になってきます。

新社長はこの中で彼らに、時至れば、「ゲームのルールが変わったんだ」と説明し、解体し、造り直し、叩き、励まし、治療していかなければいけない、そして自分自身が先頭に立たなければいけない、格好の悪い失敗もばつの悪い失敗も恐れず、進まなければいけません。(既にここで、言分けを入れておりますが、そんな失敗を新社長がした折には笑ってやってください。また、何とか見捨てないでください)

もちろん、私も会長になりましたからと言って、旭酒造に対する責任を逃れるつもりはありません。最終責任は常に私にあると肝に銘じております。どうか皆様、旭酒造の新たなリーダーをよろしくお願いいたします。