「恋におちたという表現が最も適切だろう。獺祭は私がこれまでに出会ったベストの日本酒だ」
ジョエル・ロブション
こんなことを言われて舞い上がらない蔵元はいません。ジョエル・ロブションさんは「フレンチの神様」と称されましたが、「人たらしの天才」でもあったんですね。そのロブションさんがなくなりました。
癌だったことはまったく明かされず、つい二か月前来日された時、まったくそんなことを知らない私どもは、山口の酒蔵までお出でいただきました。若干、以前のロブションさんと比べて痩せてらっしゃいましたが、まったく病気のようなそぶりを見せず、食欲も5歳若い私より旺盛で、その食への探求心に感嘆した覚えがあります。
ただ、帰国した後、体調がすぐれないと聞き、心配しておりました。しかし、パリ店のオープニングにはそんな体で無理を押して来ていただきました。その時には本当に痩せておられて心配いたしました。あれはロブションさんの私どもに対する大きな友情だったのですね。その後、ロブションさんの体調を心配する私どもに、「回復したから大丈夫」という話と、「心はいつも旭酒造の皆様と共にあります」というコメントをいただき、ほっとしていた矢先でした。
そんなことですから、いかに私どもにとって、青天の霹靂だったかがお分かりと思います。
「一緒に店をやろう」と三年前に声をかけられて以来、親しく付き合えば付き合うほど、ロブションさんの、「昨日より、少しでも美味しい料理、より良い美味しさ」を求める、ロブションさんの姿勢に感動し続けてきました。
そのロブションさんが亡くなりました。私どもにとって何とも悔しい事で、同時に世界の損失といえることですが、彼の片腕エリック・ブッシュノワールさんのメッセージ「我々はロブション氏の料理の継承者であり、オマージュを捧げるためにも団結し、心高きままにいよう。ロブション氏の料理(ロブション氏のよい仕事をするという哲学)が永劫に続くよう、毎日毎日の仕事を大切にしよう」という言葉に深く同感するものです。
私たちもロブションさんの心を継いで、より高みを目指すつもりです。