遅れに遅れたニューヨークの酒蔵もやっと完成のめどがつき、いよいよ私のニューヨーク出発も3/20と間近になりました。このメールを皆様が読まれている頃にはもしかするとすでに機上かアメリカの住民になっているところかもしれません。

実は、恥ずかしいことを言いますと、英語は全くできないし、そのうえ、日本と反対の車は左ハンドルで右側通行ですから、気が重くて仕方ないのです。ということで、アメリカでの足に新型のマスタングを買いました!? 全然話がつながっていませんか? いえ、ちゃんとつながっているんです。

フォード・マスタングは50年前のニキビ面の中学生時代のあこがれの車で、雑誌に載っているマスタングの写真を穴が開くほど見たものです。ついでに車の傍らにカーディガンにスラックス姿で寄りかかっている金髪・八頭身のモデルの姿も…(こらこら、セクハラですね。発言陳謝) 車を買った言い訳は自分へのニンジンです。ニンジンにしては高価ですけど。自分に甘いのは昔から私の悪癖ですからお許しください。(他人には厳しい)(うちの社員も迷惑しています)

そうまでしてなんでアメリカに行くの? 何しろ、アメリカに赴任しているのは、獺祭の酒蔵の初代工場長と二代目の工場長ともう一人も経験年数15年を超すベテランの三人です。技術的には全幅の信頼を置いている人材と言えます。今更私が行く意味あるの? 当然の疑問です。ふつう日本の企業ではこういう局面で会長は行きません。それでもなんで行くの? 彼らを信用してないの?

いえいえ、信用してます。しかし、こういう局面で、派遣されるスタッフが優秀であればあるほど、今までの評価が確立していればいるほど、失敗したくないというのがスタッフの本音です。失敗しないよう万全の準備はしたつもりです。しかし、そんなことはこの世界でありえないということは皆さんもご存じのとおりです。万全の筈の原発だってあんな事故を起こしたわけですから。

そのあたりはスタッフも本能的に知っています。ではどうするか。失敗しないようにします。それは、どうするかというと、高いレベルの挑戦をしないこと。挑戦をしなければ失敗の確率は格段に下がってきます。そして、挑戦できない理由を探してきます。悪いことに優秀であればあるほど、その理由は文句のつけようがない理路整然としたものを探してくるでしょう。

これではアメリカの酒蔵を80億もかけてやる価値がない。だから行くんです。彼らと一緒に失敗して、対処方法を模索して、より高い到達点に届かせるために行きます。アメリカ住まいは現在の計画では一年のつもりです。皆さん、72歳の年を自覚してないこりない蔵元のアメリカ生活、また現地で起こったこともご報告するつもりです、ご期待ください。