「もうすぐです」「もうすぐオープンです」、まるで蕎麦屋の出前のように答えてきた獺祭のパリ店。最近は「フランスらしく順調に遅れております!?」なんて皆が苦笑いをする言い訳も覚えて・・・、まぁ、ほんとに・・・、遅れてたんですが、やっと内装もおおよそ完成し、12月中にソフトオープンの運びとなりました。
考えてみれば最初の店の計画を発表してから足掛け5年、蕎麦屋の出前ならいいですが、オオカミ少年といわれても言い返せないぐらいの遅れです。
ただ、今回のパリ店の開店で思っていることがあります。それは「失敗がなければ前に進まない」ということ。獺祭のパリ店は当初、日本チームだけでやりかけて、凱旋門のすぐ近くの日本人経営のレストランの営業権を取得し改装に取り掛かっていたものです。この辺りはテレビ東京の「カンブリア宮殿」の中でも取り上げてもらい、ご存知の方も多いと思います。
ところが好事魔多し、途中でその日本人のレストラン・オーナーからいろいろな後出し条件が出てきて、その間に嫌気がさしてきた家主から「飲食はさせない」という申し渡しがあり、ストップしたのです。営業権はこちらにあるわけで、家主からも「損失は負担する」という申し入れもありましたが、結局フランスの貸借問題をフランスの法律下でフランスの裁判所で交渉する、ということになり、結局かなりの損金を出して撤退した経緯があります。
そんなことで、一旦、獺祭パリ店はあきらめたんですが、そんなときに今回のパートナーであるロブション氏から「一緒に獺祭の店をやろう」「初めて獺祭を飲んだ時、いくつも獺祭に合う料理を思いついた」「自分が作る料理は獺祭に会う」という申し入れがありました。
そんなことで、一度とん挫した獺祭パリ店が「獺祭・バイ・ジュエル・ロブション」としてよみがえった経緯があります。だから、最初の躓きがなければ今回の店は出来上がらなかったわけです。しかも、今回の店は、はるかに大きなスケールで、そしてパリの飲食業界に対しはるかに大きな影響力を持って。おそらく数十年単位で見たとき、フランスというより世界の飲食業界に対する日本酒の立場に大きな影響を与える店となるでしょう。
まさに失敗があったからこそ今回がある、と言えると思います。
人生に無駄なものは一つも無い。
ところで今年中にソフトオープンし、フランス流ですとこれでスタートなんですが、日本流にグランドオープンも企画しています。
日時:2018年1月24日(水) 夜18時30分から22時頃 場所:パリ8区の店舗「Dassai Joel Robuchon」 住所:184 rue du Faubourg Saint Honoré 75008 Paris 実施内容:立食式カクテルパーティ 当日は立食となりますので、前日の1月23日に、海外からお越しいただいた皆様に、食事をしていただきつつゆっくり雰囲気を見て頂きたく、食事会の様な形をご用意させて頂ければと考えております。 こちらは会費や時間の詳細は未定ですが、12:00~のランチと、9:00~のディナーという形で、開催できればと考えております。
という事です。残念ながら1/23の方はロブション氏の都合がつかず、 旭酒造側だけがお待ちする形になりますが。そのころにパリに御用のある方はいかがでしょう。
◆まことしやかな悪口◆
ところで、面白い話がフランスから入ってきました。フランスのワイン業界で、獺祭について、まことしやかな噂や悪口が立っているそうです。たとえば「獺祭は四季醸造を始めてから品質が下がった」など。まるで、例の週刊誌の記事に登場した「某」日本料理店店主 や「某」日本酒ライターが言ってたみたいな話ですね。もっとも、そもそもフランスに輸出し始めた時から獺祭は四季醸造ですけどね。
どうやらフランスのワイン業界においてこれまでは、「日本酒なんて東洋の蛮族がつくる飲み物で気にもならなかった」のですが、ここへきて「出る杭打ち」が始まったようです。私も本で読んだり聞いた話でしかないんですが、フランスのワイン業界も日本酒の業界以上に陰謀や足の引っ張り合い、スキャンダルに事欠かないと聞いていますから、むべなるかな、ですね。
皆さん、面白いと思いませんか?フランスのワイン業界から足の引っ張りにあうなんて、、、日本酒業界では古今東西初めてですよ。こ んな光栄なことはありません。受けて立ちたいと思います。幸せだ なぁ。