当日、贈呈式会場にした酒蔵から式が終わると同時にアメリカJFK空港目指して出発しましたので、報告が遅くなりましたが、去る6/16に一般財団法人旭酒造記念財団による2024年度研究助成金の贈呈式を山口の酒蔵の12階会議室で行いました。贈呈者は7人で中央大学の山村教授から鹿児島大学の小橋乃子教授まで全国から選ばれました。

「なんのこっちゃ?」と皆さん思われるに違いありませんね。実は水の研究に関して若い研究者を助けることを目的に研究助成事業を行っているのです。何年も前から、「水の恵みにより、酒を造らせていただいている獺祭が、ただ事業をしているだけでいいのか?」「社会に美味しい酒を送り出すというだけでなく、積極的に何かをしなければいけないのではないか?」という疑問が自分の中にずっとありました。

サントリーさんなんかを見ていると、水を守るためにできるだけ水源地背後の山林を購入し、森林の再生事業を行っています。若い社員なんかは実際にそこに行って汗を流しているようです。そんな話を聞きながら、「自分たちには何ができるか?」ということを自分に問い続けていました。

あるとき、そんな私と社長に元芝浦工大副学長だった菅和利先生から、「それなら、水に関する研究をしている若い研究者たちに助成するのが良いんじゃないか」「彼らは本当に乏しい研究費の中で頑張っているんだから」という示唆をいただきました。それを受けて発足させたのがこの財団で、「水の研究に携わる若い研究者の助けになる」ことを目的としています。

(ちなみに、昨年春にニューヨークの国連本部で開催された世界水フォーラムのお手伝いをさせて頂いたのもこの一連の流れです。今年はインドネシアのバリで開かれ、弊社からは社長と担当者が参加しました。ついでに、来年はサウジアラビアらしいという観測が流れていて、その場合うちの参加はどうする?という話も来ていますが、水の問題は酒が売れる売れないより大事な話なので構わず参加したらと言っております。)

ということで財団の話に戻しますと、今年は全国の大学や研究機関から27の応募をいただいて、7研究に絞って今年度の助成金贈呈式になったのです。(個人的には山口大学からも赤松先生の研究が選ばれ、地元民としてはちょっと嬉しいものでした)

しかも、審査員の一人にお願いしていました東京大学の沖大幹先生が水のノーベル賞といわれる「ストックホルム水大賞」の今年度受賞者に選ばれるといううれしい驚きにも恵まれて、さらに箔の付いた授賞式になりました。

皆さんの中には私がフジテレビの「ほこたて」に出たことを覚えておられる方もいると思いますが、沖先生はあの時の利き水勝負の対戦相手だった三菱レーヨンのクリンスイ部門のアドバイザーでいらっしゃいました。十数年の時を超えて、今度は獺祭側の審査員としてお願いすることになり、感慨深いものでした。

実は、ちょっと嬉しかったことも皆様にご披露させてください。受賞者の席の足元には副賞として「獺祭磨き二割三分」が紙袋に入って置かれていましたが、司会者からそのことが告げられると受賞者全員が思わず下を向いて確認してニコッとしたことです。ちょっと嬉しかったですね。美味い酒は皆をにこやかにする。誰かがそう言ってましたけど、そこに少し近づいた気がしました。

それと、研究内容を読んで注目したのが、中央大学の山村先生の「雨水の積極的浄水利用に向けた水質浄化手引きの策定と水質管理アプリの開発」研究です。細部の研究の話になるとチンプンカンプンだったのですが、興味を引いたのが雨水でビールを作る実験をされていること。ビールができるなら獺祭を雨水から造ることも夢ではない。

以下、受賞者と研究内容の一覧です。

所属 職名 氏名 研究内容
鹿児島大学大学院理工学研究科 特任助教 小橋 乃子 テーマ: アオコのセンサー検出のための現地観測
世界各地で問題になっている「アオコの異常繁殖について、環境条件が異なる複数の水域において現地調査を実施し、《多波長励起蛍光高度計》によって大型の藍藻(アオコ)の発生の有無を判定する方法」を提案している。
公益財団法人リバーフロント研究所 主任研究員 和田 彰 テーマ:水辺の小さな自然再生の社会実装に向けた事例研究
多様な動植物が生息・生育・繁殖できる環境づくりと活力ある地域作りにむけて、身近な水辺をフィールドに、様々な主体が発案し、協働し、楽しみながら手づくりで自然再生を行うための社会実装を目的に研究している。
山口大学大学院創成科学研究科 教授 赤松 良久 テーマ:生物多様性ネットゲインのための流域網羅的な魚類・昆虫多様性評価
種網羅的に在・不在と密度を把握することが可能な環境DNA定量メタバーコーディング法を用いて、流域スケールで生物の生息状況を把握し、魚類や昆虫の多様性を予測する革新的なモデルの開発を目指している。
福岡工業大学社会環境学部社会環境学科水圏環境・防災学研究室 准教授 田井 明 テーマ:都市と水辺の調和:水環境の多面的機能の総合評価
都市の雨水管理システムの重要な構成要素である調整池に焦点を当て、調整池の多面的機能の総合評価手法の開発に取組み、機能間の相互影響の理解に基づく水辺環境の創造および地域の多様な主体が意思決定に参加できる仕組み作りに貢献する研究。
京都⼤学防災研究所 准教授 ⼩林 草平 テーマ:礫床河川における湧⽔の類型と形成維持機構及び指標⽣物
黒部川など砂州が発達する河川におけるフィールド調査を基に、湧水を類型化し、各類型の水文・水質・生物特性、それに形成維持機構を明らかにすることを目的にした研究。
中央⼤学理⼯学部 教授 ⼭村 寛 テーマ:⾬⽔の積極的上⽔利⽤に向けた⽔質浄化⼿引きの策定と⽔質管理アプリの開発
雨水を中心とした新たな水循環の構築や、従来の輸送に依存した水供給システムからの脱却を図ることで、脱炭素社会の形成に寄与することを目指している。
山梨大学工学部土木環境工学科 助教 松浦 拓哉 テーマ:数値実験に基づいた甲府盆地における持続可能な地下水利用の提案
甲府盆地にける持続可能な地下水利用を定量的に明らかにするもので、非定常3次元地下水モデルを用いて、地下水障害が生じず、持続的に利用できる地下水揚水量を明らかにする。