まず、この度の大阪地震で被害にあわれた方、お亡くなりになられた方、お悔やみ申し上げますとともにご冥福をお祈りいたします。改めて我々は自然の猛威の前ではいかんともしがたく無力であると実感するとともに、であるからこそ、幸いにして被害にあわなかった自分たちがより社会に対して責任を担わなければならない事を実感しております。
こんな時になんですが、いえこんな時だからこそ、6月19日にパリの店であるダッサイ・ジョエル・ロブションのグランドオープンの会を開催してきました。木寺大使はじめ130名を超す日仏、そしてアメリカ・イギリスからのお客様にお出でいただき盛大に祝うことができました。
感謝するとともに、ここにフランス料理界で帝王とも神様とも称されるロブションさんの料理、そして日本の酒である「獺祭」、つまりフランスの文化と日本の文化の新しい融合が始まる、新しい歴史が始まる、その片方の当事者であり、当然の責任を実感した今回の出張でした。
ところで、たくさんの取材の方にもお出で頂き有難い事だったのですが、取材の方向は明確に二つに分かれていたように思います。
私たちは、現状、日本酒の輸出がうまく行ってるとは考えておりません。たとえばフランスのワインの国外輸出の実績が約8千億円、対して日本酒の輸出は190億円弱、これで「海外は日本酒ブーム」なんて言葉がどこから出るんだろうという数字です。さらに、フランスの一流ホテルに日本酒が入っているといっても、保存状態が悪く、とても「これが日本の酒」と胸を張って言える品質ではない。「あぁ、この前もどこそこの酒蔵が来て、自分の蔵の酒をおとなしく変えていったよ」なんてソムリエに平気でうそぶかれる始末。
そんな現状に業を煮やして、フランスに直営店を私どもは出したわけですが、そのあたりに着目してくれるマスコミもあれば、「我々は庶民の夢を壊さないという意味で、いろんな蔵の酒が海外で売れるようになってバラ色だ、という報道をしなければいけないんです。その代表としてこの店を取り上げたい」と現状にはっきり目をつぶるマスコミもいます。
こういう現実にぶつかると、我々は「見たいものしか見ない国民」(少なくとも一部マスコミはそう思っている)なんだなと情けなくなります。
しかし、酒蔵をやっていて思うんですが、現状がうまく行ってないのは当たり前のことで、世の中なんてうまく行くはずがない、だからこそ、現状の問題点を把握し、なんとかそれを克服する努力をしないと、私たちは健全に成長することはできないんです。980万石が40年間で290万石に落ちてしまった日本酒業界の歴史を再現することになります。しつこいようですが、問題点に目をつぶって知らん顔はできません。
とはいえ、酒蔵も人気商売ですから、つらいところです。ただし、どのように報道されようと私どもの真意はここにあることをご理解いただけると幸せです。
★蔵元のたわごと
ああ、また何人かの人に「あんたのメルマガは意地が悪いねぇ」といわれそうですね。でも、こんな意地の悪い蔵元が造っている「獺祭」をここまでご愛顧頂いて、ここまで育てて頂いて、お客様には感謝しかありません。