アル添、アルコール添加の事ですね。獺祭は純米大吟醸しか造りませんから、アルコール添加なんて関係ないわけですが、、、ちょっと聞いてください。
獺祭は一年で山田錦を約1万トン使います。「ビヨンド・ザ・ビヨンド」や「磨き二割三分」から「純米大吟醸45」まで全部集めて獺祭の平均精米歩合を計算しますと30%(なんと!)。
と、いう事は、1万トンのうち7千トンは米ぬかになるという事です。
地球環境なんて大上段に振りかぶらなくても、これだけの数量になればこれがちゃんとした意味のあるものとして、引き取り手がなくて廃棄物になったりすれば大変なことになります。私たちもこれまで、米ぬかの引き取り先については、高いとか安いとか相場に影響されるのではなく、いつも引き取ってもらわなければいけませんから神経を使ってきました。
その中で大きな数量としてはある食品の大メーカーに引き取られ、そこでみりんに加工されております。それも、山田錦の米ぬかのお陰で品質が一段とアップすることがわかり、弊社の米ぬか用に設備も一新した、とうれしい話を聞いております。
他の何社かのお取引先の中に、ある醸造用アルコールの製造メーカーが有ります。醸造用アルコールとは、昔、満州事変の頃の日本でコメ不足を解消するため、日本酒にアルコールと水あめを添加することにより増量することを日本政府が思いついたことから始まります。
この悪癖は太平洋戦争が終わりコメ余りの時代になったにもかかわらず、原価が下がることから、また、製造量が減って酒税が減ることをうれしく思わない徴税当局の思惑も相まって、そのまま酒造業界に残りました。今でも日本酒の全製造量の8割以上はアルコール添加されたお酒です。
ただ、ここで言うアルコール添加は、単純な原価削減策とは少し意味合いが違います。アルコールを染ませた脱脂綿で手の甲などを拭きますと汚れが取れる事に気が付きます。つまり、アルコールは毛穴などの組織の中にいったん入り込み、毛穴の中の汚れなどを引っ張り出す力があるのです。
酒の場合はこの作用が役に立つのです。アルコールを搾る前の大吟醸の醪(もろみ)に添加しますと、醪のなかの米の組織の中に入り込み、中に残っている香りを引っ張り出すのです。つまり、アルコール添加しますと大吟醸の香りがより高くなるのです。
コンテストなどで上位の成績を狙う時、この香りの高さは圧倒的な力を発揮します。ほとんどの酒蔵が純米ではなくアルコール添加した大吟醸で鑑評会で金賞を取ることを狙うのはそういう意味があるのです。
ところで、この時の原料は普段と違って、厳選の上にも厳選されます。普通の酒の増量の意味と違いますから、単価も高くても良いわけです。
という事で、先日、東北のアルコールメーカーの社長にお会いした時、「獺祭のお陰で当社のアルコールが売れています」とお礼を言われました。よく聞いてみると、そのアルコールメーカーは獺祭が納めている前述のアルコールメーカーから素材として原料アルコールを購入しているが、それが獺祭の米ぬかが原料なのだそうです。いつの頃からか、そのアルコールを使うと鑑評会の入賞率が高くなると酒蔵同士の情報網の中で言われ始めたようです。いろいろな酒蔵から、注文が来始め、今では30社以上から「あのアルコール」と指定で注文が入るようになっているそうです。
獺祭自身はアルコールを添加しませんから、使いもしませんが、まわりまわって他の酒蔵に収められ、コンテストなどでの強力なライバル!?を造っていることになります。ひぇーっ!!
ところで、獺祭に山田錦を収めてくれている農家の皆さん。このぐらい、山田錦って優秀な米なんですよ!!!。前にモスバーガーが弊社の(当然のごとく)原料は山田錦の甘酒で獺祭シェイクを造ったとき、あまりの美味しさにびっくりしたように、山田錦は物凄い米なんです。最近、各県で鳴り物入りで酒造好適米を開発していますが、まだ、「山田錦に負けない米ができました」としか聞いたことが有りません。
山田錦!!!!! 万歳!!!!!