すでに弊社ホームページの蔵元情報でも掲載しておりますが、山田錦のコンテストを開催します。
https://www.asahishuzo.ne.jp/info/information/item_3010.html
50俵単位でご出品いただき、一位になった山田錦は一俵50万円、つまり2500万円で購入させてください、というコンテストです。最高と言われる兵庫県特A地区の山田錦でも3万円ですから、「気が狂ったか」と言われそうな金額ですが、長年の思いが有って始まった企画です。
この蔵元日記を読んで頂いている皆さんは、私が「米余りなのになぜかの山田錦不足」に悩み続けたことはご存知と思います。その過程で様々な方にお会いする中で、農家の皆さんのまじめさ、しかし、シニカルで内向きな感覚に疑問を感じていました。
一昨年、ある地域の山田錦生産者大会にお伺いした時、その会場を覆うなんとも言えない停滞感にびっくりしました。その二年前の、「獺祭が買いすぎるから山田錦不足になっている」「獺祭の業界横並び無視を何とかさせろ」との全国大合唱に対し「山田錦は高価で、農家にもメリットが大きいんだからもっと作ろう」と私が訴えていた頃のあの会場の熱気はどこへ行ったんだろう。
答えはすぐわかりました。演台横の垂れ幕に「〇〇万俵の生産目標を達成しよう」と書いてあります。その〇〇万俵って前年度生産数量の99.5%じゃないですか。
「あれっ? 一昨年この農業団体は山田錦のブランドを守るために米粒の選別基準を2.0mmから2.05mmに厳しく変更するよう各農家に要請してたよな」「当然それは農家にとって収量減になる話だけど、『県産山田錦のブランドを守る』というスローガンのもとに価格は据え置きだったよな」「基準を厳しくして価格据え置きで、生産数量そのままなら農家は『骨折り損のくたびれ儲け』になるだけだよな」
ところが、「近年、山田錦を増やしてほしいという獺祭の要望に対して、常に三割カットの納入しかしてくれなかったよな」「仕方なくこの県以外の山田錦の栽培農家を育成して今に至るんだけど、ここがうちに応えてくれていれば今年のこの地域の生産数量は1.2倍になっていてもおかしくなかったな」(注)
「でも、なんで各農家は唯々諾々と素直にこんな不利な決定に従うんだろう??」不思議で仕方なかった経験でした。でも、こんなことしていて本当に日本の農業を守るといえるんだろうか?
実は、こんな疑問からこのコンテストの企画がスタートしたんです。
「米作りは日本の心」ならもっと日本の米を大切にしよう。価格だって、いつまでも安いままでいいわけじゃない。本当に良い米を作るためには、田んぼの選定から必要だし、手もかかる。だからと言ってすべてが狙った品質になるわけじゃない。米作りってリスクの大きな仕事なんです。だからこそ、けた外れのものに挑戦することも、頂上を高めれば中間層も引っ張られて、結果として全体のアップになるんじゃないでしょうか。
海外と比べて日本の宿泊費や飲食費が、その提供されるサービスのグレードで比較したとき、極端に安いことはご存知だと思います。これが日本の住みやすさにつながっているのは確かです。しかし、これって、結局日本人がみんなで低賃金で汗をかいてみんなが疲れるばっかり、とも言えませんか?
安い米は海外産でもいいじゃないですか。日本で作られる日本人が作る米は高くしましょうよ。「それじゃ、獺祭に売る米だけは高くしよう」と言ってもらっても困るんですが。しかし、すべての農家とは言いませんが、「自分の将来は自分で創る」そんな農家が少しでも増えてもらいたい。それが日本の農業を守る道だと思います。
目をキラキラさせて明日に挑戦する農家がいてほしい。そんな農家とともに酒を造りたい。それが獺祭の思いです。
(注)この業者がなぜうちの要望に応えなかったかというのは、推測ですが、こうだと思います。日本酒全体の売り上げ減の中で山田錦の扱い数量も減り続けました(平成6年の33万俵が平成26年に16万俵)。その状況の中で、うちへの数量だけが増える事への他の酒蔵のやっかみも相当あったようで、それへの遠慮からと思います。みんなで仲良く足を引っ張りあって、みんなで縮こまる、という日本独特の価値観ですね。やっぱり、獺祭って日本酒の伝統を壊してるんですかねぇ。