お陰様で、3/20の10時半過ぎにニューヨークJFK空港に到着しました。そのままハイドパークに移動し、ニューヨーク移住第一日が始まったのです。
その日は荷ほどきにかかりきりで翌日から蔵に行きました。酒蔵の建設は大体完成しており、すでに試験製造酒用の麹の作業などは開始しています。しかし、立ち上がりは結構ドタバタしました。国内から来た精鋭スタッフも結構想定外の出来事が多かったのではないでしょうか。
例えば初代と二代の工場長が来ているといっても、彼らもここ数年は実作業に入ることもなかったので、作業の手つきはおぼつかないんです。(僕ならもっとひどいか) 麹も予想したように、三人ともヒーヒー言っていました。
心配したアメリカ人スタッフの働きぶりは、みんな従順で分からないながらなんとか仕事をこなしてくれています。もっとも、彼らに指示するのがあれほど手がかかるとは三人とも思ってなかったようですが。
そして、私の「アメリカ駐在の人参」であるフォードマスタングも酒蔵の駐車場に納車されていました。30年ぶりに買った新車。タイミング上外装色など選べなかったので白いクーペです。本当は子供のころからのあこがれの白いボディに青いストライプのかっこいい外装が欲しかったのですが仕方ないですね。また、内装はやはりアメ車であまりお洒落とは言えない雰囲気です。そんなもの期待したってないものねだりですね。
でも、最高の魅力はエンジンをかけたとき巻き起こりました。ヴォンヴォンという凄い音。パワーも凄い! なんと475馬力だそうです。人生史上最大馬力の車。ところがこれが良かったんです。なれない左ハンドル・右通行、ともすれば流れに乗れなくて、後ろの車から追いまくられる状態になりそうですが、少し踏めば余裕で前の車に追いつきます。
まあ、こんなことをしてるうちに今回の訪米で前半の最大のイベントと位置付けていた国連水フォーラム年次総会の3/23~24の会期が始まりました。国連と獺祭が何の関係があるかと思われると思います。水フォーラムは歴代総理大臣経験者が会長になるのが定めでして、今上天皇陛下が皇太子の時は名誉顧問をされていた組織です。
その組織とひょんなことからつながり、日本が国連ビルそばのジャパンソサエティでレセプションを開催するお手伝いをすることとなりました。日本の存在感をアピールするためやりたいというフォーラム事務局側とも意見が一致し、今回開催の運びとなったのです。
そのレセプションで開催にあたりご挨拶をさせていただいた原稿です。私の思いも入っております。ご一読いただけますと幸いです。
まず、皆様にここにお集まりいただいていることに感謝します。
本日このレセプションのスポンサーをさせていただいております「獺祭」という日本酒の酒蔵の会長で桜井博志と申します。実は今、マンハッタンから北に150kmぐらい北上したハイドパークという美しい街に新しい酒蔵を開設しようとしています。すでに建物は出来上がり、夏にはその酒蔵から生まれたお酒がアメリカの皆様の手に届けられるスケジュールです。その酒は「獺祭Blue」と名付けられ、日本文化とアメリカを融合させるものになるものです。
少し私の話を聞いてください。
日本酒は日本で生まれた酒です。それは日本民族の歴史とともにあるとともに、日本列島の豊富で良質の水に支えられて美味しい酒となり、造り継がれてきたのです。
しかし、その天の恵みともいうべき水は私たちに時に牙をむくことがあります。
それは5年前の経験です。酒蔵のある地域を集中豪雨が襲いました。その集中豪雨により近くのご老人の命が奪われ、私どもの酒蔵も甚大な被害にあったのです。
私たちは水の恵みに支えられているとともに、水が巻き起こす災害の恐怖にもさらされているのです。
私たちは、この被害から立ち上がるために、災害前より美しいより進化したものを求めました。そのために、前の橋をかけ替えたのです。著名な建築家である隈研吾氏設計の木造の欄干を持つ美しい橋です。
人類は古来より、水の恵みに助けられ、一方、水の禍にさらされ続けているのです。しかし、その災いにより進化もしてきました。チグリス・ユーフラテス川の氾濫により肥沃な大地が生まれ、それによりメソポタミア文明が開化したことを忘れてはいけません。
水は人類にとって天の恵みであり、大いなる恐怖でもあり、しかし、その災いを奇貨として反対に人類の文明は進化してきた、重要なものなのです。私は水によって生み出される日本酒の酒蔵の当主としてこの水フォーラムのレセプションのお手伝いができることを誇らしく思っております。
最後に、本日はたっぷり獺祭を準備させて頂いております。ぜひ楽しんでおかえりください。皆様、ありがとうございます。
と、まあこんな話をさせていただきました。みんな聞いてくれたかって? それがみんな獺祭を飲むのに忙しくって120名を超える参加者の前のほうの30人程度でしたね。工夫がいりますね、( ̄∇ ̄)ハッハッハ。それとも英語の修行ですかね。
それでも、世界から集まった120名です。アジアからの参加者などで、「獺祭を知ってる」「獺祭が好き」という人もいましたが、かなりの参加者は初めてで、でもみんなよく飲んでたなぁ。それと、獺祭の磨き二割三分より獺祭スパークリングが人気で、ちょっと驚きました。
と、まあ、ここまで書いて配信するのを後回しにしていたら、本チャン用の麹造りも実際に始まり、何社かテレビ局の取材も受けました。お陰様で何とか!!!!!スタートしました。