安倍さんが凶弾に撃たれて亡くなりました。なんとも残念なことです。安倍さんと獺祭と言えば様々なことが思い出されます。農水省が進めてきた主食米の枠組みの中での実情を無視した酒米の減反政策に対し、方向転換を主導していただいたこと。各国歴訪の旅などでは獺祭をその国の首脳にプレゼントしていただいたこと(特に初期)。それもニュースで初めて知って、あとからどこの店で買われたかこちらが知るまでオープンにはされなかったこと。
安倍さんのところでは、獺祭を買われるとき、常に市中のお店や百貨店を使われていたんですね。また、限られた数度しか直接お会いすることもなかったのですが、その折「僕が獺祭を推しすぎると事務局から怒られるんだよな」と笑いながらおっしゃられていたこと。事実、同じ山口県とは言え安倍さんの選挙区と私どもの酒蔵は別の選挙区だったのです。
こんなこともありましたね。アメリカ政府ホワイトハウスの公式晩さん会で「安倍さんを喜ばそうと」と乾杯の酒として獺祭をアメリカ政府からシークレットでご発注いただいたこと。これなんか私も途中まで知らなくて、事務所の中で「オバマさんのお酒は~~」と話しているのを聞いて、最初は福井県の小浜市のお酒屋さんのことかと思ったぐらいでした。
また、誹謗中傷にさらされたこともあります。三年前の西日本大豪雨で被害を受けた折には、ちょうど前日、安倍さんと岸田さんの非公式な会食があり、その折、お二人が獺祭と賀茂鶴を持ち寄られたことを悪意に取り上げて、「そんなことをしているから獺祭の酒蔵が洪水被害にあっただろう」と誹られたこともあります。
安倍さんが獺祭をことさらに使って頂いた理由は、推測するにこんな理由です。安倍さんが第一次政権を組閣する前なんて東京に今のように山口の酒なんてなかった、そんなときにやみくもに東京に進出しようとしていた獺祭が目に付いたからだと思います。
第一次政権を投げ出さざるを得なくなった雌伏時代に、亡くなった勝谷誠彦さんから「昨日、安倍さんと酒でも飲まないかと誘われて会ったんだよ。何を持ってきたと思う? あんたとこの酒だったよ」と興奮気味に連絡を受けたのを覚えています。
こんな安倍さんの死に対しショックでないはずがありません。ご冥福を祈ります。