昨日はとうとう安倍首相からも各種イベントの自粛要請がありましたね。実際に様々なイベントが中止されているようです。昨日、私も大阪の日本センチュリー交響楽団の方々と一緒(注)だったのですが、頭を抱えておられました。私共も、断腸の思いで、福岡と札幌の獺祭の会を中止しました。

獺祭の売上という面でも影響は結構あって、国内も少し厳しいのですが、なんといっても輸出と免税売り上げの落ち込みは物凄いものがあります。昨日現在で言いますと輸出は前年の40%に届かず、羽田や成田などの免税売上は43%と壊滅的。

特に前年の2月・3月は輸出と免税の売上が国内売上を超えて逆転してしまった旭酒造にとっては歴史的な月でしたから、今月の全体への数字上の影響も甚大です。また、日本酒輸出金額全体の約15%は獺祭ですから、その意味では今月の日本酒輸出全体も悲観的な実績が予想されます。

少し、仕込みの方も減らさざるを得ないと考えています。今回の問題は外的な要因に起因していますから、自身では如何ともしがたく、成す術もないのですが、こういう時だからこそできることがあると思います。

造りの面で言えば、この機会に、ともすれば歯車になってしまいがちな若い社員に主体的に造りの経験を積んでもらおうとしています。どういう事かというと、高卒なら入社後5~6年組、大卒なら3~4年組をチーフにもう一人それより2年ぐらい若いメンバーをつけて、二人一組でタンク一本、洗米から麹・仕込みまでその若い二人に全て委ねてしまおうというものです。

酒造りをもっと若いメンバーに知ってもらおう。酒造りの難しさも面白さも知ってもらおうという試みです。これも、数字に追い掛け回されているときはこんな試みはできませんでしたから、今だからこそできる試みです。

今のところ、月に二本ずつ、6チームの実行を予定しています。山口の山奥の「こりない」酒蔵はこんな事をやろうとしています。

(注)これもとんでもなく面白い話です。大阪の日本センチュリー交響楽団からのご提案で、始まった試みです。現代音楽の作曲家として名高い和田薫さんに「交響曲獺祭~磨き~」と題して5楽章からなる交響曲を作曲してもらい、それを常任指揮者の飯森さんの指揮で演奏、そして録音し、発酵タンクに取り付けたオンキョーの音を振動に変える特別なスピーカー?を通して発酵中のもろみに聞かそうというものです。

すでにオンキョーさんの特別チームが来社し、タンクの実際の曲面を実測してスピーカーを制作中です。

勿論、和田さんの作曲が最も大事になるのですが、発酵には少し緩やかな曲調を、熟成には少しパンチの効いた曲調になるそうです。クラシックはもちろん、「ゲゲゲの鬼太郎」とか「金田一少年の事件簿」などのドラマの主題歌を手がけるなど幅広い作曲分野を手がけられる和田先生ですからこれも楽しみです。

そして、何より、音楽を聞かせて獺祭の発酵がどうなるのかも期待されます。最近も発酵中の獺祭の酵母から全く新しい物質が発見されたばかりですが、まだまだ、酵母の働きは分からない事だらけです。

その意味でも、どんな変化を見せるのか? はたまた変化は人間には感知できないのか? ワクワクしています。

交響曲そのものの発表会は来年2月の27日に大阪いずみホールで、翌28日には山口県周南市の文化会館で飯森マエストロの指揮で上演予定です。その場で音楽を聞かせて造ったお酒「交響曲獺祭~磨き~」も発売予定です。推測ですがそこで完売してしまいそうです。興味のある方はぜひ日程表に書き入れてください。

こんな時だから楽しくやりたいと思っています。いつもありがとうございます。